【OAHSPE考察2】ヤスナ第32章(1節-16節)

1節

一族も氏族も部族も,ダエーワどもさえも,
私をまねて彼の,アフラ・マズダーの恩恵を懇願しました,
「あなた方に敵対する者たちを遠ざけるために我らはあなたの使者になりたい」と。

『アヴェスタ』ヤスナ第32章 1節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

本章では,正義の遂行者と,不義者が辿る末路が描かれています。

概要テーマ
1節~4節正義の遂行者である自分たちと,悪行を重ねる不義者の存在正義と不義
5節~13節不義者の悪行について不義者の悪行
14節~16節悪行を重ねた不義者の末路と,義者が得られる幸福な世界について不義者の末路

本章は全体を通して比較的分かりやすい構成となっており,最初に義者と不義者の存在を語り,次に不義者が行う悪行が語られ,最後にその不義者が辿る末路を語り,義者は最後に勝つという結論で締めくくっています。
そういった構成を踏まえて本章を考察していきます。

2行目の「私」はザラツゥストラを指していると考えます。
『OAHSPE』によれば,ザラツゥストラは生まれた時から神イフアマズダの加護を得ていました。
「私をまねて」という部分は,「生まれながらにして神イフアマズダの加護を得ていたザラツゥストラに倣って」という意味に解釈できます。
4行目の「あなたの使者」は,恐らく使徒,もしくはしもべの意味だと考えます。
この節の主旨は,簡単に言えば「ザラツゥストラに倣って唯一神の恩恵を受けたい」となります。
そしてこの節は,以下のような原文だったのではないかと推測します。

一族も氏族も部族も,ダエーワどもさえも,
私をまねて彼の,イフアマズダの恩恵を懇願しました,
「あなた方に敵対する者たちを遠ざけるために我らはあなたのしもべになりたい」と。

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