【OAHSPE考察2】ヤスナ第48章(1節-12節)

12節

彼らが国々のサオシヤントとなるでしょう,
すなわち,あなたの教えの実践によって
ウォフ・マナフとアシャにもとづく知識に従う者たちです,マズダーよ。
なぜなら彼らはアエーシュマに敵対する者として任じられているからです。

『アヴェスタ』ヤスナ第48章 12節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

本節は,良い支配者(サオシヤント:終末の救済者)によりこの世界が支配されることを望むとして,本章を締めくくっています。

本章は全体を通してアフラの思想が鮮明に綴られており,非常に分かりやすい内容だったと思います。
悪しき支配者ではなく,良き支配者が支配する世界にしたいという願望が本章のテーマです。しかし現世を生きる上で,良き支配者は我欲を押し殺さなければならないため,それに見合った報酬を示すことで良き支配者を促進しています。
しかしこの報酬は現世でしか消化できないものであり,霊魂の不死性を考えた時,この報酬は霊魂に何ら貢献するものではありません。
この世界(現世)をより良くしようという視点では,この報酬主義は非常に効果を発揮すると思いますが,死後の世界に持ち込めないものを生涯をかけて育てていくことになるため,霊魂の成長という視点もこの思想に組み込まれれば,より良い思想になるのではないかと考えます。但し霊魂の成長は無報酬主義のため,この相反する思想をどのように取り込んでいくのかはかなりの難題だと思います。

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