【OAHSPE考察】ジャフェスの主神ハイカスの主張に対する考察

ジャフェスの主神ハイカスの主張

かつて偽神アフラに仕えていた偽主神アヌハサジAnuhasajは,何百年の歳月を掛けて主神領マイトライスMaitraiasの主上神に昇り詰めました。主神領(Load-dom)とは,天界と地上の狭間に設けられた天界の前線基地であり,地上から闇の霊魂が天界に入り込んでくるのを食い止める役目を担っていました。

アヌハサジは主神領マイトライスの主上神になるとついに本性を現し,自分に味方する主神たちを集めて,創造主に対して反旗を翻すことになります。この時,この反旗に多くの主神が賛同しましたが,主な理由は,最前線の主神領は常に重労働を強いられており,一方の天界はその労働に守られて平和を保っていた不平等感にありました。
アヌハサジの反乱に与した主神の一人ハイカスは,この反乱の大義を長々と次のように主張しました。

次にジャフェスの地に天界を持つハイカスHi-kasが言いました。
「主上神や主神たちよ,私はあなたたちの叡智の前にひざまずきます。
私は天界の子供のような存在に過ぎず,1,000年を少し超えた程度です。
長く経験を積まれたあなたたちの前では,私の舌など黙らざるを得ません。
その乏しい叡智で語りますので,どうか私をあわれんでください。
東でも西でも,南でも北でも,万物は天界や地上で成長しています。私はこれより偉大な叡智を見たことがありません。
育たないものが一つあります,それが神族会議です。
見てください,神族会議は何百年も前に法を制定し,当時としてはその法は良きものでした。あなたや私,ここにいる皆さまは古きディヴァン法によって拘束されているのです。
この法は何も成長してません。

私よりも古き神々,そして主神の方々も同様ですが,『あらゆる光All Light』は1人の人格を有し,声を持つと言っています。その上,遥か昔に涅槃の神々にこう仰せになっていました。
『これらはこうなり,そうなるであろう』
私はあなたの裁断をあおぎます,主上神に主神の方々よ。それは古代人にとって賢い教義ではないのですか?
なぜならこの権威において,天使や定命の者たちは,見たこともない彼の御方を平伏し崇拝してきたからです。この誰も見たこともない御方の主張する権威の下,彼らは自分の主人や教師の意思を従順に遂行しているのです!
つまりこういうことです。
『最も賢い神や主神の言葉を聞くよりも,我らが知らず,理解できず,無に等しい御方を崇拝することの方がより賢い』
もしも自分たちが何も知らない存在を崇拝することが最高の崇拝だというのであれば,愚か者は偉大なる崇拝者です。なぜならその者は何も知らないからです。

そのため最も賢い者は,崇拝者の中でも最も貧しくなければなりません。
真実は,天界と地上のどちらでもそうではありませんか?
知識を得ることで,彼ら全員は無知を捨て去れます。無知は敬虔な崇拝者です。
私たちは自分の舌をおさえて『そうだWh-ceそうだWh-ce!』と言っていましょう。
無知は真実を,完全なる真実を知らないに違いないからです。
こうした行為をするなら,私たちは偽善者ではないのでしょうか?
何人かの人物がここから遠く離れた地から来訪し,喜びに満ち,最も高き天界は存在すると言っていました。それならばどうして私たちはここから逃れ,旅立てないのでしょうか?
私の主上神や主神の方々よ,もしも改善されればこの天界は十分に良い場所です。もしも改善されれば地球は十分に良い場所です。
私たちはもっと大きな王国やもっと飾られた玉座を,この天界や地上に欲しいのです

OAHSPE-24『対ジェホヴィ戦争の書』8章-28-36

この主張に対して,下線の3つのポイントについて考察していきます。

ハイカスの主張①に対する考察

育たないものが一つあります,それが神族会議です。
見てください,神族会議は何百年も前に法を制定し,当時としてはその法は良きものでした。あなたや私,ここにいる皆さまは古きディヴァン法によって拘束されているのです。
この法は何も成長してません。

ハイカスの主張①は,神族会議(Diva)に対する不満です。
最前線の主神領マイトライスのお蔭で,天界は平和を謳歌していました。平和になれた天界は危機感に乏しくなり,古代に制定されたディヴァン法を始め,数々の法が見直しもされず,そのまま慣行のように継承されていました。
ハイカスはそれを「成長していない」と弾劾したわけでした。

確かに天界全体で考えた時,地上の霊魂が第1の復活を終えて最初に迎えられる天界は,常に安泰である必要があります。しかしその天界を守っているのは最前線の主神領を始めとする神々であり,そのことに不平感を募らせるのは,当然のことです。
この問題の本質は,既得権益者(天界)と収奪される側(主神領や最前線の神々)との間にある不平等感にあります。
これは現在の世界でも同じ問題を抱えています。重要なのは貧富の差ではなく,その労力に見合った富貴を得られているかということだと考えます。
例えば,何も社会に貢献していないのに,ただ貧しいから保護してほしいというのは,今度はきちんと社会に貢献している人から見たら「不平等」だと感じてしまいます。
単純に貧富の差をなくすことが「不平等感の是正」に繋がるわけでなく,社会貢献度に見合った報酬が適切に配分されることが「不平等感の是正」に繋がり,社会を安定させるのではないかと考えます。
但し,不平等感の是正はあくまで社会を安定させるためであり,貧困をなくすことには繋がりません。そして貧困は,物質的な貧富と,霊的な貧富があり,天界が求めるのは霊的に富める者を生み出すことです。それには教育機関の充実が不可欠です。

ハイカスの主張①は,「法は何も成長して」いないと訴えていますが,本当のところは,自分たちと天界(神族会議)の不平等感をなじったものであり,詰まるところ「ずるい」ということを言いたかっただけだと思います。
但し,不平等感の是正は現在にも通じるものがあり,これを放置しているとやがて反乱を招くことになります。

ハイカスの主張②に対する考察

私はあなたの裁断をあおぎます,主上神に主神の方々よ。それは古代人にとって賢い教義ではないのですか?
なぜならこの権威において,天使や定命の者たちは,見たこともない彼の御方を平伏し崇拝してきたからです。この誰も見たこともない御方の主張する権威の下,彼らは自分の主人や教師の意思を従順に遂行しているのです!
つまりこういうことです。
『最も賢い神や主神の言葉を聞くよりも,我らが知らず,理解できず,無に等しい御方を崇拝することの方がより賢い』
もしも自分たちが何も知らない存在を崇拝することが最高の崇拝だというのであれば,愚か者は偉大なる崇拝者です。なぜならその者は何も知らないからです。

この主張の根拠は,「最も賢い神や主神の言葉を聞くよりも,我らが知らず,理解できず,無に等しい御方を崇拝することの方がより賢い」の部分にあります。

簡単に言えば,「見たこともないものは信じられない」ということです。
OAHSPEでは,下天(lower heaven)の他に上天(higher heaven)があり,最上部には涅槃ニルヴァーナがあります。下天で暮らす神々は上天や涅槃を見たことがないため,このようなことを言っているわけです。
それでは実体界に住む人間は,生前の記憶にはあるのかもしれませんが,そもそも天界を見たことがありません。
「見たこともない天界」を信じられるのか否かがここでは問われています。

自分の目で見なければ信じられないというのは正しくもありますが,知見を狭めてもいます。
知見を広げるには,自分の目で見ていなくても真実を掴み取ることにあります。
目に見えない霊魂を信じるか否か?
目に見えない天界を信じるか否か?
神々を信じるか否か?
目に見えないからといって「信じない」と決めつけてしまうと,ハイカスの主張のように「何も知らない存在を崇拝することが最高の崇拝」という結論に至ってしまいます。

妄信は愚かな行為だと考えますが,自分が論理的に思考した結果に基づいて確信することは,目に見えない真実を掴み取り知見を広げるために必要なことだと考えます。

ハイカスの主張は詰まるところ,「実体界の人間は神々を見れないので,人間が神々を崇拝しないのは愚かなこと」という論理になり,それは自分たちの存在の否定になるわけです。
自分たちの存在を鑑みればそのようなことはないということは分かるのに,そこに思い至らないため,このような主張が出てくるのだと思います。

ハイカスの主張③に対する考察

何人かの人物がここから遠く離れた地から来訪し,喜びに満ち,最も高き天界は存在すると言っていました。それならばどうして私たちはここから逃れ,旅立てないのでしょうか?
私の主上神や主神の方々よ,もしも改善されればこの天界は十分に良い場所です。もしも改善されれば地球は十分に良い場所です。
私たちはもっと大きな王国やもっと飾られた玉座を,この天界や地上に欲しいのです

上天を知らないハイカスは,見たこともない上天のためよりも,今自分たちが暮らす下天や地球をより良くすればよいと,ここでは主張しています。

もしも改善されればこの天界は十分に良い場所です。もしも改善されれば地球は十分に良い場所です

この主張は一理あります。例えば,自分が所属している社会や国家が乱れていても,せめて自分が所属する小さな世界だけでも理想の世界を築ければ,それは一つの栄誉なのだと思います。
ハイカスたちが偽神アヌハサジの反乱に与することになった直接的な動機「私たちはもっと大きな王国やもっと飾られた玉座を,この天界や地上に欲しい」,これが間違えているわけです。

ハイカスが主張する「良い場所」とは結局,「大きな王国」や「飾られた玉座」のことを指しており,これも詰まるところ,ただの物欲に過ぎません。
理想の世界とは,そこで暮らす人々が調和と規律を持ち,互いを思いやれる世界のことだと考えます。どれだけこの世界が狂っていても,せめて自分が所属する世界だけでも理想の世界を築けるのであれば,霊的には成長するからです。
実体界で生きている人間はいずれ死を迎えます。その時,実体界で手に入れたものは何一つ天界に持ち運べません。持ち運べるのは,自分が生前に積み重ねた経験や記憶だけです。
だからこそ今生きている世界で,物欲にあまり固執せず,良い経験や思い出を作れるようにしていくのがよく,同時に自分が手を差し伸べられる範囲でそういった世界を築けるように努力することが大切なのだと思います。

結局,ハイカスの主張は,すべて物欲から来るものであるためその論拠は浅く,共感を覚えるものはないのですが,誰もが霊的な成長を求めて生きているわけではないので,世俗での幸福を求める人にとっては納得のいく内容だったのだと予想します。


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