【OAHSPE考察2】ヤスナ第53章(1節-9節)

1節

スピターマ・ザラスシュトラの最大の望みは知られています。
アフラ・マズダーがアシャに従って彼に恩恵を,永遠の良き生命を与えることと,
彼をだます者たちにも良き信仰の言葉と行ないを教えることであると。

『アヴェスタ』ヤスナ第53章 1節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

本章は,信仰者の恩恵と,闇落ちした者(ドルジ)という二つの対比で構成されています。

概要テーマ
1節~5節ザラスシュトラの望みは,最高神アフラマズダーに従って永遠の良き生命を与えることであり,その結果として,良きダエーナー(信仰者)となり,善思の生命を見つけることができる善なる者
6節~9節悪の道に堕ちていったドルジは,繁栄してもきっと神々の贈り物を得られないので,正しく生きることを説くドルジの罪

本章の構成は全体としてまとまっており,主旨も明快です。前後半で「善なる者」と「ドルジ(闇落ちした霊魂)」で分かれていますが,最終章の最後の一文で,本章の主旨が記されています。
本章に限って言えば「報酬主義」は見られず,内容的にアフラの初期の思想が綴られているように感じます。
アフラは当初,それぞれが自発的に「善思」の振舞いをすることを望んでいました。それが本章の前半部分に表れています。しかし他の章でも見られるような報酬主義に陥ってしまったのは,それでは誰も善思の振舞いをしなかったからだと思います。

こういった背景を考慮しながら,本章を見ていきます。

最初の1節目は,本章において最も重要な内容が記されています。
ゾロアスター教の創始者ザラスシュトラは何のために人々に伝道するのか,その答えが記されています。

永遠の良き生命を与えること
彼をだます者たちにも良き信仰の言葉と行ないを教えること

OAHSPEの「神の言葉の書」にも,「永遠の生命」を得るためにザラツゥストラに帰依した者がいました。この「永遠の生命」とは,霊魂の不滅性のことを指しているのだと思います。
「来世は良き環境で転生するため,現世で功徳を積むこと」,これが「永遠の生命」を得るためにザラツゥストラに帰依した者の望みだったと考えます。

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