【OAHSPE考察2】ヤスナ第51章(1節-22節)

1節

最もよく富をもたらす良きフシャスラ・ワリヤは,
アシャとともに乳をもって奉納する者に近づきます。
マズダーよ,行いによって最も優れたこと,それを我らのため今私は実践したいのです。

『アヴェスタ』ヤスナ第51章 1節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

本章は22節と言う長大な内容になっていますが,大別すると次の4部で構成されています。

概要テーマ
1節~4節自分たちは善行に励むのでその対価が欲しいが,それをくれる世界は何処にあるのかという嘆き善行に対する
対価への期待と不安
5節~7節秩序や分別があるものが世界を支配するように神々は適任者を配するので,神々の意を叶えた者には究極の善を与え,それができない者には究極の悪を与える勧善懲悪
8節~14節悪党の末路について悪党の末路
15節~22節善行を励み神々を祀るので,神々はその対価(利益)を与えてほしい善行への対価を懇願

構成自体は非常にシンプルです。まず冒頭の4節で「善行に励むから対価が欲しいけど,そんな都合の良い世界はあるのか?」と不安を語り,次の3節で勧善懲悪の世界が語られ,その次の7節で懲悪の部分,つまり悪党に身をやつしてしまった場合,どうなるのかという事例を紹介し,最後の6節で冒頭のテーマに立ち返り,「善行に励めば対価をくれる都合の良い世界を作ってくれる神々を祀るので,対価(利益)を与えて欲しい」と締めくくっています。
OAHSPEの教義の一つに「この世界は全て創造主のものであり,自分が所有しているものは何一つない」というのがあり,本章はそれと真逆の概念がつづられています。
しかしながら実体界で生きている人間であればこそ共感できる内容も綴られています。ある意味,他の章とくらべて文章の構成は分かりやすく,その是非については別としても読み物としては面白いと思います。

こういった構成を踏まえつつ,各節を見ていきます。

本節の主旨は3行目「行いによって最も優れたこと,それを我らのため今私は実践したい」にあります。
その理由が次節(2節目)に記されています。

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