【OAHSPE考察2】ヤスナ第33章(1節-14節)

1節

不義者に対しても義者に対しても,
悪行と正しい行いが均衡している者に対しても,
最も正しい行いに基づいて,
ラトゥは原初の世界の法に従って[判定]するでしょう。

『アヴェスタ』ヤスナ第33章 1節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

本章は全体としては義者の道を説き,その道を貫き通すため神々の助けを借りる,という意図になっています。ところが最終節(14節)だけは全体の流れから噛み合ってなく,この言葉を説いているザラスシュトラ本人が自分の命をマズダーとアシャに捧げて,本章を締めくくっています。
義者は神々に守られて最後は幸福という報酬を得ることがゾロアスター教の教義であるはずなのに,ザラスシュトラだけが自分の命を捧げるというのは道理に合いません。
そのため全体としては13節までと,最終節(14節)は別物として扱うべきだと考えます。

概要テーマ
1節~4節義者の人物像と,そういった人物が牧地を管理し,悪の管理者を追い払う義者について
5節~13節義者が義者の道を歩むために,神々の助けを借りる。そのために供物を神々に捧げる。義者の義務
14節ザラツゥストラは自分の命をマズダーとアシャに捧げる。ザラツゥストラの遺言

本章は,無理やり最終節(14節)を挿入しようとしたのではないかと思われるような構成となっているため,その点を考慮しながら考察していきます。

まず1節目ですが,本節の主旨は,4行目に記述された「原初の世界の法」が審判を下すことにあります。
『OAHSPE』では創造主に委任された神々が審判を下しますが,偽神アフラの世界では「原初の世界の法」による審判という点が異なります。
この違いは,偽神アフラの時代,地球の神ホーブによる『ディヴァン法(The Divan Laws)』が制定されたことが背景にあるのだと思います。
それまで地球には天界を支配する法はなく,神フラガパッティが上天に帰還する際に『神族会議(Diva)』の開催を決め,その初代神族長(Div)にフラガパッティの弟子であった神ホーブが就任します。
神ホーブは神族長の権限において法を次々と定めて行き,それは『ディヴァン法』と呼ばれました。しかし神フラガパッティも神ホーブも,創造主ジェホヴィの名においてこれらの法を制定していますが,法が審判を下すのではなく,審判者はあくまで神々になります。その神も創造主の御名において委任された代行者です。決して法が審判を下すわけではありません。

偽神アフラは神ホーブの昇天後に暗躍したため,「法」が審判を下すと考えていたのかもしれません。また「原初の世界の法」の原型となったのは『ディヴァン法』であったと推測します。

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