【OAHSPE考察2】ヤスナ第28章(1節-11節)

1節

うやうやしく手を伸ばして,かのスプンタ・マニユの助けを,
まずマズダーよ,アシャよ,[あなた方]すべてに行為をもって私は懇願します,
その[行為]によってウォフ・マナフの意思とグーウシュ・ルワンを満足させるためです。

『アヴェスタ』ヤスナ第28章 1節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

『OAHSPE』によれば,ザラツゥストラが神イフアマズダの下で執筆した最初の聖典は,創造主オーマズドが唯一崇めるべき神であり,魂を持つ精神体は創造主より生み出されたものであり,創造主を御父として崇めることが大前提となっています。
また神イフアマズダも創造主オーマズドの息子であり,地球に属する下天を統治している神々の一柱となります。そのため神イフアマズダを崇めることは『OAHSPE』では決してなく,それどころか創造主以外を信仰することを「偶像崇拝(idolator)」と呼んで忌避しています。
それを理解した上で,偽神アフラは創造主オーマズドの代わりに,自分を崇めさせようとしたのかと言うと,『OAHSPE』によれば,地球が闇に覆われても絶対神の声が聞こえるようにしたいという想いからでした。(OAHSPE-21『真神の書』10章-1,14)
つまり,地球の天界を外宇宙から完全に切り離して独立した上で,その孤立した世界でアフラマズダーは絶対神とならなければならず,上天の神々のようにアフラマズダを頂点とする神々もまた,上天と同じように配さなければなりませんでした。
その統治機構として構築したのが,アフラマズダを頂点とする「アムシャ・スプンタ神」と呼ばれる神々ではないかと考えます。
この中で何故,マズダーの次にアシャが挙げられているのかですが,アシャと言えば『OAHSPE』ではかつてオアスの王であり,退位後はザラツゥストラに師事し,死の間際まで行動を共にした筆頭信者を指します。そのためザラツゥストラは神イフアマズダと,友であり筆頭信者でもあるアシャに最大の信頼を寄せており,改竄前の原典で何かを呼びかけする際は,この2人の名を挙げたことは容易に想像できます。
それは偽神アフラにより改竄された聖典でもそれは受け継がれていたのではないかと考えます。

さて,原文ではそういった神々の助けをお借りしたいという誓願文になります。
本章は下表のように構成されています。

概要テーマ
1節~11節アシャ(正義)とウォフマナフ(善思)を守るので,その恩恵として神々は我々に報酬を与えてほしい。また邪悪な者を改心させるため,我々を助け,我々の望みを満たしてほしい。正義,善思の遂行(報酬主義)

全体を通して「正義や善思を遂行する代わりに恩恵が欲しい」と説いています。これは,正義や善思を遂行するのは神々のため,という背景があるかだらと考えます。人間は神々のために正義や善思を遂行している,だからその任務に対して報酬が欲しいということになります。
そもそも善行とは任務なのか,という点が疑問になります。OAHSPEでは,善行は自分の魂の求めにより自然に発せられるものであり,霊的に成長した人間は自然とそれが発動するものとなります。誰かに強要されて善行に励むわけではありません。
しかしアフラのゾロアスター教では,報酬がなければ善行,正義,善思は誰も行わないという点がOAHSPEの教義と異なる点です。
そういった視点で本章を確認していきます。

まず1節目となる本節では「善思,善行を満足させる行為に励むので,スプンタ・アムシャ諸神の助けが欲しい」と述べています。

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