【解説】
紀元前7,000年頃,ザラツゥストラが活躍した時代。パーシー(ペルシア)にあったツェゴウという町が近隣との戦争で数多くの勝利を得て勢力を強めていました。ツェゴウの町は自分たちの勝利を誇るように,敵の死者の躯を城壁に吊るされていたと言います。
ところがザラツゥストラがこの町を訪れると,神イフアマズダがこの悪徳極まる町に激怒し,ついにはツェゴウの町を火に包んで滅ぼしてしまいました。
この時,多くの定命の人間が死にました。そのことをザラツゥストラは「ツェゴウが破壊されるのはとても良いことだ」と言いました。
その理由が,
「あなたたちが火で失ったもの以上に,彼らの霊魂は10倍のものを得ました。なぜなら神々は漸く彼らを天界に連れて行くことができるからです」
確かに人間は寿命を全うできず,非業の死を遂げました。それでも「良いこと」とザラツゥストラが言ったのは,弔われずにこの町を呪っていた数多くの城壁に吊るされていた躯の霊魂が解放され,天界に還り,ようやく第1の復活を迎えることができたからです。
これが許されるのは神のみです。人間は誰一人殺してはいけないと言っています。なぜなら「彼らはオーマズドのものだから」とザラツゥストラは言っています。
どんな理由であれ,例えば相手が悪人だからと言っても,人間は誰一人殺してはいけないと言っています。
それが今回引用した内容の冒頭部分「オーマズドが彼らを滅ぼさないのは何故ですか?」に繋がってきます。
人間に「殺すな」と命じておき,それを実行できるのは神だけだとしたら,神は悪人を根絶やしにするべきなのにそれを行わないのは何故なのでしょうか?
「悪の霊魂はあなたたちや死者の霊魂そのものなのです」
ツェゴウの町は,ツェゴウの町自身が犯した罪(城壁に躯を吊るし,死者を弔わない)により悪の霊魂が生み出されました。元を糾せばツェゴウの町自身が悪の元凶でした。自分たちの罪が原因で生み出した悪の霊魂を,どうして神々が尻拭いしなければならないのか,とここでは言っています。
「因果応報」という言葉がありますが,結局はそういうことだと思います。
創造主オーマズドが悪の霊魂を滅ぼさないのは,それを生み出した者たちにそのことを思い知らせるためです。
私たちはそのことを常に心に刻み,生きていかなければならないのだと思います。
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