【OAHSPE考察2】ヤスナ第35章(1節-10節)

6節

男でも女でも
今何が本当であるかを知っているように,
そのように何が良いことかを。
それゆえ彼らにそれを実行させ,
あるがままに実践するように,人々に
知らせるようにしなさい。

『アヴェスタ』ヤスナ第35章 6節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

2行目の「何が本当であるか」とは,「目に見える現実の光景」のことを指しています。
つまり「誰でも,目に見える光景が本物だと分かるのと同じ感覚で,何が良いかを判断し,それを実行することを人々に教唆する」というのが本節の内容になります。
しかし「良いこと」とは,『OAHSPE』では他人の幸福のための自己犠牲ですが,アフラのゾロアスター教では,極論を言えば,自分の幸福の追求になります。
『OAHSPE』の教義は,霊魂の成長にあり,現世での快楽は含まれていません。しかしアフラの教義は『OAHSPE』の教義と相反するため,現世の快楽に流れてしまう人々にとっては,耳心地よく聞こえます。この教義を正しいと信じると,この世界は思いやりを欠いた人々で溢れかえります。

「良いこと」

ただそれだけの言葉ですが,誰にとっての「良いこと」なのかでこの世界は良くも悪くもなるのだと思います。

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