【OAHSPE考察2】ヤスナ第30章(1節-11節)

2節

最高のウォフ・マナフを通じて耳で聞け,光で見よ,
各人が自分のために判断の選択を,
大いなる要請の前に,彼に言うことに気づいて。

『アヴェスタ』ヤスナ第30章 2節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

この節の1行目は,「自分の善良な心を通じて」,2行目は「自分のため判断を下す際」,3行目は「神々からの要請に気づくように」という意味になります。
何か自分で判断を下す際,神々の意を汲んで行いなさい,という解釈になるわけですが,これは創造主ジェホヴィの教義とは異なります。
まず創造主ジェホヴィは個々人の判断はその自主性に委ねています。しかしゾロアスター教のアヴェスタの教義は「神の意に沿う」ことが求められています。
神の傀儡になることがアフラ・マズダーの教えだとするならば,2行目では「選択」を与えておきながら,3行目ではその判断を束縛しているので,この節は2行目と3行目が矛盾する内容となっています。
宗教とは非常に難しく,教義全体を理解せず,単純に節だけで解釈しようとすると,間違った道を歩む羽目になります。
そもそも3行目の「大いなる要請」とは誰の要請なのか。その要請は神の要請なのか,それとも偽神の要請なのか。
要請されたことに気づいても,その要請の真贋も見極める必要があります。そして創造主は人間に掟は作るものの,原則指示はしません。つまり要請をするのは,その人間を唆そうとする偽神や闇の霊魂ということになります。
教典にこういった仕掛けを施して人々を誘引しようとするのが,この時代の手口だったのかもしれません。

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