ジェホヴィの息子フラガパッティと同時代の書です。
前書が天界に関する記録だとすれば,本書は同時代に地上を管理していた神の書となります。
本書の題名を『神の言葉の書』としたのは,人間に対して神の言葉を確立するため,地球に降臨した最初の神だからです。
パーシーの人,ザラツゥストラを通して,神はコスモン時代以前の8,900年前にこの目的を達成しました。
【1章】
- 「人間よ,私の言葉を聞きなさい」
イフアマズダは言いました。
「これまでのこと,これからのことについて,私が何を語るのかを意識してください。
過ぎてしまった時間を思い出してください。
古代人が引き起こした事件について,その本質について理解を深めてください」 - 「名前について難癖を付けるべきではありません」
とイフアマズダは言いました。
場所や言葉についても,です。
「全ての場所は私の場所です。
全ての言葉は私の言葉です。
全ての名前は私の名前です。
全ての真実は私が語ったことです。
全ての事実は私の声です。
私の命令により,全ての地球の国家は私と私の御業を知ることになります」 - イフアン人の管理者サマティは天界の上位神であり,天界に作られた天界,高さ1,000マイルにあるヴィブラジ山に邸宅を構えています。
- イフアマズダは言いました。
「彼らは私が『聖なるマズダ』であることをどうやって知るのでしょうか?
彼らは封印されています。
彼らの精神体は死のように盲目です。
ご覧なさい,オアスの最高統治者であるソーチ王と言いましたか?
強い剣を持った勇敢な人です。
ソーチ王!
ソーチ王!
私が呼び掛けても彼は聞いてくれません。
私は神殿に行っても,神イフアマズダに対する道は閉ざされています。 - あなたの神の祭壇は何処にありますか?
聖なる踊りの場です。
ソーチ王は聞いてくれません。
イフアマズダの声に誰も耳を傾けてくれません。
天使や神は探し回っています。 - 人間よ,あなたは創造主と共に剣を測ることができますか?
どうか天界の窓掛を開けて,外を見てください!
あなたが学んだ微々たるものは何ですか?
孵化していない雛が人生の哲学について何を語ると言うのですか? - 人間よ,私はあなたに伝えたいことがあります。
自然的な感覚では霊魂を理解することはできません。
しかし私はあなたに,あなたの広大な都市オアスに手を差し伸べられます。
ソーチ王よ!
あなたの剣は柄から落ちています。
あなたの権力は吐息のようなものです」 - 「人間よ,聞いてください」
イフアマズダは言いました。
「私は扉を僅かに開けました。あなたは星々から多少のことは学べるかもしれません。
あなたは今,思い上がっています。
知識を無駄に自慢する者よ,あなたの管理者の目の前で,私は扉を閉ざします」 - あなたは闇の中を進んでいます。
使い魔,怠け者,死にたがり。
だから私はあなたにこう言います。
「ご覧なさい,そこはとても素晴らしい世界です。さあ行って,賢くなりましょう」
あなたはすぐに変節し,古代人の愚かさを嘆きます。
あなたにとって何が良いことなのですか?
私があなたを闇から救済しても,あなたは私の預言者を殺します」 - イフアマズダは言いました。
「私があなたを解放しても,あなたは私の人格を否定します。
私があなたを監獄に押し込めると,あなたは『神よ,私の神よ!』と叫びます。
私があなたを救済し解放しても,あなたは剣と槍を持って同胞を死に追いやります」 - 「人間よ,聞いてください。私があなたにしたことは何なのか」
とイフアマズダは言いました。
「私はアスの肋骨を引き裂いて,直立させてこう言いました。
『あなたは人間となり,神のように直立しなさい』
私の声であなたを創りました。
あなたが何者で,何と違うのかは私が証明します。
私は言いました。
『あなたの種を救ってください,人間よ』
イヒン人はアス人と距離を置いており,神聖でした。しかしあなたの兄弟は彼らと一緒に暮らし,滅ぼしました」 - 「懲らしめなさい」
とイフアマズダは言いました。
私は卵を壊すように地球を打ち砕きました。なぜなら天界との区切りを解き放つためです。
すると人間の全種族がこう叫びました。
『マズダがいる!
あらゆる力,不可視の存在!』」
【2章】
- 当時,軍隊が大都市を攻略し人々を虐殺すると,彼らはパーシーの首都オアスのソーチ王に戦利品を持ち帰り,略奪品の量に応じて報酬を受け取りました。
この戦争はイフアン人の様々な国家間で行われました。聖なる民イヒン人は特に何もありませんでした。彼らは無事に過ごせていました。 - 私は言いました。
「この世界で宝を隠す者は誰であれ,平和などありません!
しかしあなたたちは大都市を建設し,それが壊されないことを望んでいます。
王よ,私はあなたに,その町が最も弱い町であることを証明してあげます。
私はイヒン人の種から1人の人間を育てて,強大な町であるオアスを彼の手で打倒してあげましょう」 - 天界の神イフアマズダは,高度に学習を積んだ天使ルーイを調査のために遣わした後,彼らを呼んで,何を見たのか尋ねました。
彼らは言いました。
「仕事!仕事!」
イフアマズダは言いました。
「その仕事はうまく行くでしょう!
聖なる世代管理者よ,オアスの町近くの定命の者の所に行きなさい。
そしてイヒン族の種を探し出し,啓示を下してオアスの町のイフアン人の信仰心篤いイフアン人の娘の下に導きなさい。彼らは惹かれ合い,すぐにその町で熟れた果実となり,息子や娘が生まれるでしょう。
もう一度イヒン人の下に行き,啓示を下して他の者を連れて来て,改良が施された果実として彼らを誘惑させなさい。これを何度も繰り返せば,第6世代でスイとサルギの才能を持った1人の息子を育てて,その者はザラツゥストラと呼ばれることでしょう。 - その目的のため定命の者の守護者となった天使ルーイは神の命令を実行に移しました。
子供の母の名はトーチェと言い,父の名はローブと言います。
トーチェは生まれながらのスイであり,天使サモーンが付き添っていました。彼女は妊娠する前から何かに憑りつかれるように考え事をしており,妊娠した後は無我夢中状態から目覚めるのに苦労しませんでした。
ルーイたちによって彼女の精神体は上天の栄光を見せるためによく連れて行かれ,再び彼女の肉体に戻されました。
こうして『あらゆる光』を纏った子供が生まれ,同時に何かに憑りつかれる衝動もなくなり,トーチェは,子供には父親はなく,『あらゆる光』との間に授かったと町で宣言しました。そう信じたのは,意識を失っている間に妊娠したためでした。 - よく学んだ者は星占いを行いますが,王に警鐘を鳴らしたり,乙女の話に信憑性を持たせるようなものは星々からは何も出てきませんでした。
ルーイたちは神の前でこう言いました。
「ご覧ください,『あらゆる光』の力を秘めた1人の子供が生まれました」
その後,神は言いました。
「私はそちらに向かいます。あなたたちは先に行って案内してください」 - その子が授乳している時,その霊魂が眠っている間にイフアマズダは子供に語り掛けました。
「もう一度,学識ある者が来ます。その者はジスタの息子アシャと言い,学者たちの中では長にあたる人です。1,000の星と全ての生き物,そして今は生きていない動物の骨から学んだ者です」
アシャはトーチェにこう言いました。
「あなたの乳飲み子は話せるのですか?」
すぐに神が答えました。 - 「子供ではなく,私イフアマズダです。
人間よ,この小さな唇がこの子の心に刺激されて言葉を発したとは思わないでください。
私は残酷な手による戦争を思い止まらせ,『目に見えない世界』の管理者を知る者を作るため,ここに来たのです。
ご覧なさい,この子には性別がありません。彼はイエシュア(イエス)であり,熱情を持たない生まれなのです」 - アシャは言いました。
「この女性は自分の外套の下にこの子を匿って,王の処罰から免れようとしているのでしょう!
娼婦め!
この女は男も持たずに受胎したなどと恥ずべき話を語っていました!
あなたの嘘は最初の出来事を良くしようとして,別の者が付け加えられているのです。
町から出ていきなさい,この悪女!
そうでなければあなたもその子も石で打ち殺されるべきだ!」 - トーチェは何も答えず,大泣きするだけでした。
この時,イフアマズダが言いました。
「あなたの手をこの子の唇に当てて,私がこの小さな手でどのような仕草をするのか確認してください。
そうです,その小さな姿をあなたの腕で抱いてあげてください」 - アシャは恐れながらも恐怖を押し殺してその子供を抱き上げました。
イフアマズダがこう言いました。
「人間よ,あなたが霊魂を見ることができれば,あなたの思考に磨きがかかり,忍耐と叡智が加えられるのに!」 - アシャは言いました。
「もしも,あなたがイフアン族の守護者であるマズダであるというのが本当だとしたら,何故あなたはこんな怪しげな弱い姿でいらっしゃったのですか?
1人の子供に何ができるというのでしょうか?
あなたはこの小さな手で剣を振り回せるのですか?
私は強く,翼を持ち炎に包まれた1,000人の天使を引き連れた威厳を持った神にお会いしたいのです!」 - イフアマズダは言いました。
「私の叡智は人間の叡智ではありません。
私の武器は矢や鋭利な剣ではありません。
人間の考えの範疇で偉大なことというのは,私にとって無いに等しいものなのです。
人間には無理なことでも,私ならばそれを偉大なものに仕立て上げられます。なぜなら私はこの強大な都市を滅ぼすからです。私は平和と愛のために来たので,町分断され,人と人が争い,血で洗う戦争がこの城壁で囲まれた王国に暴動を引き起こします。 - アシャは言いました。
「あなたの目的は何なのでしょうか?
もしもあなたが,この疑わしい姿で生まれた神であるとしたら,町を滅ぼす以上の動機がおありのはずです。
私はあなたに問い質したいです。
最も早熟な若者よ,あなたの目的は何であり,その正義は何処にあるのかを教えてはいただけませんか?」 - イフアマズダは言いました。
「人間の都市など私の目には何も映っていないのと同じです。
私はここに来たのは,他にも世界があり,正義の心が永遠に宿り続けることを人間に教えるためです」 - アシャは言いました。
「あなたの言葉は叡智そのものか,もしくは驚愕の内容に自分の判断を誤ってしまうかです。
私はここでの出来事を振り返ってみるため,一度帰ります。明日,また来ます。
このことは黙っていてください。なぜなら,もしも私ほどの高位の身分の者が霊的な物ごとに対して口を閉ざしていたことが露呈したら,私に待っているのは『死』だからです」
【3章】
- アシャが立ち去ると,イフアマズダは処女母トーチェにこう言いました。
「王があなたとその子を処刑しないように,子供を連れて身を隠しなさい」
トーチェは子供を連れて出発し,町の別の場所に逃れました。 - さて,アシャはソーチ王の下を訪れ,起きたことを話しました。
彼が話し終えると,王は言いました。
「古代の歴史によれば,神は定命の者たちの前に姿を見せる時,兆候や奇跡があった。あなたは私に言葉だけを伝えてくれた。だからもう一度行って,その子にこう言いなさい。
『王は奇跡が見たい』」 - アシャは翌日戻りましたが,そこには女性と子供は消えた後で,隣人に聞いても何処に行ったか分からずじまいでした。
アシャは言いました。
「もしも私が王にこの話をしたら,彼は私を嘘つきとして殺すだろう」
彼は王の下には戻りませんでした。 - トーチェと子供が暮らしている場所に,1人の吟遊詩人,名をチョイジョンが訪れ,処女母にこう言いました。
「子供はどちらにいますか?」
彼女は答えました。
「あの子は乾草の棚で眠っています。私は連れてきます」
彼女は子供を乾草の寝床から連れてくると,その子の外套には藁がついていましたが,その藁には根っこがありませんでした。 - イフアマズダはその子の霊魂が眠っている間に,子供を通して語り出しました。
「私はあなたに会いに来ました,チョイジョンよ。
あなたをここに連れて来たのは私です。なぜならあなたは処女母の赤ん坊の歌を作れるからです」
チョイジョンは怖がりながらもこう言いました。
「この文明が発達した時代に,そんなことが本当にあるのでしょうか!
奇跡です!
子供よ,あなたに話しかけても良いのでしょうか?」
イフアマズダは言いました。 - 「ご覧なさい,あなたは子供ではなくイフアマズダに話しかけているのです。
この藁を筆記箱に入れて,新しい土に植えてみてください。そうしたら1日で成長し,熟れた小麦となるでしょう」 - チョイジョンは王の前で歌を披露したことがあり,宮廷への出入りが許可されていました。彼はこの奇跡について王に話しに行きました。
王は言いました。
「哲学者アシャはその子について私に話してくれたが,今度は奇跡を見たいと思って彼を遣わしたが戻ってこない。
あなたは此処に来て『奇跡だ!』と言う。それを見ることができない者にとって,その奇跡に何の意味があるというのだ?
お前の王はただ信じるだけだと思っているのか?
『闇の果実』でも信じているのではないのか?
だからもう一度その子の所に行って,私の下に連れて来て,この目でその奇跡を見せてほしい」 - チョイジョンはその場所に戻りましたが,処女母と子供は消えており,隣人に聞いても誰も行き先を知っていませんでした。
しかし彼女は町の別の場所に身を隠していたのです。
今度は彼女の下を訪れたのはオシャンと言い,彼は息子が死にかかっていたため泣いていました。
彼にイフアマズダはこう言いました。
「泣かないでください,人間よ。私があなたの息子を癒してあげましょう。そしてあなたの娘の目も見えるようにしましょう」 - オシャンは子供の唇からもたらされた言葉を聞くと慄いて逃げ出しましたが,息子が癒され,娘は視力を回復したことを知りました。
彼は喜んでその場所に戻りましたが,処女母と子供は消えた後でした。
オシャンは王の世話係であり,謁見することができたので,彼は王の下を訪れ,自分に訪れた幸運について話しました。 - 王は言いました。
「哲学者アシャからその子の素晴らしい話を聞いたが,その子の下に彼を遣わしたが一向に戻ってこない。
次に吟遊詩人のチョイジョンが来て,彼が見たものを話してくれた。その母と子供を連れてくるように行かせたのだが,やはり戻ってこない。
お前が持ってきたのは,闇の時代に語られたような奇跡だ。だからお前はこの奇跡を見つけ出して私の前に引きずり出すまで,町中を隈なく探すのだ」 - 次の日,王弟の息子が王の下を訪れて,こう言いました。
「今日,私は天使や神々の時代にあったと思われる素晴らしい奇跡を見ました。ご覧ください,小さな子が私に震えながら哲学の言葉を話し掛けてくれたのです。
王よ,あなたは私が腰抜けでないことをご存じです。私の家には100の首を吊り下げているのです。
ああ,この子は自分のことを神イフアマズダと会話できるザラツゥストラだと宣言しているのです!
その子は私にこう言ったのです。
『どうしてあなたは神の息子や娘たちを殺すのでしょうか?
多くの首が天の前の栄光であってはいけません。
ご覧なさい,私は小さな指ながらソーチ王よりも強いのです』」 - ソーチ王は言いました。
「もうよい。その母と子をすぐに連れて来て奇跡を見せなければ,オアスの子供を全員,火に投げ込んでやる」
王弟の妻には1人の子供がおり,息子の妻にも1人の子供がいて,王の命令が自分たちに差し迫った問題だということが分かっていたので,彼女たちは大勢を連れてトーチェとザラツゥストラの探索に出掛けました。 - しかし霊魂のイフアマズダは母親に門を越えて,遥か遠くの『山羊の森』の方に逃げるように指示しました。そこにはリスティア族が釣りや狩猟,山羊の乳で暮らしていました。
イフアマズダは処女母にこう言いました。
「20年,あなたは森の中に隠れていれば何も恐れることはありません。なぜなら神が守ってくださるからです」
あなたの息子が他の男よりも大きく強くなったら,王の栄光のために捕われ殺された人族の罪を償わせるため,神が現れます」 - 処女母とその息子はその指示に従い,ザラツゥストラが成長し青年に達するまで『山羊の森』で暮らし,その体格は成人男性3人分と同じぐらいあり,彼を倒せる者は誰もいませんでした。しかし若い山羊のように柔和であったため,森の部族は「強さ」と「善意」という意味で『神の子羊』と呼びました。
【4章】
- ソーチ王はザラツゥストラを連行するか,さもなければオアスに住む全ての男児を殺害するという命令を下した時,主神たちは王の妻と,王の娘にして哲学者アシャの妻に陣痛をもたらしました。
それは王が命令を下す1か月前のことで,このようなことになるとは露知らず,2人の女性はその日,活気があり,強く,美しい2人の男児を授かりました。
オアスの法律によれば,王は自分の命令を取り消したり変更することはできませんでした。なぜなら王は『絶対正義』という立場を貫かなければならなかったからです。そのため彼は自分の親族や,肉親を死に追いやるのでした。 - そのため,ザラツゥストラの探索が徒労に終わった時,王は自分の命令を後悔しましたが,命令を変えるだけの正当な理由がありませんでした。
このことを聞いたアシャは潜伏先から出てきてこう呟きました。
「今から王の下に行き,自分も殺すように要求しよう」
そこでアシャはソーチ王の前に姿を見せて敬礼した後,こう言いました。
「王よ,私はあなたの苦境を聞いて,あなたに助言を申し上げたく馳せ参じました」 - 王は激怒してこう言いました。
「私の友アシャよ,聞いてくれ。お前は前に私の所に来た時,男を知らぬ処女の幼児の,奇跡のような話をしてくれた。
さて,太陽の町の法律によれば,それが真実であっても証明できなければその者には死の判決を下すことになっている。だがお前は血を流して私の前にいるのだから,法律は既に実行されたと思っていいのではないか?」 - アシャは言いました。
「当然ですが,王よ,法律は実行しなければなりません。その子供たちは『至高の御方』ではないのでしょうか?
いえ,なぜなら人間は何よりも崇高な存在だからです。万人の上に君臨するその法律は,決して蔑ろにしてよいものではないのです。
それ故にあなたは私を殺すべきなのです。私が馳せ参じたのを,自分の身を案じて言い訳したいからだとは思わないでください。王の命令が誤りとされるぐらいなら,むしろ全人類が滅ぶべきなのです。 - 王は言いました。
「アシャよ,お前は賢い。確かに法には誤りがあってはならない。なぜならそれが万人にとって判断の基準になるからだ。そして王になった者は,当然のように万物における絶対的な存在となる。歴史がそれを物語っている。
だが太陽や月,星の動きから叡智を悟ったお前に聞きたい。
『至高』の存在である王は束縛されていいのだろうか?
王は永遠に新しい布告を布告できないのだろうか?」 - アシャは言いました。
「王よ,私はあなたを騙すつもりはありません。だから正直に言えば,あなたが私のためを思って言っているのではなく,自分や娘の赤子のことを思っているのは分かっているつもりです。
私は勇気を持ってここにいるのではなく,命を惜しんでのことです。
しかし問題があります。もしもあなたが法を変えてしまえば,人間が作った法は全て必要に応じて変えられるということになります。それはつまり,人間の叡智は愚かということになります。その場合,人間は法によってどう審判を下せばいいのでしょうか?
それは真実を見つけるために誤りを仕込んでいるのではないでしょうか?」 - 王は言いました。
「お前はよく考えている。今朝,市場を歩いていると,兵士たちが敵の首を太陽の下で乾かしており,それを見た時にこれからの時代,弱い国家や部族が生命に対する不当な扱いを訴えてくるのではないかと考えた。王が自分の命令や法に過誤を認めたら,その結末は誰にも見通せない。なぜならどの奴隷も従者も女性も法に反発し,生きる権利を訴えるからだ。そうなったらこの地球は全人類を受け入れるだけ十分な広さがあるのだろうか?
それでもアシャよ,自分の息子を殺すことに対して,この苦しみはどこから来るのだろうか?」 - アシャは言いました。
「王よ,あなたは何に同情しているのですか?
あなたが自分の子供の死に対して同情しているのだとしたら,私に生きて欲しいと思う私の妻や子供たちの同情も認められて然るべきではありませんか?
そうではありません,同情は法や正義の敵なのです。同情は,悪だと泣き喚く私たちの性格上の悪なのです。
法は守られなけばいけません。
命令は守らなければいけません。
王の言葉は守らなければなりません。
何人も法や命令,王を超えて振る舞ってはいけないのです」 - アシャは言いました。
「ここは太陽の町です。もしもこの町が法に逆らったら,支配下の町はどうなると思いますか?
彼らは法を軽視したり,『どうせその法は間違っているのではないか?』と言うでしょう。そうなったら無政府状態になります。
巨大都市はたった1つの目的のために維持されます。その目的と人間の判断を分けてしまうと,私たち市民が得ている自由という名の栄光は風に吹かれて霧散することになります。
古代の国家が滅びたのは,法に対する不敬と,迷信が混ざったからではありませんか?」 - 王は言いました。
「アシャよ,私は何をすればよいのか?
息子の笑顔が見たい!」 - アシャは言いました。
「私とあなたの息子,娘の息子,そして全ての男児を処刑場に送り,首を斬り,火に投げ入れなさい。そうしなければ,ザラツゥストラが『見なさい,私はオアスの町を叩きのめし,藁の山のように崩壊させるでしょう』と言ったことが現実のものとなるでしょう。 - 王よ,私はそういった迷信や恐怖に怯えているとは思わないでください。
ただ私はこう理解しています。法が弾劾されると,オアスの人々が,あの法は間違っているとか,自分は正しいとか解釈するようになるでしょう。そしてあなたの部下が各方面で反旗を翻し,あなたの王国は滅亡するでしょう」 - 町では30日間,探索が続けられましたが,処女母とその子供は見つからなかったため,王は先の命令に則り,処刑の日を決めました。そして王の息子も含めた9万人の男児が死刑判決を受けました。
- この問題が遂行される前に,主神はチョイジョンの下に行き,王よりも強い幼児ザラツゥストラについての歌を作るようにお告げしました。またオアスの9万人の男児の死刑の歌もありました。
この歌は美しく,こうした状況も踏まえて昼夜を問わず路上で歌われました。
その風刺の歌は,今回の凶行を是として認めていたので,王でさえその歌を止めることはできませんでした。
【5章】
- 男児の処刑の日が来ると,処刑場に男児を連れて現れたのは1,000人にも満たない母親で,その他の89,000人の母親は前の晩に起きて,門から外に出て行きました。
- 王はその日を休日として処刑場に行くと,1,000人にも満たない男児しないなかったのでその理由を聞こうとしてこう言いました。
「王の命令以上に自分の子供を愛する母親はいるのだろうか?」
処刑されるため裸になって控えていたアシャが王にこう答えました。 - 「彼女らは自分の子供を愛したので,それは人間を愛したからではないでしょうか?
法は全ての人間の上に立つものではありませんか?
だからこの件に関して言えば,彼女らは法を免れようとしたので,彼女らにも死を与えるべきです。 - 王の妻ベトラジが幼児を連れて来て,こう言いました。
「ここにあなたの息子がいます,王よ。犠牲になる準備は出来ています。
アシャはとても合理的です。決して誤らない『至高の御方』,それが王の法です。
私の血肉を奪って,あなたの命令を証明してみてください。
さあ!
どうして躊躇するのですか?
あなたが少しでも惑えば,法に対する言い訳の門扉を開くことになります。
太陽はそれを望めばいつでも収穫を枯らさないのでしょうか?
そうです,私たちの最愛の子を打ち殺しますか?
あなたは太陽から降臨された神ではないのですか?
あなた自身が法に従わなかったら,誰が法に従うというのでしょうか?」 - 王は言いました。
「見ろ,まだ早朝だ。壁の外に逃げた者たち全員を役人に追わせて,母も子も死刑にしろ。それまでは一時中断とする」
処刑の光景を目撃するために集まった群衆は,王が中断すると失望の声を上げました。
多くの者は言いました。
「ちょっとしたことで王は臆病になる」 - 王は宮殿に戻り,アシャは処刑場で裸のまま立っていました。
群衆は叫びました。
「アシャの方がソーチよりも王らしい。彼を王にしよう。
ソーチ王よ!
我々は羊飼いを王には戴かない!」
誰も彼らを止めることもできず,この騒ぎのせいで何を言っても聞こえませんでした。
群衆は王の後を追って石で打ち殺し,アシャを太陽王としました。
結局,この命令で殺された幼児は1人もいませんでした。 - 神は言いました。
「人間よ,物事は何の原因もなく発生したり,全ては運任せということはありません。私が手掛ける仕事では予め計画を立てておき,指揮官が町を包囲するよりも注意深く進めます。
ザラツゥストラが生まれる前に私はアシャールを派遣して,私の眼鏡に適う人物を探しています。
アシャが言ったことは彼の考えだとは思わないでください。しかし彼には見えていなかったアシャールの美徳により,彼はそれと知らずに私の命令を実行してくれました。
王の妻についてもそうです。私の天使が王の前でそう話すように囁いたのです。
町の外に逃げた者たちは,私の眷属の天使たちに導かれたのです」 - 神は言いました。
「王の命令について,私は何も関与していません。なぜなら私は彼が自分の意志でその命令を実行することが分かっていたからです。
群衆が王を殺すことについても私は関与していません。なぜなら私は彼らが自分の責任でそうすることが分かっていたからです。
私が全員の心に話しかけたとしても,群衆が私の声を聞くことはないでしょう。なぜなら彼らの中では,テトラクトが支配的な力を持っていたからです」 - 神は言いました。
「群衆が王を殺したのは,彼が私の下から去り,私の言葉に耳を貸さなかったからです。
私がアシャを王にしたのは,彼が私に接触した際,アシャールを通して私の力が彼に付与されたからです」
【6章】
- ザラツゥストラが幼少の頃,神が彼を通して顕現しませんでしたが,神は主神の1人のエジャを送り込み,昼も夜もザラツゥストラの傍に控えさせました。
エジャは幼児にありとあらゆる叡智を教えましたが,自分が何者であるかは誰にも教えませんでした。 - ザラツゥストラが少年になると,主神は彼を通して顕現するようになり,歌や奇跡,予言を『山羊の森』で暮らすリスティア人に教えるようになりました。
この森は広大で,東を除けば人間の足で40日の道程がありました。どの方角にも家はなく,住民は樹皮や毛皮で作った天幕で暮らしていました。 - 主神はザラツゥストラに,彼らに家の建て方や山羊の飼い慣らし方を教えたら,町で暮らし,そうでなければ正義の名の下に地球を征服するように啓示を下しました。
彼らの居住区の中心地には,アフェルテオン川とその支流があります。
数年後,ここから住民が飛び出していき,この移民は『山の外』という意味の『フォネス人』と呼ばれました。
それでもこの人々がイフアン人であることに変わりはなく,パーシー人の王たちの迫害により彼らは逃亡してこの森で暮らしていました。 - 主神はザラツゥストラに言いました。
「見なさい,王から逃れてきた人々よ!
私は彼らを山羊と平原の獣を従える王にします」 - この時からリスティア人は『羊飼いの王』と自称しました。
ザラツゥストラは彼らに主神について教えると共に,人間は森の動物を支配しても,誰も隣人を支配してはならないと教えました。
その結果,リスティア人の男性は全員が自分を『王』と称し,女性は全員が『女王』と称しました。 - 主神はザラツゥストラに言いました。
「私の息子よ,私が導く場所に行き,『偉大なる霊魂』の聖なる民を見つけなさい」
ザラツゥストラは『山羊の森』を抜けて放浪し,オエタカ山の南にあるハラウォチジに来ました。そこにはイヒン人が暮らす3つの大都市と12の小さな町がありました。 - 主神はイヒン人の所におり,ザラツゥストラが来ることを彼らに予言していました。そのため今回のことはイヒン人とザラツゥストラの両方に証明されたのでした。
主神は大司祭に言いました。
「ザラツゥストラが町の壁の中に入るのを許してください。なぜなら彼は純粋だからです」 - ザラツゥストラが町に入ると,神の祭壇の前で礼拝を行っており,主神は大きな光の中から現れ,大司祭にこう命じました。
「ご覧なさい,私の息子をあなたの所に連れてきました。あなたはイヒン人の法に従って,彼が司祭になれるように聖油を注いでください。そして彼に古代の儀式と式典を教えてあげてください」 - これによりザラツゥストラは司祭となり,1人のイヒン人として受け入れられ,水と火の杖を授かったのでした。
彼は聖なる言葉や,書いたり石板を作ったり,亜麻から布を編み服を作る技術を教えました。 - ザラツゥストラは7年間イヒン人の下に留まり,断食や祈り,歌や踊りを主神の前で行いました。
その後,主神は彼に『山羊の森』に戻るように命じました。彼は休みがあれば滞在し,リスティア人に色々と教えました。主神も彼と一緒にいて奇跡を見せたりしていました。 - 7年目が終わろうとする頃,主神はザラツゥストラに言いました。
「ご覧なさい,光の夜明けが来ようとしています!
あなたは母親に自分の民を託しなさい,そうしたら私があなたを生まれた町に案内します」
ザラツゥストラは言いました。
「主神よ,私が生まれた町を教えてくれませんか?」 - 主神は言いました。
「大きな町ですが,あなたの手で陥落します。なぜならイフアマズダがそこの王に好意を寄せなくなったからです」 - 2日でザラツゥストラはオアスの町に着き,町に入りました。しかし彼は秣を持っていませんでした。オアスの法律では,見知らぬ者が町に来たら法と王への忠誠の証として秣を持参することになっていました。彼が門の内側に入ると門番が秣を持っているか聞いてきましたが,ザラツゥストラはこう答えました。
- 「私はこの世界に裸で生まれましたが,オーマズドは私に秣を求めませんでした。あなたの王は創造主よりも偉大なのでしょうか?」
- 門番は言いました。
「あなたの言葉が分かりません。下僕に法律が説明できると思いますか?」
ザラツゥストラは言いました。
「あなたは賢いです。私を通さなかったことで苦しまないでください。
主神があなたに食料を恵んでくださることでしょう」 - 彼がこのように話すと,門番の足下にたくさんの果実が落ちてきました。門番は気味悪がって脇に立ち,ザラツゥストラが中に入るのを阻みました。
門番はこの奇跡を人々に言い触らしただけでなく,王にそのことを告げに行きました。
この時の王はソーチ王の死後に君臨したアシャでした。アシャはこの奇跡を聞くと,すぐに幼少の頃に見た人物と同一人物ではないかと思いました。 - アシャ王はすぐにザラツゥストラを見つけるため役人を派遣し,法廷に連れて来させました。
しかし主神はこのことを知っており,ザラシュストラに自分の責任でどうするか決めるようにお告げしました。
そこで彼は役人が戻ってくる前に,自ら王の前に出向きました。 - 王は言いました。
「あなたは誰ですか?
そして何の目的で王の前に来たのですか?」 - ザラシュストラを通してイフアマズダが言いました。
「私はイフアン人の神イフアマズダです。
私が媒介にしているこの者はザラシュストラと言い,母の腕の中であなたが見た者です。
私たちは2人で1人です。
王よ,私があなたの下に来たのは2つの理由からです。
あなたは私をここに呼んでくれました。だから私はあなたを利用したいです」 - 王は言いました。
「見知らぬ者よ,もっと話してくれれば,あなたの言葉を受け入れられます」 - 「ソーチ王の時代に」とイフアマズダは言いました。
「私はあなたをオアスの王にしました。その日から今日まで私のアシャールたちはあなたと共にいて,あなたが昔見た幼児の情報を密かに探しているのを聞いていました。なぜなら誰もが不滅でいられるか否かは,あなたの判断にかかっているからです。
あなたは今晩,私と一緒にいてください。そうすれば私はソーチ王の精神体をあなたに見せましょう」 - アシャは言いました。
「あなたがこの町を攻撃したら,町は滅ぶでしょう。
ご覧なさい,あなたはそこに居ます!
それでも私は自分の光の中に立っていたくないのです」
今度はザラシュストラが自分の言葉で話しました。
「王よ,哲学を恐れないでください。あなたが1本の藁を曲げるように,神々は地球の国家を掌握します。町は6年経てば滅び,あなたは困窮しますが,それでも今よりも幸せになります」
【7章】
- 夜になり,王がザラツゥストラと2人きりで座りました。
イフアマズダが壁に光を投影して,ソーチ王の精神体をアシャの前に見せました。
ソーチ王は言いました。
「お前は私が誰だか分かるか?」
アシャは言いました。
「はい,ソーチです」 - ソーチは言いました。
「本当だ,王よ,精神体は不滅だ!」
そこで消えました。
アシャは言いました。
「ソーチのように思います。それでも彼であれば,私のことを王ではなく,アシャと呼んだのではありませんか?」
ザラツゥストラは言いました。
「他の霊魂でも呼びますか?」
アシャは言いました。
「それでは私の妻の精神体に会わせてもらえませんか?」 - もう一度光が見えて,アシャの妻の精神体がそこに灯り,彼は妻を見ました。
アシャは言いました。
「確かにそうです」
そこで彼女は消えました。
アシャは言いました。
「彼女だったら話してくれたでしょう」
ザラツゥストラは言いました。
「別の霊魂でも呼びますか」
アシャはチョイジョンを呼びました。彼は太陽の下で似る者はいない唯一無二の吟遊詩人でした。
チョイジョンも現れると,幼児虐殺の歌の一つを歌いました。 - アシャは言いました。
「チョイジョンのようでした。しかし彼であれば,きっと奇跡について話してくれたでしょう」
次にザラツゥストラは言いました。
「他の霊魂でも呼びますか」
アシャは他の霊魂を呼びました。こうして20人の死者の霊魂が呼び出され,いずれも自分のことを証明し,彼と対面で話し,誰もが自分に関係する話をしてくれました。 - ザラツゥストラは言いました。
「明日の夜にもう一度,一緒に座りましょう」
次の日の夜,20人の別の死者の霊魂が現れ,王と対面で話しました。それでも彼は信じませんでした。
ザラツゥストラを通してイフアマズダが言いました。
「人間よ,あなたを満足させるにはどうすればよいのでしょうか?
なぜなら霊魂は実体で証明することはできず,実体もまた霊魂で証明することはできないからです。
ここには2つの性質があります。1つは集合することで成長するもの,もう1つは拡散することで成長するものです。その中でも『あらゆる光』は最高位の存在です。
闇の存在により光を知ることができます。光の存在により,闇を知ることができます。実体と霊魂の存在についても同様です」 - イフアマズダは言いました。
「王よ,あなたの世代は霊魂を信じない期間が長く,そのせいでどんな証拠もあなたの前では意味をなさなくなっています。
私を誰だと思っていますか?」 - アシャは言いました。
「ザラツゥストラです」
次にザラツゥストラが言いました。
「私は誰だと思いますか?」 - アシャは言いました。
「ザラツゥストラです」
イフアマズダが言いました。
「あなたがその目で見たこの肉体,その耳で聞いたこの声で,あなたは実体としての判断を下し,答えを導いているのです。 - しかし王よ,私はあなたに宣言します。
実体としての判断と同じように,霊的な判断というのもあるのです。
全ての人間には霊的な人間がいて,決して死にません。その霊的な人間だけが霊的な事柄を嗅ぎ分けることができるのです。そしてそれだけが死者の霊魂を認識できるのです」 - アシャは言いました。
「鏡は自分と瓜二つの存在を映し出すように,あなたは,実体を持つあなた個人に属していないということを,私にどう証明してくれるのでしょうか?」 - イフアマズダが言いました。
「それが証明されたとして,あなたに何の利益があるのですか?
それが証明できなかったとして,あなたに何の利益があるのですか?
聞いてください,これは叡智なのです。天界では同じような疑問を持った精神体が何百万人もいて,自分が死んだことさえも知らずにいます。特に戦争で殺されたり,霊魂を信じていない人々です」 - 王は言いました。
「あなたは誰だと言うのですか?」
イフアマズダは言いました
「まず創造主オーマズドがいます。彼は全てを統べ,全ての内におり,その人格は完全です。空の『目に見えない世界』におり,次にこの世界,そして星々,太陽,月にです。それらの後に定命の者と死者の霊魂がいます。 - 聞いてください,王よ。死者は『至高の天界』であるオーマズドと,『あらゆる光』の管理者であるその御名を知らないため,彼の高貴なる天使たちを地球に管理者や教師として遣わし,彼らが秩序を持って活動できるように長や上長を配するのです。
そのため最上位の上長はイフアマズダと言い,定命の者と霊魂の階級を上げるために彼らを統べている『管理者の声』なのです。
訳注)階級を上げる≒exaltation。上長≒highest captain。
ジェホヴィの収穫物として花嫁花婿がいますが,誰でも花嫁花婿になれるわけでもなく,ある程度の階級がないと花嫁花婿にはなれません。その手助けをするのが神や主神の役割の一つであるため,そのように読み替えられるように訳しています。 - 王よ,知っておいてください。
私が話しているのは,私の管理下にあるあなたやこの町,この国なのです。
私は人間の血に塗れた手に留まりに来ました。
ザラツゥストラを通して私はオーマズドの法を明らかにし,いかなる法よりも上にあります。
だから私は,人間の中で最も熟していたあなたを王にしました。
人間には『至高なる御方』の法を持つ必要があると認識していたあなただからこそ,私はあなたの下に来ました。
そうです,あなたの若い頃,そして長い生涯の間,私はあなたの心にこう話し掛けてきました。
『アシャよ,あなたにとっての『至高なる御方』を見つけてください。
アシャよ,あなたは死ぬまでの間,不思議な人生を送ることでしょう!
アシャよ,星を読む力を得たあなたは,星々が持つ力を見つけなければいけません!』」 - 王は言いました。
「もういいです!十分です!
見知らぬ人よ!あなたはその奇跡で私を振り向かせてくださいました。
あなたの優れた叡智のせいで,私はもう生きているのか死んでいるのか分からなくなりました。
残念ながら,私の親族は死にました。私の友人は愚かです!
私にはこの奇跡を話す相手がいません。
あなたはこの国に滞在する間,この宮殿で暮らしてください。そして妻のために望むものがあれば,何でもあなたに与えましょう」 - イフアマズダは言いました。
「王よ,私が次に来るまでの間,あなたに与えた助言を守ってください。なぜならしばしの間,私は森に戻らなければいけないからです。
そのため私に墨と筆,書くための布をください。あと私に2人の下僕を付けてください」
アシャは言いました。
「私をあなたの下僕の一人にしてください。そうしてくだされば,私は王位を放棄します!」 - イフアマズダは言いました。
「あなたがいてくれるなら,私はあなたを頼りにします」
こうして王との会見は終わりました。
翌日,ザラツゥストラは『ザラツゥストラの法』を書くため森に戻りました。
【8章】
- こうして出来上がったのが『ザラツゥストラの法』であり『イフアマズダの法』です。
英語で翻訳する場合,ジェホヴィの御意志に従い,天界の図書館から転送して記述します!
訳注)『OAHSPE』は自動書記という手法で書かれた奇跡の書です。今まで違い,何よりも畏怖を感じたのは,憑依された代筆者の意志ではなく,英語に翻訳することを前提として記載している点に触れている点です。
個人的に,『OAHSPE』は主神が天使アシャールを代筆者に憑依させて執筆させたのだろうと思っています。ただ,この『OAHSPE』には創造主ジェホヴィの御意志が介在していることが触れられており,そのことから推測するに,おそらく天界でも『OAHSPE』の完成は一大プロジェクトだったのではないかと感じました。 - 以下に記します。
- ザラツゥストラは言いました。
「聖なる者よ,私のために通訳してください」 - イフアマズダは言いました。
「純粋なる者よ,完全なる純粋よ!
聞いてください,私が通訳し,あなたが書くのです」 - ザラツゥストラは書きました。
それからイフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに語りました! - 最初はオーマズドがいました。そして彼は全ての創造物を創造しました。
彼は全てでした。
彼は全てです。
彼は全てに通じており,手と翼があります。
『目に見えるもの』と『目に見えないもの』の起源を始めました。 - 彼が創造した最初で最良で最高の場所は,『全ての可能性を持ったもの』でした。
彼が創造した2番目に最良で最高の場所は,『全てにおいて良いもの』でした。
彼がいれば,あらゆるものが可能になります。
彼がいれば,あらゆるものが良くなります。 - 次にオーマズドは最初の最良の場所にして,最も長く持続し,最上級の良き創造物『エリヤナ・ヴァジャ(精霊)』を創造しました。
- オーマズドは次に創造したのは,3番目に最良の場所ハライティでした。そこは上天の最良の場所にして,天界のエリヤナ・ヴァジャの創造主の息子にして,地と骨の悪『アンラメイニュアス』から人間と霊魂を救済したフラガパッティの家です。
- オーマズドは次に創造したのは,4番目に最良の場所ガウでした。そこは強い手足,豊かな胸を持った天界の姿のスーグダが暮らす場所で,音楽に満ち溢れた場所です。
- ハライティ領内のモウルから,創造主オーマズドの御声が聞こえてきました。
それはイフアマズダに届けられたものです。
そして今『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに届けられたものです。 - 創造主が次に創造したのは,5番目に最良の場所バグディです。そこは崇高な基準を持った場所です。
- その後,悪の化身サ・グゥアンであるアンラメイニュアスが来て,種を蒔きました。
- その後,創造主は理性の人間ティ・スギを創造し,自分の内側に目を向けて,自分の精神体を見えるようにしました。
【9章】
- ハライティの眷属により,イフアマズダの声が『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに届けられました。
「聞いてください,ザラツゥストラよ。
私はイフアマズダです。あらゆる創造物を創造したあなたの創造主の声を聞いてください。 - 以下は最初に創造したものです。
まず,大地と空気,水を創造し,それらの上や中で生きる生物を創造しました。 - 闇から無へ!
無駄に見えても,無駄なものなど何一つありません。
そして創造主オーマズドの『形』を作り,それから物に『形』を与えていきました。 - 生きている生物。
死んだ生物。
その全てに最初に息を吹き込む者,つまり創造主オーマズドを創造しました。 - 足があったり翼があったり,髪があったり羽があったり,裸であったり。
這ったり歩いたり飛んだり。
そういった全ての生物を創造主オーマズドは創造しました。 - 『生』と『死』を有する『一生』を持つ全てのものに。
オーマズドは自分の生命から彼らに『生』と『死』を与えました。 - 『完全に純粋なる者』ザラツゥストラはイフアマズダに尋ねました。
「あなたはこのことを他の誰かに話しましたか?」 - イフアマズダは言いました。
「前は100万人!
その前も100万人!
10憶人以上です」
ザラツゥストラは尋ねました。
「あなたは誰と誰に明かしたのですか?」
イフアマズダは答えました。
「言葉を持った最初の男女ヴィヴァンホです。
純粋なる男女を最初に創造した日に,私は来て,このことを明かしました」
『完全に純粋なる者』ザラツゥストラは言いました。 - 「完全に純粋なる者。
完全に善良なる者。
完全に賢明なる者。
完全に聖なる者。
完全な善行を施すこと。
これらは何のためにあるのですか?」 - イフアマズダは言いました。
「ザラツゥストラよ,これらは私の声を聞くためにあるのです」
ザラツゥストラは言いました。
「完全なる悪者。
完全なる愚者。
完全なる悪意を持つ者。
悪事を行うこと。
これらは何ですか?」 - イフアマズダは言いました。
「ザラツゥストラよ,これらは私の声を聞けなくなるものであり,アンラメイニュアスです!」
ザラツゥストラは尋ねました。
「あなたの声が聞けなくなると,『人格』が失われるのですか?
あなたの声が聞けると,『人格』を有していることになるのですか?」 - イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。
「アンラメイニュアスは1つの『人格』でしたが死にました。
ヴィヴァンホも1つの『人格』です。彼の者は全ての聖,全ての善良,全ての賢明の中で生きています。
しかし全ての悪,全ての不良,全ての愚行の中では,アンラメイニュアスは死んでいません」 - 『完全に純粋なる者』ザラツゥストラは尋ねました。
「全ての善良はどこから来るのですか?
全ての悪行はどこから来るのですか?
完全な善者とは誰ですか?
完全な悪者とは誰ですか?」
イフアマズダがザラツゥストラに答えました。
「あなたは,全ての悪には名前があり,全ての善にも名前があることに気付いています。名前がなければ誰も話し掛けられないからです。
ご覧なさい,私は『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに書き物を遺します。
私が最初に書く『印』を,あなたは『完全なる善』『創造主』『管理者』『光』と呼ぶでしょう!
次に私はここに『円』と『十字』と『葉』を書きます」 - イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。
「この『印』を見る者,そして出会う者は誰でも,全ての名前の原初なる『創造主』を見ます。
この『印』を書く者は誰でも,完全なる善の名前を書くことと同じです。
この『印』を口にする者は誰でも,全ての管理者オーマズドの名を口にするのと同じです。 - イフアマズダは『円』を書き,その4つの頂点に4つの闇を書き,それをアンラメイニュアスと呼びました。『ウ・ドルク』,『全ての真実』『あらゆる光』『全ての善』に反する者という意味です」
イフアマズダはザラツゥストラに説明しました。 - 「ご覧なさい,悪の円の中に『全ての善』の名『十字』がありました。そこは光があり,その4つの頂点は黒でした」
イフアマズダはこの印を『運命』と呼び,『完全に純粋なる者』ザラツゥストラにこう説明しました。
「この3つの印は全ての創造物を含んでいます。そのため3番目の名前は『運命』となり,これからは永遠に逃れることも,分かれることもできないのです」 - ザラツゥストラはイフアマズダに尋ねました。
「悪は悪であり,善は善ですか?」
イフアマズダは言いました。
「悪とは人間には悪だが,オーマズドには悪ではありません。善は人間には善でも,オーマズドには善ではありません。
オーマズドの前では2つの状態があるだけです。悪とか善とかではなく,成熟か未熟かです。
オーマズドにとって,人間が悪と呼ぶのは『未熟』であり,善と呼ぶのは『成熟』なのです」 - イフアマズダは説明を続けました。
「ザラツゥストラよ,理解してもらうために,混乱しないために,あなたは『悪』は『悪』と,『善』は『善』と呼ぶべきです。
聞いてください,私の息子よ。 - 緑の果実がなければ,どれも成熟しないでしょう。
悪がなければ,誰も善にはなれないでしょう。
オーマズドは全ての創造物を『善』として創造しました。しかしそれでどうなったかと言えば,『何も起きなかった』のです。まるで死んでいるかのように何も動かず,何もないかのようにそこにあったのです」 - オーマズドが外に向かって息を吹きかけるとどの生物も動きました。前に進む者は『完全なる善』であり,後ろに残っている者は『完全なる悪』です。
このように創造主は『善なる創造物』イフアマズダと『悪なる創造物』アンラメイニュアスを創造したのです。
【10章】
- イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。
「あなたの創造主はあらゆるものを創造しました。創造している間は一時のようであり,また一時,また一時と,計り知れないぐらい何度も繰り返しました」 - イフアマズダはザラツゥストラに言いました。
「こうして創造物が創造されています。
こうして創造物が創造されました。
これからも創造物は創造されます。
『あらゆる光』の光はオーマズドです。彼は『全ての精神体』の精神体です。そこには,創造主オーマズドと『全能の母』ミーが創造した『目に見えるもの』と『目に見えないもの』があります。
そして創造主オーマズドと,全能にして妊娠したことのない『処女母』ミーによって創造されたのが,表現し,全てを語り,全てと交信する『声』であり,これが息子のヴィヴァンホでした。 - イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。
「私を見なさい,ザラツゥストラよ!
私はここに1本の直線を引きます。そして別の直線を引きます。そしてもう1本引き,それぞれを交わらせます」 - ザラツゥストラは答えました。
「三角形になりました。イフアマズダよ,これは何を意味しているのですか?」
イフアマズダは答えました。
「御父,御母,息子の3人が同体であることを意味しています。
オーマズドは『万物の霊体』です。
ミーは『目に見えるもの』と『目に見えないもの』です。
ヴィヴァンホは『事物の表現』です。 - イフアマズダはザラツゥストラに言いました。
「この3者が全てを構成し,全てはただの1つに過ぎず,それ以上でもなければ,これからもそうなることはありません。
それにも関わらず,息子よ,このそれぞれには100万の部品,10憶の部品,1兆の部品があるのです。そしてどの部品も全体のようなものです。ザラツゥストラよ,あなたもそうです。なぜならあなたはこの3つの属性を持っており,それ以外のものは持っていないからです。
全ての創造物はその中に3つの属性を持っています。
このようにオーマズドは全ての生命体を創造しました。彼は3者を1つに包含するように,自分に似せて兄弟姉妹を創造しました。最初のものは『霊体』『精神体』であり,理解不能な存在です。
2番目のものは『獣性』『容姿』『人格』であり,個性と呼ばれるものです。
3番目のものは,受け取ったり伝えるための『表現』です」 - イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。
「受け取ったり伝えたりすること以外に,人間には何があり,それ以上に何を望んでいるのだと思いますか?」
イフアマズダは雌牛の絵と,馬の絵を描きました。すると強い牝馬が駈け出して行きました。
彼はザラツゥストラに尋ねました。
「このどちらが『受け取る』を意味すると思いますか?
このどちらが『伝える』を意味すると思いますか?」
ザラツゥストラは気付きました。 - イフアマズダはザラツゥストラに言いました。
「消極的になるのは『雌牛』になることです。積極的になるのは『馬』になることです」 - ザラツゥストラはイフアマズダに尋ねました。
「これを書くとしたら何語ぐらいになるのでしょう!
あなたは博識な言葉を多用し,完璧な意味で書いてくださいました。
あと何語ぐらいでしょうか?」
イフアマズダは答えました。
「1,000語や10,000語では全てを書き尽くせません。しかし創造された単語は全部で1憶の10倍になります」 - 『完全に純粋なる者』ザラツゥストラは言いました。
「全ての単語で私に書いて,その意味を私に説明してください。そうしたら人間がこれ以上闇の中を彷徨わなくても済むように,『全ての真実』を教えるため世界を旅します」 - イフアマズダは10,000,1,000の単語で書き下し,その意味を説明しました。
その後,ザラツゥストラは30日30晩,飲食,睡眠もとらず,未開地の中で座っていました。
イフアマズダは天界と地球の秘密を明らかにし,それらを本に書き残すように命じました。
彼はそれを実行し,最初の本『ザラツゥストラの法』または『イフアマズダの法』となりました。
【11章】
- イフアマズダの力,この権威により,私ザラツゥストラは創造物を明らかにします。
- オーマズドは良い創造物を創造しました。
最初に創造したのは,『目に見えないもの』と『無』から土と水,不動のものでした。
2番目に創造したのは,『天界の光』とどこにでもある暑さと寒さです。
3番目に創造したのは,全ての生きる動物,魚,鳥でした。
4番目に創造したのは,人間の男女でした。 - オーマズドは息子のヴィヴァンホを通してこう仰せになりました。
「話!声!言葉!
人間の男女は,創造した全世界で,唯一の話す動物でした。 - オーマズドは『死』アンラメイニュアスを創造しました。そして彼に7つの頭を付けました。
最初は『虚栄心(ウク)』
次に『おしゃべり(オウオウ)』
次に『無価値(ホージー)』
次に『嘘(ウスガ)』
次に『不治の悪(ヒシー)』
次に『悪を為す悪(ボー・ヒス)』
次に『王と指導者(ディーヴァス)』 - 次にオーマズドは人間たちを繋げる言葉『ハロユ』により,団体(クラン)を創造しました。
- 次にオーマズドは居住地(オケア)を創造しました。
次に彼は神の住居を創造し,そこの四隅に善と悪をそれぞれ設けて,それら『ヴァレーナ』を創造しました。 - 次に生と死の『ハオマ』のために『栄養』を創造しました。
次に彼は疲労の『ハラクイティ』のために『休息の恩恵』を創造しました。
その後,彼は甘い香りと豊穣な牧草地『ウルヴァ』を創造しました。 - オーマズドは強さの『チャクラ』を示す『配合』を創造しました。
次に知識を受け取る力の『ハーデンマズド』を創造しました。 - 次にオーマズドは聖なる日(ラック)を創造しました。
次に彼は全ての神聖に対して『月の4つの御印』の『ウギット』『エギット』『キギット』『ムギット』を作りました。 - 彼は言いました。
「人間よ,6日間は働き,7日目は礼拝しなさい。なぜならそれが『月の時間』だからです」 - 次に創造主オーマズドは,東のイヒン人のように王がいなくても生きる力を創造しました。そして彼が創造したこの力の名は『ランハ』と言いました。
- イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。
「『ランハ』を獲得すること。
そのために『ランハ』を獲得する方法『聖なるマズドの法』があります」 - オーマズドは王となり,それ以外の者を認めてはいけません。
彼は永遠にあなたの『最高の愛』となり,全ての『愛』の上に君臨します。 - あなたは他の支配者,王,女王,主神,神を否定しなさい。
- あなたは創造主オーマズド以外に対して畏敬の念を抱き平伏してはいけません。
- あなたは毎日創造主に対して契約を結び,子供たちにもそのように教えなければいけません。
- あなたは『月』の4つの日を神聖なままに保ちなさい。なぜならそれらを司り観測している神と天使たちが交替する日だからです。
- あなたは創造主が生物として創造したものを殺してはいけません。
- あなたは創造主の次に御父を愛し,その声に従い,御母を尊びなさい。なぜなら彼女は創造主の意志によりあなたをこの世にもたらしたからです。
- あなたは女性を追い求める欲望に苦しんではいけません。
- あなたは他人の物を奪ってはいけません。
- あなたは自惚れてはいけません。なぜなら何一つあなたのものなど無いからです。
- あなたは真実でないことを語ってはいけません。
- あなたは隣人について陰で語ってはいけません。なぜならオーマズドがそれを聞いたら天使を遣わして,あなたが言ったことを隣人の精神体に伝えるからです。
- あなたは呆けたり怠けたりしてはいけません。そうしないとあなたの肉体は弱くなり,その心は衰えます。
- あなたはいかなる男女,子供に対して妬んだり,憎んだりしてはいけません。
- あなたは罪を犯したいかなる男女も咎めてはいけません。なぜなら彼らは創造主のものだからです。
- あなたは自分の子供を叱り,正道を歩ませるように教えなさい。
- あなたは妊娠中の妻に嘘をついてはいけません。
- あなたは第5世代を超えた場合を除き,自分の親類から妻を迎えてはいけません。
- あなたは無意識に『自分の癖』を行ってはいけません。
- あなたは与える以上に隣人に望んではいけません。
- あなたは生涯を通じて,4番目の月の1日を断食しなさい。その日は肉も魚もパンも果実も食べず,ただ水だけは口に入れても良いものとします。
- あなたの人生で丸1年は,貧しい人と寝食を共にし,彼らのために寄付を募りなさい。
【12章】
- イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。
「私は3つの身分を作りました。
最初は全ての人々に君臨する聖なる民イヒン人です。なぜなら彼らは私の命令を守ってくれるからです。
2番目がイフアン人です。私は他の人々よりも力強く創造しました。なぜなら私は彼らを使って地球を治めるからです。
3番目が何も学ばない悪の民ドルク人です」 - イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。
「人間の身分を覚えておいてください。
私があなたを創造したその場所に,あなたの血を残してください。また私があなたを創造したその身分以外の者と結婚してはいけません」 - イフアマズダは言いました。
「私はイフアン人の中に1,000の身分を作りました。
王,医者,手品師,司祭,農夫,荷役,足の速い使者,そして太陽の下にある全ての職業です。
私はその身分の中に全ての人々を創造し,彼らは自分と同じ身分以外の者と結婚してはいけません」 - ザラツゥストラはイフアマズダにこう答えました。
「私はあなたの掟を守ります。あなたの掟が70あろうと,700,7,000あろうと。 - 私はあなたが創設された身分を聖なるままに保ちます,イフアマズダよ。
私はこの聖なる真実を子供だけでなく,下僕も含めた全ての人々に教えます」 - イフアマズダは上記の全ての掟を書くと頭を下げて,石と布でできた本に口付けした後,こう言いました。
「これが私の聖書です。
『完全に純粋なる者』ザラツゥストラよ,これを手に取って世界中を旅し,教え,説いて回りなさい」 - 『完全に純粋なる者』ザラツゥストラは頭を下げて本に口付けするとこう言いました。
「これはあなたの聖書です,イフアマズダよ。
私は,これを手に取って世界中を旅し,教え,説いて回ります」 - こうして最初の,その大半は定命の者たちのために書かれた聖書が完成しました。
背が高く美男子のザラツゥストラは書き終えるとイフアマズダに尋ねました。
「最初は何処に行きましょうか,我が主よ?」 - オーマズドの法,ザラツゥストラの法を創られたイフアマズダは言いました。
- 「私の聖書である『オーマズドの法』,『ザラツゥストラの法』を手に取ったら,最初はイフアン人の王にして,太陽の町オアスの王アシャの所に行きましょう。
私は彼が生まれた日から,あなたのために準備してきました。そしてあなたが生まれた日から,私は彼に,あなたの幼い頃のことを語り続けてきました。 - 信仰心篤いザラツゥストラは出立すると,アシャ王の下を訪れました。
王は彼にこう言いました。
「とても遅かったですね!
見てください,私は100回,1000回と星占いを行いました。
私は天界の全ての星に名前をつけ,天体図を作りました。
私は1つの星が他の星に与える力や,この世界に及ぼす力や,太陽や月に与える力を計測しました。 - そうです,私は東の大都市に博識な学者を派遣し,南にも北にも西にも博識な学者を派遣しました。
私はジャフェスとセムの王ボウ・ガン・ガッドや,ビン・トゥ,そして偉大なる哲学者ア・ティドンが暮らす『フグ・シン』の大都市にも派遣しました。
そしてこれら全てから私は大いなる叡智を手に入れました。 - そして聞いてください,ザラツゥストラよ。
私はあなたの哲学が真実であるかのように話しますが,それでも私はまだ信じていません。
第1に,全ての星は何もなく,ただ嘘しか言いません。この者はこの星の下で生まれたとか,あの星の下で生まれたとかは関係がないのです!
年老いた私はこれまでに何千という人間を観察してきました。そうです,星が王や女王を統べているのかどうかに関して,私はあなたにこう宣言します。
『星の哲学ははっきり言えば嘘です』
そうです,私は自分についても調査し,私はよく,最初に意図した考えと相反する行動に出ていることが分かりました。しかしその原因については分かりません。 - これも私が発見したことです。
個人に関係する原因は1種類です。王や女王に関係するのは別の種類の原因です。
しかし私はそれでも誰もが自分よりも強い『何か』によって自分の行動範囲が縛られていると思っています。
この原因を見つけるため,私は大宇宙の全ての星を隈なく調査しましたが,そこに真実は見つけられませんでした。 - 私はあなたの神の名に誓い,質問します。
この問題についてあなたはどうやって王である私に証明できますか?」 - ザラツゥストラは答えました。
「私の手を介して,イフアマズダは多くの哲学を説明した『至高の聖書』を書かれました。
私の神の命に従い,私はこの本をあなたに捧げます。そしてこの本を読んでください」 - 王はその本を手に取って読むと,翌日,ザラツゥストラが再び王を訪れました。
王は言いました。
「あなたの本には色々と書いてありますが,そのほとんどは証明されていません。
あなたの神は数多くの御業を為し,創造したと言っております。
まず私には神がいるのかどうか分かりません。仮に神がいたとしても,神があなたの下を訪れているのかどうか分かりませんし,神があなたの下を訪れているのだとしても,そして神が本当に神だとしたら,どうして私の下に来ないのでしょうか。
こういったことを踏まえて,私はあなたの叡智ではこの疑問に答えられないと訝しんでいます。
私たちを支配する『目に見えないもの』が神々であり,私たちの下に来るのが死者の霊魂だとして,そういうものだと私たちの精神に無意識に働きかけているのだとしたら,私たちが真実や叡智を掴もうとしたり,そうしなかったりすることに何の意味があるのでしょうか?
全ての物事を霊魂や神,主神に任せてはいけないのではありませんか?
こういったことを古代人が信じていたのをあなたは知らないのではありませんか? - そもそも古代人とはどういった者たちだったのでしょうか?
彼らは闇の中にいて,恐ろしい儀式や式典,殺人や凶悪な行為に憑りつかれていたのではありませんか?
こういった宗教に対して『信じない』という叡智により,私たちは大都市や帝国を築くに至ったのではありませんか?
何千,何万という大都市を見てください!
彼らはその規模に至ったことに対して,誇りに思っていないのでしょうか?
なぜなら都市の城壁や門には蛇や獅子,ドルク人の頭蓋骨を何千も飾っており,そういった都市は1つだけではないからです」 - イフアマズダがザラツゥストラの声を介して王に語り掛けました。
「王よ,あなたの神の言葉を聞き,心に留め置きなさい。
全ての人間には2つの『誕生』があります。1つ目は母の子宮から生まれるもの,2つ目は実体界の肉体から生まれるものです。
最初の『誕生』より先に,子供の意志や力がその運命を決めることはありません。しかし霊的な誕生,つまり定命の者の『死』より前に,人間が次の世界の自分の『未来の運命』を決めるために行うべきことはたくさんあります。 - 王よ,私は実体界の人間が達成できるのはその『実際の生涯』の半分しかないことを,あなたに宣言します。半分は自分自身を管理しています。しかしもう半分は,定命の者たちの世界に対する場所や行動を制御しています。
それにも関わらず,人間は最初の半分しか選択できません。
霊魂や神が人間を奴隷や玩具のように支配しているとは考えないでください。なぜなら別の力も人間を支配しているからです。それは霊魂や神,星,月,太陽ではなく,地上における『欲望』を育む実体界の環境です。 - 霊魂を支配するのは実体界の星でもなければ地球でもなく,月でも人間でもなく,『オーマズドの法』であり,定命の者たちにとって微細で『目に見えないもの』は万物の根源であり支配者なのです」
- アシャは言いました。
「私がこれを信じようとは!
私がこれが真実であると知っていた!
『目に見えない』世界を私が理解できますように!
なぜなら私は自分の命令よりもあなたの哲学の方に力や実効性があると気付いているからです。
しかしザラツゥストラよ,あなたの本を手に取った時,私は次の質問が生まれました。
『世界中の人々は太陽王である私に属していないのだとしたら,誰に属しているのですか?』
『民草は私のものではないのですか?』」 - イフアマズダは言いました。
「全てのものはオーマズドに属しています。人間はオーマズドのみに服従と崇拝を捧げることを教わっていないのですか?」 - アシャは言いました。
「私はそう認識しています。
ザラツゥストラよ,答えてください。王やその上の王を否定しても,無秩序に陥らないのですか?
アシャは言いました。
「私はそう認識しています。
ザラツゥストラよ,答えてください。王やその上の王を否定しても,無秩序に陥らないのですか?
なぜなら支配者から臣民を奪うあなたの教義を,彼らが布告するとは思えないからです。
これに対してイフアマズダはザラツゥストラに答えさせました。
彼は言いました。 - 「自分の主を選ぶ権利がないのは,人間にとって苦しくないのですか?
ご覧なさい,彼らは今,戦争へと駆り立てられています。そうです,あなたたちは武器を手に取り,『死』をもたらす訓練をしているのです。『太陽の王国』の栄光のためにです。
聞いてください,王よ。なぜなら私は今,自分の意志で話しており,私を通して神が話しているのではありません。
私は『目に見えない』世界に精神を通わせ,自分の目で『死』の精神体がどうなっているのかを見る力を得ました。そして邪悪には大いなる苦しみが待っていることをあなたに宣言します。
私はその者たちが地獄で,日夜彼らが火の壁に取り囲まれているのを見ました。息苦しい硫黄の火の中で彼らは逃げ出すこともできません。
戦争で殺された者は,王に従ったり逆らったりしたどちらの者,そして彼らと共にいる王や女王でさえも等しく永遠の苦しみを味わい,全員が狂乱の中で,泣き叫び,歯ぎしりし,呪い,力の限り他人に対して悪事を働いています。 - 王は言いました。
「あなたが天界や地獄に行くことができるのだとしたら,同様の方法で実体界の地球のあらゆる場所に行くことができるに違いありません。
そのことを私に証明してみせてください。そうすれば私はあなたの言うことを全て信じられます」
ザラツゥストラは言いました。
「王よ,あなたを説得するため,私は何処に行けばよいのか教えていただけませんか?」 - アシャは言いました。
「占星の塔に行って,そこの暦に書かれている言葉を見つけてください」 - イフアマズダは言いました。
「霊魂は霊魂に関することだけしか証明できないと言ったではありませんか!
私がイフアマズダであるとは言っていません。ザラツゥストラは自分がザラツゥストラであると言いました。あなたにはこのことを見ることができません。
ご覧なさい,あなたにご自分の悪知恵を教えて差し上げましょう。ここにザラツゥストラが戻ってきます」 - ザラツゥストラが言いました。
「あなたは私に『占星の塔に行き,そこのに書かれている言葉を見つけてください」と言いました。
見なさい,私はそこに行き,あなたの前に戻ってきました。そこの暦にはこう書かれていました。
『ト・カ(porh)』『セイス(oot)』『クティヴァ・トゥノン(dhi)』『ビアン・ルー・シン・グース・ウォッチ(git)』」 - アシャは言いました。
「当たりです。しかしあなたが私の心から暦を読みったのではないと,どうやったら判断つきますか?
なぜなら私は明け方からその言葉を覚えていたからです」
ザラツゥストラが言いました。
「もう一度試してみてください。そうです,あなたが自分の玩具を欲しいならば,私はそれを取りに行きます」 - アシャは言いました。
「それでは私が子供の頃に城壁の外の崖の下の川に落としてしまった金の鞄を持ってきてください」 - イフアマズダは言いました。
「全ての人間には『信仰』と『不信仰』という2つの状態があります。それらは母の胎内にいる時に,人間の精神体に受け付けられた『種』のようなもので,この世に生を享けた時,その者の中で育ち始めます。人間がどちらか一方を受け入れると,それはもう一方を犠牲にして成長します。
人間が『不信仰』になると,真実と知識を追い求めます。しかし人間が『信仰』になると,幸福を見つけようとします。
しかし後者は『愚鈍』になり,前者は『残忍』になります。それ故に賢い者は,この2つの状態の均衡を保つようにするのです」 - イフアマズダが話している間,長らく失くしていた金の鞄は王の足下に落ちてきて,それはまだ水に湿ったままでした。
王はそれを調べた後,「本当だ」と叫びました。
「それでも霊魂や神々がいるとして,私はこれを持ってきたのが彼らであることをどうやって調べればいいのでしょうか?
それは善良な霊魂と同様に,悪の霊魂ではないのですか?」 - イフアマズダは言いました。
「私は『正論よりも別の理由を見つけようとするあなた自身の悪知恵を教えて差し上げる』と言ったではありませんか?」 - アシャは言いました。
「神よ,あなたは私の『不信仰』を治せないのですか?
私の心が病んでいるのは,私でも分かっています。私の母は,私が生まれる前から信仰心の篤い女性でした。
ザラツゥストラよ,そしてイフアマズダよ,あなたたちが何者であるか私に教えていただけませんか。なぜなら私はあなたたちが太陽の下の誰にも似ていないことに気付いているからです。
あと,私があなたの僕になるには何をすれば良いのか教えていただけませんか?」 - イフアマズダは言いました。
「日が昇ったら,ザラツゥストラと一緒にあなたの下を訪れ,多くのことを教えて差し上げましょう」
【13章】
- 翌朝になり,約束の時間が来ました。
王は言いました。
「眠れませんでした。昨晩,私は炎に焼かれたような状態でした。なぜならあなたの言葉やその奇跡があまりに素晴らしくて,今までの私の考えが覆ったからです」 - イフアマズダは言いました。
「人間は物事を理解できなくなると「奇跡だ!」と叫びます。しかし私が行ったことは奇跡でもなければ,ザラツゥストラが行ったことも奇跡ではありません。
そうです,今回のことは定命の者にとっては奇跡です!
もしそうだとしたら,人間という存在自体は奇跡ではないのですか?
出産は奇跡ではないのですか? - アシャよ,この時,私は分かったのです,人間が奇跡と呼んでいるものは,日常的にあり得ないことをそう呼んでいるのだと。
人間は頻繁に目撃するものを『自然法』と呼びます。
太陽の下のすべての最初の根源を理解する者を,あなたは見つけられましたか? - 人間が意味のない研究に時間を費やすのはどうしてでしょうか?
大いなる学問に対する個人的な願望を満たすよりも,仲間の人間を悲惨や闇から救い出すのに尽力する方が賢明だとは思いませんか?」 - 王は言いました。
「あなたはとても合理的です。それでも善良な人間を学ぶことに対して『善行はとても良い哲学だ!』と言わない人はいましたか。
個人的な願望に終わりが来たとします。その時,その言葉が無駄な果実ではないということを,私は何て言えば良いのでしょう,もしくはあなたは何て言うのですか?」
訳注)非常に難解な文章。4節の「願望」に対して無駄ではないと解釈して訳しています。 - イフアマズダは言いました。
「あなたは今日では全世界の王であり,それ以外の国は貢物を献上するだけです。あなたが望めば,他の国にこの法を適用できます。なぜならそれが私があなたの下を訪れた理由だからです。
あなたの神の声を聞いてください。あなたの心にとって,そして全人類にとって良いことを為しなさい。 - アシャは言いました。
「あなたが言わなくても,あなたの望みを叶えたいと思っています。
しかし王の言葉を聞いてください。
他人に対する良いことは,私にとって何になりますか?
仮に偉大なる人間は死後の世界でも精神体を保持していることが証明されたとして,ドルク人にもその精神体があるとはまだ証明されていません。もしも彼らがそういう精神体を持っているのであれば,天界は実に愚かな場所に違いありません。なぜなら人間は死によって叡智を獲得したり,またはそうするのが合理的だということをあなたは私に教えてくれなかったからです。
むしろどうやったらこの世界から逃れられるのか教えてほしいぐらいです,ザラツゥストラよ。
この人生は一体,何の役に立っていると言うのですか?」 - イフアマズダは言いました。
「あなたは自分の人生を楽しんでいないので,自分の哲学が不完全であることに気付いていますが,世界も不完全であることに気付いていません。
それでは,あなたが幸福で満ち溢れていることを証明して差し上げましょう。
私がこれから明らかにすることを信じ,それを信仰していけば,幸福になれます」
王は答えました。
「信じること,それが問題なのです。
私はあなたに断言します。
私の心には一粒の信仰心もないのです。どうしたらそれを育めるというのですか?」 - イフアマズダは言いました。
「私がこれから語る神は『至高の御方』であり,永遠の生命の種を持っています。
あらゆる頂点に君臨し,至高の考えを持ち,それについて語ってくださり,至高の観点から気付かせてくれる御方であり,信仰を超越した『真なる神』です。その神の主人は自分であり,人間がパンを食べるように,幸福を糧としています」 - アシャは言いました。
「私は何をすれば良いのですか?」
イフアマズダは言いました。
「あなたは民草に対して,神よりも,そして奇跡よりも大きな権限を持っています。あなたの布告は全てにおいて強力です。
あなたは石と布で書かれたこの本の写本を,あなたの支配下にある国々に1部ずつ送ってください。
そして1本の剣と1匹の蛇をそれぞれの国に送り,こう言いなさい。
『この本を受け取りなさい。なぜならこれは至高の法であり,イフアマズダの法,ザラツゥストラの法,オーマズドの法でもある聖書だからです。
この本は永遠にあなたとあなたの王国の規律となり,導き手となるでしょう。
太陽の下の王国に君臨する王は貧しき者と共に1年間暮らし,オーマズドに生贄を捧げなさい。 - この布告を全世界に送ったら,あなたは自分の王国を放棄し,すべての金銀財宝を貧者に与えなさい。あなたは財宝を何も持たず,着の身着のままで去りなさい。
あなたは貧者と共に暮らし,オアスの道端に托鉢を持っていきなさい。そしてその食料の中でも最も良い部分を貧者に与え,こう言いなさい。
『あなたたちに与えられたこれは,多くの犠牲から成るものです。それを食べなさい。なぜならこれこそまさに天界の御父オーマズドの血肉だからです!』
但し托鉢に入っているものの中で最も不味い部分は,あなたの取り分になります。 - 1年後,あなたはオーマズドの法を説法し,戦争の停止と悪事の拒絶,そして正義の遂行を命じていることでしょう」
- 王は言いました。
「もしも私がこのことを実行したら,あなたは私に何を約束してくれますか?」
イフアマズダはザラツゥストラに答えさせました。
彼らは言いました。
「何もありません!
創造主は,世界を創成する前にそんな質問をしたと思いますか?
もしもあなたが創造主に近づきたいと願うのであれば,創造主を愛しなさい。あなたに何かを約束するのは私でも,天使でも,神でもありません。
あなたは私の僕ではないのです。
あなたが仕えるのはたった1人の主『あらゆる光(ジェホヴィ)』だけなのです。 - 私があなたに教えたように,あなたはオーマズドの法を説法する旅に出るでしょう」
- アシャは言いました。
「天界の神々は地上の善行や生贄に対して何の報酬も与えないのですか?」
ザラツゥストラは言いました。
「善行を為し,オーマズドに生贄を捧げる者は,それこそが報酬なのです。なぜならこの方法で人間の精神は強くなり,次の世界への第1と第2の復活においてさらに強くなるからです」 - アシャは言いました。
「ザラツゥストラよ,あなたと共にいて,その言葉の叡智を感じられるのであれば,私はどんな犠牲も払います。
私と共に貧者に交わりに行きませんか?」 - イフアマズダは言いました。
「いいえ,あなたは一人で行くべきです。仲間のために創造主に祈りを捧げ,彼への讃美歌を作り,死んだかのように自分のことについてこれ以上考えないでください」 - 王は言いました。
「狂人は自分が狂っていないと思っていると言います。私は自分が狂っていることをどうやったら知ることができるのでしょうか?
もしも私があなたの命令に従ったら,世界は私をそう見做さないのではありませんか?
私が自分で判断する以上に,世界は私のことを良くは判断できないのではありませんか?
古代人が言うには,スグダは老人と心弱き女性に憑りつかれていました。オシリスが来て彼を殺したためです。もしも天界に神々がいるのであれば,あなたの言うように,オシリスを殺しに来ないのでしょうか?」 - イフアマズダは言いました。
「あなたは議論をとてもよく拡大解釈する。しかしあなたは全ての発言において,人間が闇から光へと転じる復活計画について何も触れていません。
これこそが人間が目指すべき『至高の御方』ではありませんか?」 - アシャは言いました。
「もう良いです。あなたの考えは私よりも偉大です。あなたが私に命じてくださったことを私は行います。
この時から私は創造主オーマズドただ1人に仕えます。
ザラツゥストラよ,あなたの神は私の神でもあります。あなたの道は私の道でもあります。従って私は創造主の傍で永遠に唱え続けます。
全ての問題に対して,私は最初に,あなたの神が言ったように,私は何を言うべきで,私はオーマズドの法を実行するには何を為すべきかを自問します」
【14章】
- 太陽の町オアスの王にして,全ての実体界を統べる太陽の王。全ての定命の男女,子供たちを統べ,全ての肉体に対する司令塔であるアシャは,何千年間も『太陽の神々』の子孫であり,その先祖は生きとし生ける万物の父『至高の人間』でした。そしてその豊かな恵みにより地球の住民として暮らすことが許され,その布告は正義と真実を為すための基準となり,誰も疑問を挟まず,その言葉は太陽や月,星をも平伏させました。
そのアシャがご挨拶申し上げます。 - 世界中の全ての町を統べ,星々の神殿(天文台)を支配し,竜を殺し,獅子を殺し,虎や,人間の男女や子供,蛇を殺すことでゴルゴタで崇められ,何百万人もの恐怖に慄く奴隷を持ち,何千人もの妻を持ち,定命の者たちの血の湖を船で漕ぎ,毎年1万人も殺すことで高められた王冠を所持し,生と死の言葉で太腿の肉に誓った,東西南北の王や女王よ。
『太陽の王』に最も従順な私が命じます。 - 第1に創造主オーマズドがいます!
その精神体は世界中にいて,大宇宙のあらゆる場所にいます。
御父であり,『全ての光の光』であり,闇と人間の創造主であり,永遠に先を進む者であり,『全ての根源の根源』であり,全ての『目に見えるもの』と『目に見えないもの』より大きく,『全ての力の力』です。 - 第2にイフアマズダがいます。処女母ミー(『目に見える』物質界)より生まれしただ1人の息子であり,純粋にして完全に聖なる者であり,人間の管理者,言葉を司る者であり,言葉で表現されるオーマズドその人であり,人類の救世主であり,天界の鍵の持ち主であり,その恩恵を受けた者だけが上天,則ち涅槃に辿り着くことができます。
- 第3に,ザラツゥストラがいます。人間であり,『完全に純粋なる者』であり,処女母が懐妊し賢者として生まれ,オーマズドと一心同体のイフアマズダと共にいます。
彼についてこう言っています。
『彼は奇跡を用いずに実行します。死者は復活し,その手を当てれば病は癒され,命じれば1日で小麦は実り,その奇跡の行いにより神と認定された古代人の全ての事績を行うことができますが,オーマズドの法は『完全に純粋なる者』や創造主にして聖なる天使たちから力を引き出された者にとっては自然法に過ぎません。 - 第4に,イフアマズダにより『完全に純粋なる者』ザラツゥストラの手で記された聖書です。それは石と布で書かれ,全ての叡智を明らかにし,全世界の『至高の御方』の法であり,全ての王の王たる私アシャにより承認されたオーマズドの法,イフアマズダの法,ザラツゥストラの法に基づいています。
- 第5に,私の命令で1万人の学識のある筆写者に聖書の写本を作らせ,太陽の王の命令も同封させて送りました!
この本は私の全属国における『至高の御方の法』となり,全ての王はこれを信じ,全ての奴隷にも同様の命令を下してください。またいかなる者もこの私の布告に逆らってはならず,いかなる者もこの聖書に1字も変えたり署名したりしてはならず,ここに記述される文言の1字も疑ってはなりません。 - 私の王や属国の王,女王や属国の王は,私が従うように全員がこの命令に従いなさい。そしていかなる男女,子供はこれらが『至高の御方』の手に成るのかとか,私の手から成るものに誤りがあるのかなどと疑問を挟まないでください。
なぜなら私の布告により,これらは真実を全て伝えているからです。 - なぜなら私はこの目的のためにオーマズドによって『遥かなる高み』へと引き上げられたからです。そして私のように力を持つ者は世界中に誰1人いません。
- この聖書があなたたちの手元に届いたら,未来永劫,私の命令に従うことを蛇と剣に誓いなさい。
- こうしてアシャは役人に命じて,この本を東西南北の王や女王に送らせました。
彼が送った者たちは偉大なる学者であり,高官でした。彼らは蛇と剣を手に取ると,命令通りに彼らに与え,それらを受け取った者たち全員に誓いを立てさせました。
【15章】
- アシャは聖書の写本を完成させ,イフアマズダが命じた通りに送ると,『至高の光』の導きによりどのように退位すればよいのかを助言してもらうため,ザラツゥストラを呼び寄せました。
ザラツゥストラが到着する前にイフアマズダが姿を現すと,アシャは言いました。
「あの時の興奮がまた呼び起こされました!
ご覧ください,私はある質問をするためにザラツゥストラを呼んだら,私の心が私に答えているのです! - そうです,もう私は自分のためにすることは何もありません!」
こうして彼は自問自答していると,ザラツゥストラが来て彼に言いました。
「あなたは退位についてどのような助言を求めているのですか?
イフアマズダはあなたにこう言っています。
『あなたと関係のないことに対して,あなたは何かするべきことがあるのですか!』」 - アシャは言いました。
「私は今までに『私の心に語り掛けてくるのは何なのですか?』と言ってきました。
あなたの叡智によれば,私の心に語り掛けてくるのはイフアマズダですか?
本当にそうなのかはどうやったら分かるのですか!」
ザラツゥストラは言いました。
「もしも人間が自分に関係することや自分が心配に思っていることに関して『あらゆる光』に質問したら,その者はテトラクトから答えを受け取ります。
しかしもしもその者が他人や彼らへの善行のために『あらゆる光』に質問するのであれば,イフアマズダから答えを受け取ります。
アシャよ,私はあなたに宣言します。人間は確かに腹黒く,創造主が毎日語り掛けているわけではありません」 - アシャは言いました。
「私はこれに関して何をすれば良いのでしょうか?
世界はまだ私に属しています。今なら私はそれを享受できます。私は彼らに1つの指針を与えるべきではないのでしょうか?」 - ザラツゥストラは言いました。
「あなたは自分と同じように善行や分別を他人に与えようとするのですか。それをするとあなたは彼らを騙すことになります!
オーマズドの法に『あなたは自分の創造主以外にいかなる王も戴いてはならない』と書かれていませんでしたか?」 - アシャは言いました。
「分かりました。私は何も言わずに立ち去るべきでしょうか?」
イフアマズダは答えました。
「あなたにはさらに為すべきことがあります。なぜなら全ての人間に自由を与え,聖書の教義に従い創造主以外の主に仕えないように彼らに命じ,そう宣言しなければならないからです。人々が完全にあなたの布告によって戦いを止めたら,あなたは彼らに何もかも任せて玉座と首都を放棄し立ち去りなさい」 - アシャは言いました。
「分かりました。お命じになったことはやり遂げましょう。見ていてください,私は世界中に自由をもたらしたら,托鉢を持って門付けに行きます。天界は正義でなければいけませんし,私は富裕と同様に貧乏も経験する必要があります。
天界の神になれるぐらいの叡智を持つにはどうしたらよいのでしょうか? - ザラツゥストラよ,あともう一つ教えて欲しいことがあります。
あなたは『オーマズドに祈るべきです』と言いました。しかし私は生涯で祈ったことはありません!
誰が私に祈りを教えてくれるのでしょうか?」 - イフアマズダは言いました。
「あなたにとって最も神聖な願いをその口で語りなさい。そして心から絶えず,創造主オーマズドへの叡智,愛,力を讃美する新しい表現を求め続けなさい。 - 『祈りの規則』というものを考えてはいけません。規則は学の無い者のためにあるのです。その生涯で毎日オーマズドへの新しい祈りを捧げる者は,実に賢明な行いです。なぜなら『祈り』がもたらす栄光は『至高の光』を認識することで自分の精神を強化するからです。
- 祈りはオーマズドの命令に自分を変えていくためにあるのではなく,より良い方向に自分を変えていくためにあるのです。但し鸚鵡のように祈りの言葉を繰り返しても,自分を良い方向に導くことはほとんどありません」
- アシャは言いました。
「もしも人間が言葉を使わずに祈るのは,その者にとって良いことなのでしょうか?」 - イフアマズダは言いました。
「それでも構いません。しかし言葉で語った方がより良いでしょう。
宇宙について考えることはオーマズドにとって良いことですが,それを創造する方がもっと良いです。
創造について学ぶならば,あなたは『話し言葉』を使わなければなりません。
創造を完璧なものにするのは,実を結んだ『言葉』です。
祈りの言葉を省略する者は祈りそのものも省略することになり,やがてはその精神を弱らせることになります。 - 愚かな人間はこう言います。
『私には祈りは不要だ。オーマズドは私の精神体を知っているからだ!』
それならばどうして畑は『私は収穫物をもたらさない。なぜならばオーマズドは私の能力を知っているからだ!』と言わないのでしょうか。
私はあなたに命じます,アシャよ。全ての霊的な成長は,霊魂を表現することにあるのです。
叡智を成長させる者は叡智を与えなければいけません。
愛を成長させる者は,愛を与えなければなりません。
霊魂の力を成長させる者は,霊魂の力を出さないといけません。 - 考えてみてください。
もしもあなたが静かに祈っても,あなたの力は周囲には弱めに伝わります。しかしあなたが言葉を発して公に祈ればその果実は周囲にもたらされ,この栄光によってオーマズドはあなたを豊かにしてくれます。 - あなたがか弱き者や老人,無力な者,盲目な者に食事を与えるため,托鉢を持って出かける時,あなたは彼らに『祈り』と『懺悔』を教えなければいけません。彼らが罪を意識して気落ちしているのであれば,その生涯を楽しんでもらうため,彼らに赦しを与えなければいけません」
【16章】
- アシャは心を変えて,地上で有していたものを全て放棄し,1年間托鉢を持って貧しき者と暮らしました。やがて1年が過ぎると,彼を慕う者が何千人もいました。
- 彼は祭壇を建てて,次のことを教えました。
創造主を崇拝すること。
割礼の儀の復活
人間の前に清き心でいること。
無力で惨めな者に対して手を差し伸べること。
自分にしてほしくないことは他人にしてはならないこと。 - 彼を信奉する人々を,パーシー人とは別に『ザラツゥストラ人』の名で呼ばれました。
それでも彼らはイフアン族であり,ガン人でした。 - この宗教により,彼らは財産を所有せず,家や土地,牛や積荷用の動物を持ちませんでした。
- 彼らの多くはパーシー人に隷属していましたが,その大半は莫大な資産を持っていた改宗者からの寄付で暮らしていました。
- アシャが退位した後,その地位を望む者がたくさんおり,太陽の評議会はオアスを平和に保つには誰を選べばよいのかで迷いました。しかし彼らはついにヒヤツィンを王にしました。なぜなら彼は偉大な戦士であり,町の壁や門に隣接する敵対部族の頭蓋骨を1万以上も吊るしたからです。
- ヒヤツィンは博識な人物であり,各地を旅し,地球の人民や土地を知っており,各地の様々な産物や,世界中の大都市の人口や属国の王が所有する戦士の数を知っていました。
これ以外に星々の場所や,ヒエルティン時代に古代人の間で教えられてきた牝牛や馬,牡牛,熊,獅子,魚,蛇の群れについても知っていました。 - ヒヤツィンは言いました。
「『フェテ』が私を世界の王にしてくれた。それ故に私が王であることは正しい」
彼は言いました。
「人間に宗教が必要なことはアシャが退位したことから明白なことだ」
彼は言いました。
「私は古代人の儀式や式典を知っているので,私の責任で人間に宗教をもたらそう」
彼は言いました。
「遥か遠くの王国にザラツゥストラの宗教を命じたアシャとザラツゥストラは私の敵だ」
彼は言いました。
「役人はアシャとザラツゥストラを逮捕し,私の前に連れて来るように。私が前例を作ってやろう」 - アシャが逮捕された日は,彼が托鉢を持って回る日々が終わった年でもありました。
アシャとヒヤツィンは長年の知己でした。アシャは王の前に引き立てられると,こう言いました。
「私はこの世界に何も持っていない。どうして私を逮捕したのですか?」
王は言いました。
「自分の所有物を手放したお前は,人間にとって最も危険な人物なのだ。
私はお前を死刑に処す。覚悟はできているか?」 - アシャは言いました。
「そうですか,王よ。
それでもまだ私たちは長年の知己なので,1つお願いしたいことがあります。私は洪水前にあった『パニックの儀式』に従い,処刑されるということですか?
もしも私を救う力を持った神がいてそれを実行できることが証明されたら,あなたは私に手を上げられないのではありませんか?」
王は言いました。
「その願いを聞いてやろう」 - そこで『ウガの車輪』が建てられ,アシャはその上に縛られ,王は彼が死ぬまで衛兵に監視させました。この検証が誤魔化されるのを嫌った王は,ヨガノット(ジョウガノット)を『リヨン門』に面したウガに私的な庭を用意し,自分の従者に監視させました。
- アシャが死の宣告を受けたことを知った多くの人々は泣き叫びました。オアスの町は哀哭と狂気に包まれた家のようになり,アシャに味方する者と王に味方する者で分裂しました。
- アシャは高齢であり,その光景を1日中見ていた王は後悔しましたが,自分の命令を放棄する権限はありませんでした。
太陽が沈むと王はアシャの前に来てこう言いました。
「見ろ,お前は6時間も車輪に縛られているのに,お前の神はまだ助けに来ないではないか。これは酷い拷問で,お前のために残念に思う。
もしもお前が死を望むのであれば,私がそれを叶えてやろうか?」 - アシャは言いました。
「王よ,私はあなたに『特に苦しくはない』と宣言します。
私が狂っていようが,これが神の恩恵なのだろうが,私は苦しくないのだから何か問題がありますか?
自分を創成したのは私ではないので,私には自分を殺す権利がありません。さらに車輪の上で死ぬことが創造主オーマズドの意志であったとしても,それは正しい行いなのです。もしも彼の意志でなかったのだとしたら,私は救われるでしょう。
だから王よ,私はどちらでも構わないのです」 - 王は言いました。
「この執着心の無さは狂気によるものだ。それがこの太陽の町を狂わせた。それならば死ねばよい!」 - 王は宮殿に戻りましたが,翌朝,再び同じ申し出をアシャにしましたが,返ってきたのは同じ答えでした。
その日の晩も王は同じようにアシャに申し出て,やはり拒否され,もう二度と来ないと決めました。 - 3日目の晩,アシャはイフアマズダの力が迫っているのを感じ取り,衛兵に言いました。
「今晩,私は解放されます!
だから紐がしっかりと結わいているか,きちんと確認してください。なぜなら御父が私を解放すると,あなたたちは私の解放に手を貸した罪で王の前に引き立てらるからです」
そこで衛兵は留め具を再確認した後,アシャが言ったことを王に伝えました。
王は答えました。
「その必要はない。彼が解放されたら,私は神の存在を信じるだろう。だから衛兵が罪に問われることはない」 - このことを彼らはアシャに話すと,アシャは言いました。
「私があなたたちに言ったのは,罪に問われるのは1人だけでなく全員です」
この時,監視者は100人いて,50人ずつで監視していました。そのまま監視の交替となったため全員が嘲笑いました。 - この瞬間,止め紐が外れ,イフアマズダがウガからアシャを降ろしました。
イフアマズダは彼を通して何が起こっていたのかは知っていましたが,イフアマズダの霊魂はアシャの中におり,アシャその人に宿っていたわけではありませんでした。 - イフアマズダは言いました。
「さあ行って王に『アシャは神の力によって救われた』と伝えなさい」
この時,衛兵は言いました。
「朝ではない。王は眠っている」 - イフアマズダは言いました。
「王は眠ってなどおらず,家臣と葡萄酒を飲んで楽しんでいます」
そこで彼らは真相を確かめるため王の下に行くと,王は眠っていませんでした。
王はアシャを連れてくるように命じると,彼らはそうしました。 - ヒヤツィンは言いました。
「この老人を解放することが衛兵に何の利益になるのだ?
見ろ,アシャは金銀を隠し持っていたと言う。私は真相を知っている,お前が衛兵に賄賂を贈って解放させたのだ。それならば衛兵を死刑に処し,その頭蓋骨はオアスの壁に吊るし,その皮はなめし皮にしてやろう。
元帥よ,こいつらを連れ去り,日が昇るまで縛っておき,時間が来たら私が命じたようにこいつらの首を斬りなさい。 - そしてお前については,老いた偽善者にして自由の破壊者め!
何か言いたいことはあるか?」 - アシャは言いました。
「約束によれば,私は解放されるべきではありませんか。それにあなたとの取り決めに,私が衛兵に賄賂を贈ってはならないというのはありませんでした。
ご覧なさい,この私の叡智を!
あなたが誰も信じていないということを示せたのではありませんか?」 - 王は言いました。
「お前は人間の中で最も賢い者だ。私はお前から,お前の神が助けてくれたことを聞きたかったのだが,ここにはお前の首を切り落とすための12人の剣士がいるのだ。だがとても素晴らしいものを見せてくれたので,二度とオアスに戻らないことを条件に,お前は残りの余生を過ごせばよい」 - アシャを通してイフアマズダが言いました。
「あなたは衛兵を日の出に死刑に処すように命じました!
王よ,私はあなたに宣言します。彼らは誰一人,あなたの命令で死ぬことはありません。私イフアマズダが彼らを助けるからです。
私がアシャだとは思わないでください。私はアシャではなく,イフアン人の神の霊魂なのです。
霊魂の私は奇跡ではなく,自然な方法で衛兵を危難から救い,全ての王よりも強力であることを示しましょう」 - 王は言いました。
「神や霊魂などいるはずがない。それでは人間の判断が無意味になるではないか?
こんなことは暗黒時代にこそ相応しいのだ。
彼らは人間に正義の裁きを受けさせることで震え上がらせ,そしてその目的を果たした。だがこの啓蒙の時代においては,人間は自分の正義と叡智を信じなければならないのだ」 - 王がまだ話している間に,イフアマズダは自分の従者の霊魂を現世の人間の姿にさせて,王の後ろにある『アリツィ』の窓掛の傍に控えさせました。そして彼らは王を振り向かせるため騒ぎを起こすと,王はそちらの方を振り向きました。
悪人がそこに隠れているとは知らなかった彼は恐怖し,こう言いました。
「強盗だ!刺客だ!」
彼は剣を抜いて彼らを突き刺しましたが,彼らは消えてしましました!
彼は言いました。 - 「お前は本当に悪魔だ,アシャ!」
彼はアシャを剣で突き刺しましたが,剣は手から落ちてしまいました。
彼は言いました。
「フェテよ!
この男を殺せ!殺せ!」
彼が混乱している間,アシャは宮殿の外に出ましたが,彼の行く手を阻む衛兵はいませんでした。
【17章】
- アシャが王の宮殿から立ち去るとザラツゥストラが彼と会い,明け方の死刑に先立って衛兵が監禁されている牢獄に一緒に向かいました。そしてアシャの信奉者400人が来て牢獄の周りを囲んでいると,ザラツゥストラがこう言いました。
- 「生ける神の祭壇(三日月))に向かいなさい。なぜなら神の力が私に宿っており,その力でこの牢獄を解放するからです!」
牢獄の番人とその部下が目を覚まし,槍を携えて言いました。
「立ち去れ!立ち去れ!さもなくば太陽の王の命でお前たちを殺す!」 - ザラツゥストラは言いました。
「あなたたちはイフアマズダよりも偉大なのでしょうか?
もしそうだとしたら,その槍で私の胸を突いてみてください」
番人はそうしながら言いました。
「お前が偉大かどうかなんて関係ない。お前は自惚れ屋だ!」
しかし見てください,槍の軸が1,000の破片に砕け,その刃は彼の服に触れることさえできなかったので,他の槍兵は恐れ戦き,それを見たザラツゥストラは彼らに近づいて槍を奪い取りました。 - 『ザラツゥストラ人』は『生ける祭壇』を象るように立っており,ザラツゥストラは牢獄の前壁に手を当てると,こう言いました。
「イフアマズダよ,あなたの叡智と力の下にこの牢獄を解放してください!」
すると前壁は扉のように開き,囚人たちは無傷で出てきたのでした。 - ザラツゥストラは言いました。
「朝には王はこの町の全ての『信仰者』に死刑を命じるでしょう。だから夜のうちに,全ての人民にすぐに起きてこの町から去るように命じてください。そうすれば私が彼らを安全な場所に誘導してさしあげます」
その晩,信仰者たちは壁を乗り越えて逃走しました。 - 翌朝,王はザラツゥストラの予告通り囚人たちが消えたという報告を聞くと,彼は町にいる全ての『ザラツゥストラ人の処刑を命じました。しかし彼らは既に立ち去った後で,『山羊の森』にいました。その数は男女や子供を合わせて4630人でした。
【18章】
- イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。
「私の民に,闇の中や恐怖の中で暮らす必要がないことを説明してください」
ザラツゥストラは言いました。
「イフアマズダよ,彼らに何を伝えればよろしいでしょうか?」 - イフアマズダは言いました。
「私の民は団結すること。
私の民は邪悪な町から解放されました。私は彼ら1人1人を救出しましたが,彼らは自分に対して,自分の力で,自分の行いでそれを成し遂げました。 - 彼らを団結させるのは簡単なことです。私は暗い道を通ったわけではありません。これは奇跡ではなく,『あらゆる光』に対する信仰の顕れなのです。
- 彼らをオアスから遠く離れた森の奥深くに連れていきなさい。アシャは老人であり,他の誰よりも学んでいるので,彼こそ彼らの上に君臨するアラバとなるでしょう」
- イフアマズダは言いました。
「しかしザラツゥストラよ,あなたはまだ若く,力強いです。あなたは学があり力強く活力に溢れた50人の男子を民草の中から選びなさい。彼らはあなたの仲間となるでしょう。そうしたらジャフェス,セム,ハムの大都市を訪れなさい。
4年間,あなたは旅をして,ザラツゥストラの法を伝えなさい。しかしそれが終わる頃,あなたはオアスと,私が最初に選んだこの民草の下に戻りなさい。 - その後,アシャと一緒にオアスに行き,あなたはあの町に手を下し,滅ぼしなさい」
- ザラツゥストラはこのことを民草に説明した後,ウィチョウィチ川の辺にある『ヤンシェの谷』に連れて行き,彼は『白と黄の聖なる民』イヒン人の方法に倣い,彼らを3つの大きな町と4つの小さな町に分けました。
- 彼は民草に父(ラバ)を与え,全民草の長にアシャを任命しました。
こうして,イフアマズダの法,オーマズドの法,ザラツゥストラの法から成る『ザラツゥストラ教』が創設されたのです。 - ザラツゥストラは学があり精力があり,かつ老いていない50人の男子を選び,ザラツゥストラの法を確立させるため,東と南の町に向けて出発しました。
イフアマズダはどの山,平野,川を通れば最短なのかを『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに語り掛けながら彼らを誘導しました。
彼らが行く先々で,イフアマズダは積荷や人を乗せる動物を用意しましたが,この動物の所有者をオーマズドの法の信者に改宗させてから必要なものを供出させていたのです。 - ザラツゥストラが最初に訪れた大都市はジョブ平原にある,木と石で作られた高い壁に囲まれたツェゴウでした。
彼が門の中に入ろうとした時,門番が名前と目的を聞いてきましたが,別の言語で話してきたので,ザラツゥストラは彼が何を言っているのか理解できませんでした。そこでイフアマズダが代わりに彼の舌を使って門番に答えました。 - 「私は創造主オーマズドの僕です。私は王の前で『不滅の生命』を証明するために来ました。
王の所まで案内してください。そうすれば彼は私とその民草を認めてくださるでしょう」
門番は王に伝令を送ると,王はザラツゥストラを連れてくるように命じました。 - 彼とその従者が王の前に姿を現すと,王は言いました。
「あなたは太陽の王が話していた人ですか?
そうだとしたらあなたの目的は何でしょうか?
王の王たるあなたの王は怒っています」
イフアマズダは言いました。 - 「太陽王が話していた人物はあなたの目の前にいるザラツゥストラのことです。
私がここに来たのは,聖書に書かれている多くのことについて証明するためです。しかし私が話す前に,ここにあなたの息子ハシンと妻のヒティウス,あなたの娘ペトゥ,ズー,ヒィン,ザビーにも出席願います」 - 王は言いました。
「どうやって私の家族の名前を知ったのですか?」
イフアマズダは言いました。
「ここには守護霊のアシャールがいます。彼らが私に話してくれました。その中で重要なのは,自殺したあなたの祖父アイであり,その隣にはあなたの親族の霊魂,ノア,ウェス,ルゥツ,ガンス,ミトゥス,ニモック,ウォヒン,ルクス,パスキューがいます」 - 王はこのことに関心を抱きました。なぜなら彼らの多くは戦争で殺されており,ザラツゥストラがどうやって彼らの名前を知り得たのか分からなかったからです。
そこで彼は妻と息子,娘たちに呼び寄せて,ザラツゥストラも一緒に全員が部屋の中に集まりました。
そこでイフアマズダが王にこう言いました。 - 「貧者と共に生きるため全てを放棄したアシャを狂ったとは思わないでください。神々はその反対のことを為す全ての者,特に金持ち,王や支配者こそ『狂人』と呼びます。なぜならそのような者たちはせいぜい地球で生きている間だけしか保持できないものに価値を見出しているからです。
アシャは永遠に続くものに価値を見出しました。私は全人類がアシャのように振る舞ってほしいと願っています。 - なぜなら『偉大なる霊魂』への不信仰のせいで,人間は自分を『至高の御方』のように見なし,戦争と破壊を生業としてしまったからです。
私は,あなたにその王国や財産を放棄させたり,私の栄誉や利益を説得するために来たのではありません。
私は部族同士や町同士の戦いで殺された眷属の想いを代弁します。
私は戦場で今も漂う何百万もの闇の霊魂の想いを代弁します。 - イフアマズダがこのように王の注目を集めている間に,彼に同行していた天使たちが人間の姿で現れました。彼らを見た王とその家族は恐怖し,王は剣を抜いて「呼んでもいない者たちがここに入ってきた!」と言いました。
しかし彼が歩み寄ると,霊魂たちは消え去りました。
王は驚きました。
イフアマズダは話を続けました。 - 彼らの出現をあなたは奇跡と呼ぶかもしれませんが,霊魂が自分の姿を見せたからと言って心配なさらないでください。
霊魂はいつも傍にいます。しかし彼らが実体界の服を着て姿を見せたので,あなたは彼らを初めて見たと思ったのでしょう。
あなたが静かにしている間に彼らはやって来て,あなたが突然怒鳴ってしまったので,彼らは消えてしまいました。 - 王は言いました。
「彼らはまた来てくれるのですか?」
イフアマズダは答えました。
「あなたの妻や娘たちが怖がっているのに,どうして再び姿を現す必要があるのですか?
それよりも王よ,聞いてください!
あなたは若い頃からこのような事態に備えてきました。あなたの妻は聖なる民イヒン人との混血です。イヒン人は今回のような目的のために神々によって保護されてきました。なぜなら彼らは,全人類の復活のために用意された『酵母』のような存在だからです。
あなたの妻はこの偉大な美徳を持っているが故に,死者の霊魂があなたの前に姿を現すことができたのです。 - イフアマズダが話している間,天使たちは再びサルギスの姿となり,王がその剣で生命を縮めた何人もの人間の霊魂を登場させました。その中でも最も重要な人物は,かつてツェゴウの町の王であったアウェタキサでした。
- サルギスは王にこう言いました。
「私が死んだとは思わないでください,王よ!
私が失ったのは実体界の部分であり,それ以外は死んでいません。あなたはその剣で私を切り殺したように,あなたはその剣に貫かれるでしょう」
次に別のサルギスのトーセインが次に話しました。
「王よ,あなたが死んだら,あなたの霊魂は地獄に投げ込まれる。そうしたら私はあなたをずっと苦しめ続ける!」
別のサルギスのゴーンが次に話しました。
「昨日までに私は腐った肉体から毒を取り出し,お前の口から摂取させた!
お前は腐った血と臭いに咽るだろう!」
次に話したのはオゥドでした。
「王よ,私はあなたに地獄の苦しみを与えるため,死者の国から来ました!」
次にサルギスのウィシーが話しました。
「私はあなたの最初の妻です。どうして私を殺したのですか?
世界は十分に広かったのではありませんか?」 - こうしてイフアマズダは霊魂に話しを続けさせて,彼らは思い思いに悪意や憎悪をぶつけて王を苦しめましたが,どの霊魂も王に対する感謝の言葉は一言もありませんでした。
王は言いました。 - 「霊魂か,それとも悪魔なのか,立ち去れ!私はもう二度と見たくない!」
彼は剣を激しく薙ぎ払いましたが,彼が少し落ち着くと,イフアマズダは彼に話し掛けました。 - 「王よ,私はあなたに宣言します。
大気中には死者の霊魂で満ちています。彼らはあなたに殺されたので,彼らはあなたが死ぬのを待って,あなたの精神体に留まり続けているのです。
人間を殺すことでその者を取り除けるとは思わないでください。あなたが力を持っているのは実体界の部分だけです。精神体は決して死にません。オーマズドは公正です。
あなたが傷つけた者たちを,あなたは回復してあげなければいけません」 - 王は言いました。
「私が殺した者が悪人だったとしたら,それは善行ではないのか?」
イフアマズダは言いました。
「その者を殺すことは大いなる悪です。あなたはその者を善人に変えなければいけないのです」
王は言いました。
「しかしその者が私に従属する者だったとしたら?」
イフアマズダは言いました。
「誰もあなたに従属することはありません。全ての人間は創造主の下に等しく創造されたのです。
全ての人間は彼から創造され,彼に従属するのです」 - 王は言いました。
「しかし私は彼らを所有していました。彼らは私のもの。あなたの創造主が私より強いのであれば,彼に彼らを連れ去ってください」
イフアマズダは言いました。
「彼らをあなたから連れ去るのは名誉なことではありません。しかしあなたが彼らを救済するのであれば,それはあなた自身の名誉になります」 - こうして王の心が揺れ動いている間,天使たちは自分たちの臨在と力を示すため,いくつかの変わった方法を試そうとしており,壁に掛かっていた厚手の布を切り取り,床に落として大爆発を引き起こしました。
女王と娘たちは立ち上がって逃げ去りました。 - 王は怒り,剣をザラツゥストラに突き刺しました。しかし剣は壊されて100の破片となり,どれもザラツゥストラに触れることができませんでした。
イフアマズダは言いました。
「今まで歩んできたあなたの悪の道を悔い改めない限り,私はこの家から聖なる天使たちを引き上げさせます。そうなると朝日を見る間もなく,この宮殿は消えているでしょう」 - しかし王は頑なに考えを改めようとしませんでした。
イフアマズダは王が悔い改めないことが分かると,主神とアシャールを引き上げさせてこの宮殿を悪の霊魂に明け渡しましたが,彼は守護霊を女王とその娘たちに遣わして,今晩のうちに家から逃げ出すようにお告げし,彼らは言われたように逃げました。
闇の霊魂は王の敵の下に行き,彼らに宮殿を壊すように唆しました。
彼らはそのように振る舞い,破壊しました。 - 次の日,ザラツゥストラは大混乱に陥った町に行き,イフアマズダは彼を通して人々に話しかけました。
同じ日,彼は1,000人以上の信者を得ました。王がこの様子を見ると,彼はザラツゥストラを死刑に処すと決め,彼を殺した者には報酬を与えると宣言しました。 - 次の日,彼は再び人々の前に立ち説法をすると,さらに多くの信者を得ました。この時,王は1万人の兵士にザラツゥストラとその信者を襲撃し,滅ぼすように命じました。しかしイフアマズダはこのことを事前に信者たちに預言し,逃げるように助言していました。
多くの者が夜明け前に逃亡しましたが,兵士が襲撃する時にはまだ城壁内に残っている者も大勢いました。 - イフアマズダは手を上に伸ばしてこう言いました。
「御父よ,あなたの火の一つを賜りますように!
私に火の壁をください!」
すると彼らと兵士の間に火の壁が立ちはだかり,後者はこれを見ると,『霊魂』を意味する「シリ!シリ!」と叫んで背を向けて逃走してしまいました。 - こうしてザラツゥストラは彼らを町の外に逃がすことに成功し,男女,子供は誰一人怪我をした者はいませんでした。しかしザラツゥストラの所業はそれを語る上で非常に誇張されたので,彼をまだ見たことがない人々には,世界の終わりが到来したのではないかと信じられました。
- こうして王は町を統治する上での全ての規律を失い,人々は法や秩序,盗み,そして彼らの前にあるいかなる物も破壊することなく暮らしました。
【19章】
- ザラツゥストラは50人の仲間を呼び,こう言いました。
「暴君から解放されたこの人々は,彼の敵となるでしょう。長く抑圧されてきた人々は復讐を好むものです。それはオーマズドの法を阻害します。
それ故に彼らを町から連れ去り,それぞれの組に分けてください。そうしたら私は通訳できる天使を遣わします」 - イフアマズダは言いました。
「ご覧なさい,神は漫然と何かを達成するために来るわけでも,世界中の悪を倒すために誰か1人の下を訪れるわけでもありません。あなたたちが生まれたその日から,あなたたちはこの仕事のために準備されているのです。
私の天使たちはあなたたちと共におり,あなたたちは私の軍隊の一部です。
さて,あなたたちを組み分けし,これから森に連れて行きますが,その後で何が起きるかを話しておきましょう。
あなたたちは新しい言語で話し始めないといけません。そうすればこの人々はあなたたちを理解します。あなたたちはオーマズドを礼拝する祭壇を建てて,この人々に歌や祈り,踊りを教え,オーマズドの法を説明しないといけません」 - ザラツゥストラは言いました。
「私やイフアマズダの声を待ったりせず,あなたたちは私が命じた通り,自分たちの信仰を行いなさい。御声はあなたたちと共にあります」 - 秩序を失った町から逃げて来た人々は半日先の場所に連れ去られ,そこで野営しました。インカスの格好をしたザラツゥストラの仲間が入ってくると,人々の言語を理解し,分かりやすく彼らと会話をしました。
- 彼らはオーマズドの祭壇を建てて,人々に礼拝を教え,いかなる男女,子供は勿論のこと,動物,鳥,生物として創造されたいかなる動物も殺さないという誓いを立てさせられました。
また彼らは,オーマズドの法に従い,果実や木の実,木の根,パンだけしか食べないと太腿の下で誓いを立てました。
彼らは10人の家族,100人の家族,1,000人の家族に組み分けされた後,ザラツゥストラの法に従う1人のラバをそれぞれの家族に与えました。 - しかしザラツゥストラは町に戻りました。イフアマズダは人々に彼の力を見せつけるため,夜には火の衣を纏い,昼には雲を纏わせたため,彼に手を上げようとする者は誰もいませんでした。
- 次に彼は,城壁の全ての頭蓋骨と家や柱に吊るされた頭皮を人々に集めてくるように命じました。それらは運ばれてくると燃やされました。
次に彼は兵士を解散させました。
無力となった王にできたのは,悪態をつきながら徘徊することだけでした。 - ザラツゥストラは人々に町の外に出てそこで暮らすように助言しました。彼らは1,000人単位で出て行き,新しい生活を始めました。
その後,ザラツゥストラはその場を去り,すぐにそこはドルジたちで溢れかえり,彼らはドルク人の下に行き,火を放ち略奪するように囁きました。
それは実行され,何日も掛けてツェゴウの大都市にあった全ての寺院,塔,宮殿は灰燼と化しました。 - ザラツゥストラは何十万という人々の前に立ち,イフアマズダの声で彼らに話しました。
「ある人はこう言っていました。
『地上や天界にある物に価値を付ける者にとって,火と破壊があるのは良いことです』
全ての者は御父オーマズドよりもたらされ,その許しによって手に入れます。彼が邪悪な町からその御手を引いたら,悪の霊魂が押し寄せてきます。 - あなたたちはこう言いました。
『悪の霊魂とは誰のことですか?
オーマズドが彼らを滅ぼさないのは何故ですか?』
私はあなたたちにこう言います。
『悪の霊魂はあなたたちや死者の霊魂そのものなのです』と。
あなたたちが熱意を持って殺した者や,生きながらにして霊魂を苦しめた者たちです。
あなたたちは門や城壁に彼らの頭蓋骨を吊るしました。あなたたちの科学の神殿はあなたたちの敵の頭蓋骨で飾られました。彼らの霊魂はその肉体は死んでもまだ生きており,彼らは邪悪な行為をさせようとあなたたちに憑りつきます。 - これがオーマズドの法です。人間が死んだら,霊魂に悩まされないようにするため,その肉体を燃やすか,土に埋めるかしないといけません。しかしあなたたちは彼らを霊魂に縛り付けました。ツェゴウはその栄光のために殺された人々の目には,目に余るものがありました。
だから彼らはツェゴウが破壊されるのを見て喜びました。 - あなたたちが火で失ったもの以上に,彼らの霊魂は10倍のものを得ました。なぜなら神々は漸く彼らを天界に連れて行くことができるからです。
この理由から,私はツェゴウが破壊されるのはとても良いことだと宣言します。
世界は広いです。その土地はもっと広いです。
どの男女も子供も殺してはいけません。彼らはオーマズドのものだからです。 - あなたたちは大都市を建ててはいけません。それらは地上における呪縛です。
あなたたちは1人で生きていくことはできません。なぜならそのような者は10,100,1,000の家族が暮らしているにも関わらず,自分自身に拘束されてしまうからです。
御父はあなたたちにイヒン人の例を与えたではありませんか?
彼らは殺さず,誰の物も奪わず,色欲や戦争,争いごとも行いません」 - 声は言いました。
「王の妻ヒティウスは何処にいますか?
王子ハシンは何処にいますか?
王女ペトゥ,ズー,ヒィン,ザビーは?」
群衆は答えました。
「彼らはいなくなった!」 - その後,声は言いました。
「私はあなたたちにこう言います。
『彼らは去りましたが,戻ってきます』と。
そのうち彼らはここに来るでしょう。彼らはあなたたちの前で話すことになります」
実際にその通りになり,王の妻と息子,娘たちがやって来ました。
ヒティウスが言いました。
「見てください,オアスのツェゴウが燃えています。誰か王を見た者はいますか?」
とても若い少女であった王女ヒィンとザビーが父のために泣きました。
彼は自分の剣で腹を切り裂き,自害して果てたのでした。 - イフアマズダはザラツゥストラを通して言いました。
「ヒティウスよ,こちらに来て,皆が見える岩の上に立ち,あなたの子供たちも連れてきなさい」
彼女はザラツゥストラの傍に来て,そこに立ちました。
声が言いました。
「死者が霊魂として生きていないのかどうか,この子たちに見させましょうか?」 - ヒティウスは言いました。
「私は自分の目で死者の霊魂を見たり,彼らが話すのを聞いたことがあります。もしもこのことが真実であれば,子供たちよ,手を上げなさい」
子供たちは手を上げました。
再びヒティウスは言いました。
「私の夫である王は何処にいますか?」 - 彼らはまだ岩の上に立っている間,見てください,王の幽霊が人々の前に立ちました。
ヒィンとザビーが泣き出しました。
「父がここにいます!」
この時,イフアマズダは王の精神体に語り掛けました。
「あなたは死んだことに気付いていますか?」
王の精神体は全員に聞こえるように大声で話しました。
「いや,私は死んでいない。だが私は愚かなことをした。私は自分で腹を切った」 - ヒティウスが言いました。
「確かに王は死んだのだと思いますが,これは王の霊魂です。
彼が奇妙に見えます!」
イフアマズダは言いました。
「切っていません。あなたの腹は無傷です」
しかし霊魂は尚もこう主張しました。
「私は自分の手を風穴に突っ込んだのに,お前はまだ無傷だと言うのか!
お前は狂っている!
私はお前のことを覚えている。
私を苦しめるため,敵の幽霊を呼び戻したのはお前だったな!」 - イフアマズダは言いました。
「あなたにはどんな敵に見えましたか?」
霊魂は答えました。
「1,000人以上の私が殺した者たちだ!
消えろ,苦しめてくれるな!嘲笑ってくれるな!
私がお前を突き刺してやる」 - この時,王の精神体は狂ったように足踏みしました。なぜなら彼は死者の霊魂を見たからです。しかし王はサルギスの姿であったため,王には見えていても観衆には見えていませんでした。
- イフアマズダは言いました。
「王よ,私はあなたにこう言います,
『あなたは死んで,死から蘇ったのです』と。
この事実に気付けば,あなたは霊魂として立ち上がることができるでしょう。
あなたの敵が救済されなければ,あなたは救済されません」
これに対して王の霊魂が答えました。
「私はツェゴウの町からお前を追放する!
戻って来たら死刑に処してやる!」 - イフアマズダは言いました。
「王よ,私はあなたに伝えます,
『ツェゴウの町は滅びたのです』と。
そこには1軒の家もないのです!」
王の精神体は答えました。
「お前が私を苦しめている!
お前は狂人だ!
お前は事実を嘘で塗りつぶしている!
悪党は立ち去れ!
私の腹が切り裂かれていなければ,お前に復讐したものを!」 - イフアマズダがサルギスを引き上げさせると,王は見えなくなりました。それにも関わらず,王の霊魂はその場に留まり,激しく呪い続けていました。
女王ヒティウスは十分にこのことを理解しており,悲しみで心は重く沈んでいました。 - イフアマズダは彼女に言いました。
「あなたの先祖のイヒン人の信仰を思い出してください。オーマズドの法の下に強くなれば,この悲しみを拭い去ることができるでしょう。
法の前では,天界や地球のいかなるものも欠けた精神を満たすことはできません。
『私は至高の御方の中で生きている』と言える者こそ,その幸福には確かな礎があるのです」 - 死者が苦しみにあることを知る者は誰であれ,彼らのために祈り,御父への讃美歌を歌いなさい。
あなたたちは彼らに平和をもたらすため,『あらゆる光』と共に嘆願しなさい。
あなたたちの祈りのせいで『あらゆる光』がハオマを注ぎ込み,死者の霊魂に栄養を与えようとしているとは思わないでください。
しかし私は宣言します,
『あなたが御父に献身し平和と喜びを得れば,霊魂は美徳と高揚を取り戻す』と。 - こういったことは今晩にでもあなたにお見せします。
堅く,希望に満ちた信仰心を。
そうしたら夕方にもう一度,あなたの前に死者の霊魂を呼び起こします」
【20章】
- ツェゴウが破壊されたことで,何十万人もの人々が家を失い貧困に喘ぎ,食料や必要なものを求めて各所に押し寄せました。
イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。
「定命の者たちの不運は正義を司る神々にとっては幸運なことです。しかし定命の者たちの幸運は悪の神々の栄光となります。
ツェゴウが燃やされ,人々が飢えたからと言って,御父の声がこの場から消えたとは思わないでください。
今こそ彼らは耳を傾けるべきなのです。地上の宝物を失ったからこそ,その心は永遠に続くものを追い求めるべきなのです。 - だからこそ行きなさい,ザラツゥストラよ。私はあなたと共に行きます。
泣き叫ぶ者たちが今晩にも『ツォクヤの谷』の人々を求めて押し寄せるでしょう」 - 夜になると,ザラツゥストラは何万人もの人々の前に姿を見せました。
イフアマズダがオーマズドの法について説明を行いました。 - 彼が話し終えると,王の未亡人ヒティウスとその子供たちやそれ以外の40人を連れて,『三日月』の布陣を敷かせ,彼は両方の角の間に立ちました。その左右には多くの仲間たちがいました。
こうして準備が整うと,ザラツゥストラはイヒン人が若い頃に教えてくれた歌を歌いました。 - ドルジたちが『三日月』の中に案内され,多くの者たち王のサルギスが連れてこられました。
すると彼らが王の精神に平和をもたらし,永遠の喜びを得られるように歌ったため,王の霊魂は和らぎました。
まもなく彼は狂気から目覚め,自分が死んだことを思い出しました。
彼はザラツゥストラに感謝し,全ての人々の前で彼を褒め称えました。王と一緒にいた闇の霊魂に対しても同じことを行いました。 - ザラツゥストラは言いました。
「ご覧なさい,私は闇の時代に来たのではありません。あなたたちは女性から生まれたいかなる人間も崇めてはならないし,その者を『聖なる者』として呼んでもいけません。
創造主オーマズドだけが全世界を統べる管理者なのです。
彼に対する私の声を聞いてください!」 - ザラツゥストラは両手を力一杯に上に伸ばすと,イフアマズダは彼を通して言いました。
「光の中の光たる御父よあなたの息子がここにいます!
あなたの全能なる力を以て,この信仰篤き被災民に祝福を賜りますように!」
この言葉を言い終わると,上空から魚,果実,穀物,木の根など,3万人以上の飢えた民を養うのに十分なあらゆる食料が3日間,天から降り注いだのでした。 - 王のサルギスはこの様子をずっと見守っており,彼は大声で泣きました。
「オーマズドよ,どうか祝福を賜りますように!
私があなたを知っていたならば!
私があなたを見つけられていたならば!
妻のヒティウスよ!
私の祝福を受けた赤ん坊よ!
王に,イフアマズダの法を永遠に公布すると誓いなさい!
誓いなさい!
私を喜ばせてください!
誓いなさい!誓いなさい!誓いなさい!」 - ヒティウスと子供たちはイフアマズダに指示されたように両手を上にあげて,永遠にオーマズドの愛とザラツゥストラの法を永遠に守ることを厳かに誓いました。
その後,何千何万もの人々が訪れ,同じように誓いを立てました。
イフアマズダはサルギスを解放し,霊魂たちは定命の者たちから見えなくなりました。
【21章】
- 翌日,ザラツゥストラは大衆の前に現れ,イフアマズダは彼を通してこう言いました。
- 「私は闇の時代に来たのではなく,光と知識の時代に来たのです。
私はこれが奇跡ではないと宣言します。
私は御父に仕え,その息子です。 - 上天には2種類の霊魂がいます。地球に捉われる者と,御父に仕える者です。
もしもあなたたちが地球に捉われるのであれば,同じく地球に捉われた下天の霊魂に仕えることになります。
もしもあなたたちが御父に仕えるのであれば,上天の霊魂に仕えることになります。 - あなたたちは昨晩,御父に祈りを捧げて団結したので,聖なる天使たちは食料を恵んでくださいました。彼の収穫物は地球全土に及びます。彼の御手が及ぶ範囲は広大です。
彼が望むものは,食料を集めてあなたたちにもたらすことではありません。彼が本当に望むものは,あなたたちが必要とし彼が喜ぶ全てのものを,肥えた地球から産み出すことなのです。
戦いを止めなさい。創造主が創造した,大地を走る者,空を飛ぶ者といった生きとし生ける全ての者を殺してはいけません。血が通わず,生きているのに冷たい魚以外の肉は口に入れてはいけません。 - 朝になり,あなたたちが最初に目覚めたら,創造主オーマズドにこのように祈りなさい。
『あらゆる光であるあなたに栄光あれ!
あなたは私を創造してくださいました。
あなたの前で正直であるべく全力を尽くします。
あなたは私を賢く創造してくださったと信じています。
あなたが示してくださるのは正しき道だと知っています。 - 私が目を鋭く凝らして,世界中の何よりも,自分の心を見つめられるようにしてください。
私は闇の部分を見つけたら,それを洗い流します。
他人の罪に対して目を閉ざしその善良なる部分を私に見せて,私が自分の愚かさに恥じ入るようにしてください。 - 今日,私は困窮し無力な者の下に駆け付け,彼らを喜ばせり,そういった言葉を掛けます。
いかなる男女や子供に対して中傷しないように私の舌を封じてください。なぜなら彼らはあなたが手ずから創造された創造物だからです。 - あなたが私に与えてくださるものは,1日に必要な分だけで十分です。私はそれに対して不平を申し上げません。
オーマズドよ,1日中,祈りを捧げるこの私が,あなたの御業における栄光となれるように活力をお与えください。
アーメン!』」 - イフアマズダは言いました。
「祈りに関して言えば,言葉を発して実践しないのは何も意味がないということを覚えておきなさい。
自分の光に忠実な者ほど強い心を持っています。自分の光に嘘をつく者は目を潰し耳を塞いでいます。
天界に昇天したいのであれば,地上に捉われないようにしなさい。
復活は既に臨在する『至高の御方の光』に続くことです。これを行わない者は,御父に復活を求める愚か者です。来世のその者の境界線は地獄の炎となるでしょう。 - オーマズドは自分を犠牲にすることで全てを創造しています。他人の進化にその身を捧げることで,人間はオーマズドに近づくことができるのです。
これが真の意味での『復活』なのです。
【22章】
- イフアマズダはザラツゥストラの法に忠誠を誓う者たちを集めて他の者たちとは区別すると,10日で3万人の信者が生まれました。
- それにも関わらずイフアマズダはザラツゥストラに言いました。
「この中で信仰が長く保たれるのは10人に1人です。その10人の信仰をしっかりと繋ぎ止めることは,信仰に対して理解しない者を10倍持つことよりも価値があります」
ザラツゥストラは質問しました。
「どうすればその10人を繋ぎ止められますか?」 - イフアマズダは言いました。
「昔,私はあなたにイヒン人の下で暮らすように言いました」
ザラツゥストラは言いました。
「分かりました。私はイヒン人からオーマズドの車輪を学びました」
イフアマズダは言いました。
「あなたがオーマズドの車輪を作りなさい」 - ザラツゥストラは車輪を作ると,それを正午に太陽が高く昇るのに合わせて斜めに吊るしました。
イフアマズダが人々に説明しました。
「これは『あらゆる光の管理者』創造主オーマズドの御名の象徴です。これは神聖なため三日月の両側の角の間に置きなさい。これは祭壇の御印であり『祭壇』と呼ばれることでしょう。
信仰者は私に付いてきなさい。私が説明します」 - 彼らはそれを集会場に運び,同じ方向に向けました。
人々はそれを囲むように円陣を組むと,イフアマズダは言いました。
「この場所を『ハレル』と名付けましょう。車輪は『祭壇』と名付けます。
ご覧なさい,あなたたちは既に先祖の慣習に従って太腿の下で誓いを立てましたが,今度はオーマズドの祭壇とその聖書に誓いを切り替えるのです」 - イフアマズダは多くの人々に,悪を遠ざけ,善に励む誓いを立てさせました。そして全員が御父を証人として,車輪を1周しました。
彼ら全員が誓いを立て終わると,イフアマズダは言いました。
「あなたたちは多くの車輪を作り,道路沿いに運び,他の道路と交差する場所には祭壇を設け,創造主に車輪を奉じなさい。 - そうすれば通り過ぎる者は誰でも立ち止まって創造主を思い起こし,悪を遠ざけ善に励む誓いを更新し,御父を証人として車輪を一周するでしょう。
- こうしてザラツゥストラの聖なる車輪はイフアン族の間で設置されました。
- イフアマズダはザラツゥストラに言いました。
「最も強力なものは何だと思いますか?」
ザラツゥストラは言いました。
「目です。目は最も恐れられ,最も好ましいものです。
人間の目は自分から遠く離れた所まで届きます。しかし人間の両手両足は自分から離すことはできません。
人間の目は山や雲,月,太陽,星にまで届かせられるのです」 - イフアマズダは言いました。
「もしも人間の目が強力な道具だとして,それで何ができますか?」
ザラツゥストラは『目の絵』を描くと祭壇の上に置きました。
イフアマズダは人々と誓いを交わした時,同時にそれはイフアマズダの法やオーマズドの法との契約でもありました。
彼らは言いました。
「私はあなたの目が昼夜を問わず,私を見ていることを知っています。
オーマズドよ,何物もあなたの目からは逃れられません!」 - イフアマズダは全ての礼拝所の祭壇の上に『目の絵』を置くように命じました。
- 新月の最初の夜が訪れ,ザラツゥストラは礼拝所に行くと,人々もそこに入りました。
イフアマズダは言いました。
「今日は死者の霊魂のための聖夜です。今晩,ヒティウス未亡人は喜びを得て,私は王の霊魂のために祈り,歌います。その後,闇を彷徨う全ての霊魂のために祈り,歌います」 - 彼らが歌い,祈っていると,王の霊魂がサルギスの姿で入って来て,ヒティウスや他の人たちと話をしました。
その後,王の霊魂はイフアマズダと歌い,祈りました。
こうして新月の最初の夜は,死者の霊魂のための『月の夜(ミサ)』となり,生者の前で披露されました。 - イフアマズダはザラツゥストラを通して4日4晩,ザラツゥストラの法,オーマズドの法を教えました。何千何万もの人々が正義に目覚め,ザラツゥストラの弟子(ガスペ・ザラツゥストラ)と呼ばれました。
- ザラツゥストラは人間の世代において,最良で最強なものは何かをイフアマズダに質問しました。
イフアマズダは答えました。
「人間の世代において最良で最強なものは,定命の者たちの肉体や振舞い,その精神を見通す『全能の目』が常に存在することを幼い子に教えることです。 - ザラツゥストラは幼い子供について質問しました。
イフアマズダは答えました。
「3日,5日,7日に男子には割礼の儀を,女子にはピアスの儀式をします。彼らが十分な年齢になったら,車輪の上で聖別します」 - ザラツゥストラは言いました。
「聖別とは何でしょうか?」
イフアマズダが答えました。
「『至高の御方』創造主オーマズドに対する信仰を公言することです。
幼い頃から毎晩,寝る前にオーマズドに祈りを捧げ,朝,目覚めたらオーマズドに祈りを捧げ,その誓いを更新し『全能の目』の臨在を認めることにあります」 - ザラツゥストラは叶えられなかった子供たちについて質問しました。
イフアマズダは答えました。
「そのような子供でも生きられるかもしれませんが,死ぬかもしれません。もしも死んだらドルジの世話になり,ドルジになります。しかし生きられたら,嘘つきのドルク人に成長し,殺したり盗みを働くでしょう」 - ザラツゥストラは,もしも聖別された子供が死んだらどうなるのかを質問しました。
イフアマズダは答えました。
「聖別された子供が死んだら,その精神体はオーマズドの聖別された精神体によって天界に送られます。そして善良で喜びの場所に連れていかれます」 - このことを弟子たちに説明すると,彼らは自分の子供たちをザラツゥストラの前に連れて来ました。
イフアマズダは祭壇で彼らを聖別し,水と火で洗礼を受けさせた後,ラバにより名付けされました。
【23章】
- 『完全に純粋なる者』ザラツゥストラは詐欺師から身を守る方法について質問しました。
イフアマズダは答えました。
「全てを祭壇の上で証明してさしあげなさい。
その者が人々の前で『私は預言者だ!』と言って奇妙な教義を説くのであれば,その者を,最も太陽が高く昇る正午に,顔が太陽の方向に向くように車輪に縛り付けなさい。もしもその者が本当に預言者であれば,祭壇で暮らす霊魂がその者を解放するでしょう。しかし3日目の夜に解放されなければ,車輪を森の方に運び,草叢に置きます。その者が詐欺師であれば,野獣が来て,その者を食い殺すでしょう」 - ザラツゥストラは車輪について質問しました。
イフアマズダは言いました。
「詐欺師が車輪の上でその身を滅ぼしたら,その車輪はもう使えないでしょう。しかし弟子たちは車輪の輪の部分は不要なので切り落とし捨ててください。しかし車輪の中央の十字の部分は残しておいてください。なぜならその者が縛られていた十字架は聖なるものだからです。それは真の十字架なので,礼拝所に吊るしておいてください」
【24章】
- ザラツゥストラは政府について質問しました。
イフアマズダはこう答えました。 - 「『完全に純粋なる者』弟子たちにとって,オーマズドの御意志を遂行すること以外,政府は不要です。しかし人間は全員が純粋ではありませんし,賢くもありません。
創造主は2種類の政府を創造しました。
1つ目は彼自身の,オーマズドの政府です。
2つ目は定命の者たちが持つ政府です」 - ザラツゥストラは,政府が自由を奪わないのかを質問しました。
イフアマズダは言いました。
「オーマズドの政府は自由をもたらします。人間の政府がオーマズドの政府に倣うのであれば,同じように自由をもたらします」 - ザラツゥストラは質問しました。
「人間の政府にとって最適なのは何でしょうか?」
イフアマズダは答えました。
「人間の政府にとって最適なものは次の通りです。
1つ目は,互いに顔が分かる2,000人以上にしないことです。どの町もそれ以上には大きくしないことです。 - 年長で賢く,最も優れた者がラバの長にします。町の10人家族や100人家族にはそれぞれ1人ずつ,年長で賢く優れた者がラバが就きます。
- このラバたちが町の政府となります。彼らは政庁を持ち,そこが公布の場となります」
- ザラツゥストラは言いました。
「彼らが自由を妨げない法令を作るにはどうしたらよいのでしょうか?」
イフアマズダは言いました。
「人間よ,このようなことは質問してはいけません!
自由を求めて叫ぶ者は我儘な人間であり,ドルク人です。人間は公共の利益のために多少なりとも自分の自由を犠牲にする意志がなければ,オーマズドの前に立つ価値はないのです。
どれぐらいの犠牲を強いればよいのかを確認することが法令の仕事なのです」 - ザラツゥストラは言いました。
「ラバはどのように会議を進行していけばよいのでしょうか?」
イフアマズダは言いました。
「彼らが着席したら,主題をラバ長が発表し,他のラバは主題を決めてはいけません。
しかし他のラバの中に主題を持っている者がいれば,事前にラバ長に伝えておきます。 - 主題が発表されたら,ラバ全員で主題について議論しますが,互いに反対意見は述べてはならず,それぞれ自分の意見が『至高なる光』であると宣言します。
- 彼ら全員が話し終えたら,ラバ長が最初の場で他の人々から集めた『至高なる光』を下に自分の『至高なる光』について話し,それがオーマズドの光に照らされて,法令となります」
- ザラツゥストラは都市間の法について質問しました。
イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラにオーマズドの法について説明しました。
彼は言いました。
「1つの町は1つの家族です。小さな村は1つの家族です。そのため1つの町は『イル』と呼びます。
各町には1人の『神イル』がおり,年長で最も優れた賢い者がその任に就きます。
『神イル』は全ての町にとって何が良いのかを評議会で検討します。なぜならある町は亜麻や羊毛,ある町は鉄,ある町は銅,ある町は船に適しており,それぞれ特徴が異なるからです。 - ザラツゥストラは『神イル』の評議会について質問しました。
イフアマズダは答えました。
「『神イル』は彼らの中で年長で最も優れて賢い者を『神イル長』と呼びます。彼は評議会場の東に座り,彼は他の『神イル』から話を聞いた後で主題を提示します。
主題が提示されると,評議員は全員で話し合います。彼ら全員が話し終えると,次に『神イル長』が話し,その言葉が『ザラツゥストラ法』と呼ばれる法令となります。なぜなら『あらゆる光』は長と共に暮らしており,彼は間違えられないからです。
これがオーマズドの法,イフアマズダの法,ザラツゥストラの法です」 - ザラツゥストラは言いました。
「城壁に囲まれた町(ギリヤ)では,何がオーマズドの法になりますか?」
イフアマズダは答えました。
「イヒン人にとっては城壁で囲まれた町,イフアン人にとっては城壁がない町です。
ドルク人の町にとっては城壁です。これがイフアマズダの王国です。
信仰を持つ者はどうして壁で囲まないといけないのでしょうか?
彼らは金銀を蓄えたり,盗んだりしません。ザラツゥストラの後に,2つの人種が生きることでしょう。一方はこの世界に生きる人々で,もう一方はオーマズドの人々です。
前者は地上の物に励み,後者は霊的な物に励みます。この2者には類似性はありません。
この時から,御父を信仰するザラツゥストラの人々は町を壁で囲んではいけないのです。(但し聖なる民イヒン人は除きます)
しかしこの世界に捉われた人々は御父に対する信仰がなく,石の壁の中で信仰を持たないといけません。そうすることで私が何を正義と見ているのか分かります。 - ザラツゥストラは最小の町について質問しました。
イフアマズダは答えました。
「最小の町とは,男とその妻,子供たちです。大都市の人々がお互いを1つと見るように,男とその妻,子供たちはお互いを1つ見ます。 - 大都市には家長がいるように,小さな町にもいるべきです。長を持たない町など何処にもないのです」
- ザラツゥストラは言いました。
「大都市の政府では,父たちが主題を話し,その後に家長が公布します」 - イフアマズダが言いました。
「夫婦がいる家族もそうです。妻が最初に話し,次に年齢がある程度達していたら子供たちが話し,その後で父親が宣言します。大都市で良い法というのは小さな町でも良い法なのです。天界の王国を統治するように,地上の王国でもそうするべきなのです」 - ザラツゥストラは愚夫と賢妻,そして愚妻と賢夫について質問しました。
イフアマズダは『完全に純粋なる者』ザラツゥストラに言いました。 - 「何が善で,何が悪かを知っている者はいますか?
全ての男性は自分を犠牲にして御父に捧げるべきだし,全ての女性もそうするべきだと思いませんか?
もしも善良な女性がいたとして,オーマズドに誓った後で悪い夫に自分を捧げるつもりがないのであれば,彼女は善良でなく,自分を愛する者です。善良な女性は自分に尽くしたりしません。
彼女の夫が悪を向いているからと言って,彼女もそうするべきだと思いますか?
オーマズドに用意してくださった場所にいることは,彼女にとって良くないことだと思いますか?
彼女は御父に逆らおうとしているのですか? - 妻を虐待する悪い男や欲深な男はいます。このことを全ての乙女たちは知らないのでしょうか?
もしも彼女が御父の御名の下に夫に身を委ねたのであれば,彼は彼女にいろいろと聞きます。
彼は彼女の家にその王国を築きます。そうなったらこの男女は自分が望んでいることを相談する必要はなくなります。なぜなら彼女が夫から離れたいと思ったのであれば,または妻が夫から離れたいと思うのであれば,御父はそのうちの1人を天界に連れていくからです。
彼が気まぐれな男女を喜ばせようとして,風のように変わったり,従ったりするとは思わないでください。むしろ悪い夫を持った賢妻はオーマズドにこう言うべきです。 - 『私は自惚れていたので,御父よ,あなたは私を叱責しました。
私が自分の状況を変えようとしていたので,私が何も善いことを知らずにいることを教えようとしてくださいました。
そうです,あなたは愚かな判断をしている私に気付きを与えてくださいました。私はあなたの御意志に立ち返り,利益を得ます。
私は不平をもう漏らしません。
私は鞭で打たれ,家族に恥をかかされたとしても,私はあなたを讃えます。
あなたが私の中で築いてくださった町を,私は土台から築き始め,あなたの御名に下に聖なる町として完成させます』 - 彼女は自分を鞭打つ夫にこう言うでしょう。
『御父からあなたを授かったことを私は喜び,あなたを讃える歌を歌います。
夜に寝る前に,早朝,正午に,あなたに彼の祝福があらんことを求めます。
もしもあなたが私を憎んでいたとしても,私はあなたに愛されるためさらに善行に務めます。
もしもあなたが私を殺したとしても,私は天界に行き,あなたのために家を建てます』」
【25章】
- 『完全に純粋なる者』ザラツゥストラは自分の仲間を他の者たちとは別に分けて,喜びの場所に連れて行きました。
その後,彼は不憫に思って振り返り,イフアマズダに言いました。 - 「オーマズドの法を受け入れない者たちはどうなるのですか?」
イフアマズダは答えました。
「ご覧なさい,あなたの両腕は塞がれています!死者は死者に支配させなさい。この世代だけでなく後の世代もオーマズドの法に従わないでしょう」 - ザラツゥストラは人々を町や村,家族に分けて,彼ら全員を統括する者として,オアスから来た仲間の一人ユサヴァクを長に任命しました。
- ユサヴァクによる統治体制が確立すると,ザラツゥストラとその仲間たちはさらに旅を続け,アヴォーサの王国にあるネキロの町に来ました。彼は始祖から数えて12代目の王であり,その称号は「世界が誕生する前から続くツゥシアン家の息子ニムロッドの息子ウッザの息子アヴォーサ」でした。
- ネキロは城壁に囲まれた町でしたが,ここの法律は外国人に優遇されていたため,ザラツゥストラ人は貢納することなく中に入ることができました。
アヴォーサは若い頃,パーシー人の町々を旅したことがあり,ザラツゥストラが自分の前に立った時,彼が話すオアス語を理解することができました。王はその用件を質問し,彼がどのぐらい滞在し,その上で太陽の王アシャからオーマズドの法の翻訳版を受け取り,ザラツゥストラに会ってみたかったと言いました。 - ザラツゥストラは言いました。
「私はオーマズドの法を確立するために来ました。『あらゆる光』の御名の下に,私は剣と槍の切っ先を鈍らせます。私は自分に課せられた使命を果たすまで,この町に留まるつもりです。
あなたが読んだ聖書に登場するイフアマズダの人格で,私はここに来ました」 - 王は言いました。
「私の町はそれほど大きくないが,私は町の大きさの割に,世界中の他の王よりも多くの頭皮と頭蓋骨を持っている。だが人間よ,私は哲学者であり,私の民の多くも学がある。
だから聞いてほしい,お前が私よりも偉大なる哲学者だと言うのであれば,私はこの頭皮や頭蓋骨を永遠にお前に寄贈するだけでなく,私の頭皮や頭蓋骨もジャフェス帝国の最も価値ある宝物として与えよう」 - ザラツゥストラは言いました。
「あなたにとって戦争の産物である頭皮や頭蓋骨は大変な価値があるかもしれませんが,私や天界の御父には何の価値もありません。それに私はあなたや御父の息子に対するいかなる哲学も持ち合わせていません。
彼の御意志を受け入れ,彼にお仕えし,他人に善行を施すことこそが法の全てであり,全人類がそうすることで創造物に対する喜びを得られるのです」 - 王は言いました。
「私を他の人間のように思わないでほしい。私は他の者とは違う。万物の始まりの頃,そこには7つと9つの物があったが,私はそのうちの1つなのだ。それが分割されて,天界と地球にある全ての物が創造された。7,000回,700万回,そして9,00回,900万回と,私は自分を分割した。
創造した全ての物の7分の1,そして9分の1は私自身なのだ。
このような壮大な哲学をお前は私に教えてくれるのか?」 - ザラツゥストラは言いました。
「オーマズドの前で,なんて人間の愚かなことよ!
彼らは自分に媚び諂う者を追いかけて,自分の仲間が死に行くのを見ても彼らを救おうと手を差し伸べない!
王よ,私はあなたに言いたい,2人分の食料しか地球から手に入れられない貧しき奴隷でさえ,あなたよりも偉大な哲学を持っているのです!
自分の自惚れを支配し,自分を語らない者はあなたよりももっと素晴らしい哲学を与えてくれます。乳離れできていない者は,あなたが自分の哲学から得た全てのものよりも多くの宝物を持っています。3日も経たないうちにこの町の頭皮と頭蓋骨は灰燼に帰すことでしょう。あなたの哲学ではイフアマズダの行く手を阻むことはできないでしょう」 - 王は言いました。
「お前はこの一握りの者たちだけで私の軍隊と戦おうとするのか?」
ザラツゥストラは言いました。
「私は話しました。自分の意見を確立させようとする者たちとの議論に何の価値もなく,人間の心を成長させるような価値のある人間の意見などありません。
あなたの軍隊を連れて来て,私と私の仲間たちを襲うように命じなさい!」 - 王は言いました。
「お前は武器を持っていない。私を女性のように舌を使って戦っている男だと思わないでほしい」 - ザラツゥストラは言いました。
「どうして自慢するのですか?
あなたの兵士に私を襲わせてみたらよいのに。彼らは逃げるでしょうが!」 - 王はこの場を立ち去ると,ザラツゥストラとその仲間たちに兵を派遣し,その頭皮と頭蓋骨を城壁に吊るすように士官に命じました。
ザラツゥストラとその仲間たちは王の庭に行き,1つの祭壇となるような陣形を組みました。
日が沈み,夕方になると,1万人以上の王の兵士が彼らを襲いました。 - イフアマズダはザラツゥストラの信仰により大いなる力を持っており,大声でこう言いました。
「『光の光』たるオーマズドよ!
どうか私に火の壁をお建てください!」
すると天界から火の天幕が降りてきて,2つの陣営の間に立ちはだかり,たった1人の兵士も槍や石を投げることができず,多くの兵士は逃げ崩れてしまいました。 - 王はザラツゥストラの力を見ると王国の危機を察知しましたが,すぐには方針を決められず,宮殿の中に入ってしまいました。
ザラツゥストラとその仲間たちは庭から出ましたが,ザラツゥストラの頭上には火の柱のように光が聳え立っていました。
イフアマズダは近くにいた者たちにこう言いました。 - 「すぐに兵士たちの下に行き,私の兵士となるように言いなさい。そうすれば私は彼らに創造主の武器を与えましょう」
使者は走り出し,多くの兵士を連れ戻しました。
イフアマズダは彼らに頭皮と頭蓋骨を町の城壁や門から集めて燃やすように命じると,兵士たちはその通りに実行しました。 - 翌日,頭皮や頭蓋骨が燃やし尽くされると,イフアマズダはオーマズドの法について説法を行い,多くの信者を得ました。
王はあらゆる手段を使って兵士を集めようとしましたが,誰も呼び掛けに応えませんでした。
ザラツゥストラが彼の下に行き,こう言いました。
「もしもあなたが世界の7分の1,9分の1だとしたら,私は何者なのでしょうか?」 - 王は言いました。
「兵士たちはお前を創造主だと言っている!
だが私の考えでは,お前はただの魔術師だ。お前は本当のところは何も実行できない。だからお前が私の所に来るのを待っていたのだ。
これでお前は終わりだ!」
この時,王はザラツゥストラに斬りつけましたが,王の剣は粉々に砕け,何の効果もありませんでした。 - 王は最も大きい獅子のように大きな2頭の訓練されたケトゥを飼っており,それらを解放しザラツゥストラを襲うように命じました。これは実行されましたが,見てください,ケトゥはやって来ると,彼の手を舐めたのでした。
王は頑なに信じようとはしませんでした。
イフアマズダは王に来るように呼び掛けると,王は来ました。 - 彼は王に言いました。
「私はあなたの敵ではなく,悪の敵です。
私はあなたの王国を奪い取ろうとしているのではありません。あと数日で私はここを去ります。そうなればあなたの王国には何の価値もなくなります。
私は御父のために別の王国を建てようと思います。
私は罪と邪悪を打倒し,善なるものを構築するために来たのです。それを為すことで,精神体は不滅であることを人間は知らなければいけません。 - 私はあなたやその民草が死ぬよりも,むしろを喜びに満ちたあなたたちが見たいのです。
あなたはオーマズドの法を理解していると言いましたが,王の法も存在することを認識しています。 - 王の法は地上の世界のためにあり,悪人を罰し,勇者に報いるためのものです。
オーマズドの法はザラツゥストラ人のためにあるもので,王が必要とするものではありません。
あなたの臣民は戦争や略奪のために存在しますが,『偉大なる霊魂』の臣民は善行や愛,慈悲を為すためにいるのです。
オーマズドの法が王の法よりも強いことを示さなかったでしょうか?
強い法を支持する方があなたにとって賢い選択となります。
あなたは宝物を集めてそれを自慢しています。なぜなら頭皮と頭蓋骨を交換する法をあなたが作ったからです。どうでしょう?
あなたはそれらを価値あるものにしたからでは?
誰かがあなたに頭皮を持ってきたら,あなたはその者にパンを与えます。
私はあなたに宣言します。価値は人間同士の交換の比率で決まるのではありません。
人間が石の山を集めて「ご覧なさい,これらは価値あるものです!」と言ったとします。もしくは鉄,金,銅を集めて「これらは価値あるものです!」と言ったとします。
価値というのであれば,一切れのパンや,亜麻,羊毛の方にこそあります。 - なぜなら人間は価値がないものに価値を置いているからです。その者は偽りと死の中に家を建てているのです。
価値あるのはオーマズドただその人のみです。最高の『あらゆる光』を持つ者は最も価値があるのです。なぜなら御父の光により,あらゆる正義が簡単に遂行できるからです」
イフアマズダが話している間に,ザラツゥストラの霊魂が外に出て,他の1万人の霊魂と一緒にこの場に魚や果実をもたらしました。
人々は駆け寄って,食べるために集めました。王は最初,何も答えずにいました。なぜならイフアマズダとその行為に怒った悪の霊魂たちが,王の周りを取り囲んでいたからです。
やがて王は言いました。 - 「私はあなたに上回られたので,もはや生きる意味を見出せなくなりました」
そう言うと,彼は腹を掻き切って死にました。
ザラツゥストラは王の遺体を3日間そのまま放置するように命じました。
それは実行され,王を見ようとして何千人もの人々が来て,彼の死を確認しました。内臓が傷口から出ていて,彼が息をしていないことからその死を確認しました。 - イフアマズダは王の霊魂を3日間苦しみの中で生きながらえさせて,その間,彼は弟子たちを呼んでこう言いました。
「ここで私は王を蘇らせて,それを持ってジャフェスの証とします」 - ザラツゥストラは内臓を腹の中に押し戻し,傷口を縫合した後でこう言いました。
「御父よ,あなたの御名の下に,あなたの大いなる叡智と力の証として,人間の肉体を癒してください!」
ザラツゥストラがお腹に二回,その手をかざすと傷は癒されました。
ザラツゥストラは言いました。
「御父よ,あなたの霊魂により,あなたの子供が母親の母胎に生命を吹き込んだように,この者を生き返らせてください!」 - 王は癒され,人々の前で生き返りました。
王は目覚めて周りを見回した後,立ち上がりました。
王は言いました。
「私は死んで地獄にいたが,そこで何百万もの死者を見たが,彼らもまた地獄にいた。彼らは周囲を燃え盛る硫黄の炎に囲まれており,誰もそこから逃れられずにいた」
【26章】
- 王が回復すると別人のようになり,スイスの能力を持ち,確固たる信念で信仰するようになりました。
彼はザラツゥストラに,死後に地獄の炎から逃れるにはどうすればよいかを質問しました。 - イフアマズダはザラツゥストラを通してこう言いました。
「地獄の炎から逃れるには何をすればよいかと考えないでください。なぜならそれは自分のために働くことだからです。
他人に尽くすには何をすればよいかを考えなさい。そのためにはオーマズドの法を実践しなければいけません。1年間,あなたはザラツゥストラの法に従いながら托鉢を持って,貧者と暮らしなさい。その後,あなたはイフアマズダの法を説き,町の利益のために自己を否定し,地上の物から離れ,霊的な物のために努力し,オーマズドを信仰するように教えなさい」 - 王は言いました。
「私にはこれら全てのことができますが,たった1つできないことがあります。それはオーマズドを信仰することです。
もしも彼が1人の人間であり,この世の全てを創造したのだとしたら,彼は善と同様に悪の根源ではないのですか?
もしも彼がこれまでに悪を創造するか,もしくはそれが創造物に入り込ませた無能者であれば,彼は今後も,死後の世界でさえもそうするのではありませんか?」 - イフアマズダは言いました。
「ある陶芸家が半分の壺を作ったとします。あなたはそれを悪い壺だと言いますか?
いいえ,それはまだ完成していないのです。
オーマズドによって創造された全ての人間もそうなのです。善人は完成されていますが,悪人は未完の作品なのです。
しかし創造主は人間に知識を与えました。それは人間に自分がまだ完成していない状態にあることを分からせるためです。
創造主は,人間が自分を完成させるための一助とするべく,人間に力と判断を与えました。これにより彼の創造物は栄光を共有できるのです。これを実行できる人間は既に地獄の炎から逃れることに成功していますが,それが実行できない者には逃れることはできません」 - 王は動物について質問すると,イフアマズダはこう答えました。
「動物は地球の創造物であり,今の住処で事足りています。どの動物も他に貢献するため,より良くなりたいとか,賢くなりたいという願望はありません。幾ばくかの人間は獣(肉体を持つ人間)にのみ仕える動物程度の願望しか持っていません。地獄の苦しみだけが彼らを突き動かすことができるのです」 - イフアマズダは,ここでは語られていないオーマズドの法の箇所について説明した時,王は理解し,ザラツゥストラの法に従って祭壇の上とその目の下で誓いを立てました。
彼らの民草が回復すると,ザラツゥストラは旅の仲間の1人を『神イル』の長として残し,他の仲間を連れて旅立ちました。 - 天界の図書館の記録によれば,次の町の王国も同様に救済され,人々はザラツゥストラ人になりました。
- ザラツゥストラが再び出発し,別の町を訪れると,そこでも打倒と救済が行われました。
結果として,ザラツゥストラはジャフェスの24の町や王国の打倒と救済を行いました。 - その後,彼はセムの高地に出発し,そこでもザラツゥストラの法を確立するため,多くの町や王国の打倒と救済が行われました。
2年間,彼はセムで働き,ザラツゥストラに宿ったオーマズドの力は偉大で,セムの全ての町や王国はパーシーの太陽の王国の束縛から解き放たれました。 - その後,ザラツゥストラはアラビーニャと呼ばれたハムの方に向かいました。しかしそこにあった国では,ザラツゥストラは大した成功を収めることができませんでした。なぜなら人々は本や星々,石板について習得していなかったからです。それでもザラツゥストラは多くの町を救済しました。
- イフアマズダはザラツゥストラに言いました。
「自分の国に戻りましょう。あなたはまだ7つの町と7つの大王国を倒していません。その後,オアスに戻りあなたの手で倒し,幼少時代の予言を実現しなさい」 - ザラツゥストラはパーシーに戻ると,7つの大都市と王国に行き,打倒しました。その多くは火や戦争で完全に破壊されましたが,ザラツゥストラは信仰者を救済し,その全てにザラツゥストラの法を確立しました。
- そしてイフアマズダの命により,生まれ故郷のオアスに戻ったのでした。
【27章】
- 当時,オアスの王はポニャと言い,その称号は次の通りでした。
・太陽の王
・世界の中心の王
・王の中の王
・最強の人間
・全人類の所有者
・地球の支配者にして,生と死の管理者 - ほぼ4年間,ザラツゥストラは不在にしており,異国の地での説法の影響で太陽の町への献上品は途絶えていました。そのためオアスの王ポニャはザラツゥストラを追跡して殺害すると自分の太腿の下で誓いを立てていました。
- そこで王は様々な軍隊を数多く配備して,ザラツゥストラの捜索に駆り出していました。しかしイフアマズダはザラツゥストラを別の道に案内する一方で,兵士たちを別の道に行くように霊魂たちを遣わしたりしました。その結果,ザラツゥストラを捕縛するために遣わされた軍隊は誰も見つけられませんでした。
彼がある町にいると聞くと,兵士たちはその町を訪れるのですが既に去った後でした。このようなことがザラツゥストラがオアスの門に辿り着くまで続きました。 - ザラツゥストラは世界で最も大きな人間だったため彼のことを一度も見たことがなくても,その描写から一目見ただけで容易に分かりました。
- アシャはザラツゥストラ人と一緒に暮らしていましたが,オアスの王の迫害を受けて,森や平地のさらに奥の方,野蛮な民リスティア人が放浪する未開の地への撤退を余儀なくされていました。
ザラツゥストラ人は彼らとは友好関係にあり,リスティア人は大勢やって来て,ザラツゥストラ人の近くで暮らしました。 - ザラツゥストラは旅を終えた後,仲間と会うため最初の地『山羊の森』に戻り,イフアマズダが授けた大いなる光を持つ彼らと喜びを分かち合いました。
ザラツゥストラが彼らの所に戻ると大勢が喜び,そこにはザラツゥストラの母や幼少の頃の彼を知るリスティア人の多くがいました。 - 何日も休息と喜びを分かち合った後,イフアマズダがザラツゥストラの下に来て,こう言いました。
「ご覧なさい,あなたが生まれた町に攻め入る時が来ました。アシャを連れて行きなさい。そうすれば私はあなたの手でオアスを攻め落としてあげましょう」 - そこでザラツゥストラはアシャを連れて,前に述べた通り,オアスの門に行きましたが,彼はすぐに露見し,町に入るのを拒否されました。なぜなら王は前から彼の追放と死を命じており,彼を滅ぼし,その頭蓋骨を王の下に持っていけば誰でも報酬を貰えたからです。
- 門番のゾーダスは報酬を得ようと思って次のような計画を思いつき,ザラツゥストラにこう言いました。
「俺はお前のことを知っている。お前は死刑に処されたザラツゥストラだ。
俺にはお前を町の中に入れる権利がないし,お前の死を見届けたいとも思わない。だがもしもお前が,俺が王の報告のために不在となる見張りの交替までその身を隠していてくれれば,お前だけの危険で済む。しかしもしも俺がお前のことを認めてしまえば,俺も死刑に処される」 - ザラツゥストラは言いました。
「私は別に何も恐れないが,私のせいであなたが死刑になるのは望みません。
それでは私は見張りの交替まで何処に隠れていればよいのでしょうか?」 - 門番ゾーダスは言いました。
「城壁の部屋の中にいろ。お前とその友人も一緒にそこに行け」 - ザラツゥストラは城壁の部屋に行き,アシャも付いていきました。
彼らが隠れていると,ゾーダスは妻を呼んでこう言いました。
「お前はここに居て,行ったり来たりしていろ。それであいつらはお前を俺だと思う。俺は衛兵の所にすぐに行ってくる。衛兵は賞金首のザラツゥストラを捕まえに来るだろう」 - 門番の妻が行ったり来たりしていると,門番はすぐに衛兵の所に行き,槍や剣,棍棒,投石器,弓矢を携えた1,000人の衛兵を連れて来て,部屋の四方を取り囲みました。
この時,ゾーダスは皮肉を込めて「ザラツゥストラよ,出てこい。見張りの交替の時間だ!」と言いました。 - 部屋を出たザラツゥストラとアシャは何が起こっているのかを知りました。
ザラツゥストラはアシャに言いました。
「光は私の上にあります。あなたは私と共に来なさい。あなたを傷つけられる者は誰もいません。しかし若い頃に言われていた自分についての預言がついに実行されるのです」
【28章】
- こうしてザラツゥストラは太陽の王の手に落ちてしまい,兵士たちは彼とアシャを頭蓋骨の場所がある中央へと連行しました。この様子を見ようと何千何万の人々が集まりました。なぜなら当時,ザラツゥストラに同情的な者が多くいれば,それと同じぐらい批判的な者も多かったからです。
- 群衆を押しとどめるため,軍隊長はザラツゥストラたちを逮捕した兵士以外にも召集していました。他の者は,逮捕したザラツゥストラたちを何処に連行したのかを王の宮殿に報告しました。
- 王は使者に言いました。
「この男の死は決まっているが,全ての人々への見せしめとして,正当な裁きを下す。そこで刑吏の所に行き,ザラツゥストラを私の所に連れてこい。法の下に彼に死を宣言しよう」 - これは実行されました。ザラツゥストラは王の前に連行され,王は彼に近づいてこう言いました。
- 「お前は自分の振舞いにより王の前で告訴された。私はお前に死を宣告する。だがこのことが世界への先例となるべく,私はお前の死を目撃したいと思う全ての者たちに私の言葉を告げるべく,使者の前で判決を下す。
- 第1。お前には先代から逮捕の命が下されていたのに私の兵士の下に出頭せず,そのせいで彼らはお前を見つけることができなかった。そのためお前には死を与える。
- 第2。太陽の王の許可なく異国の地に旅し,中央の王国に対する反抗の種を蒔いた。そのためお前には死を与える。
- 第3。王の中の王はお前の首に賞金を懸け,王の兵士はお前を見つけると失望した。そのためお前には死を与える。
- 第4。若い頃,お前は対応の町オアスを滅ぼすと脅し,その言葉を実現できず,嘘を教えた。そのためお前には死を与える。
- 第5。お前は全世界の正当な所有者に対する異国からの貢納を断ち切った。そのためお前には死を与える。
- 第6。お前は闇の時代の教義を復活させて,自然に反し,世界の王の法に反し,存在しない霊魂や神を教えた。そのためお前には死を与える。
- 第7。お前は王よりも偉大な『目に見えない創造主』がいると教えたが,それは道理に反する。そのためお前には死を与える。
- 第8。お前は公然とではなく泥棒のようにオアスに戻り,城内の部屋に隠れていた。そのためお前には,最も不名誉な泥棒同然の死を与える。
- それ故,私は刑吏に命じてお前を泥棒の巣窟に放り込む。翌日の正午,お前は盗賊と共に足から吊るして,死ぬまでそのままにしておく。
- 私の判決はお前の親友に対しても効力を持つが,お前は私の命令に何か言いたいことはあるか?」
- ザラツゥストラは言いました。
「今日,あなたが私に対して下した罪状は全て真実です。しかし明日の日没までに私はあなたが言ったことをいくつか反論してみせます。
今日では,あなたの王国は大きいです。私は2日で死にますが,あなたも死にます。この偉大なる都市は廃墟と化すでしょう。そうです,太陽の神殿は2つに引き裂かれ,瓦礫の山のように崩れるでしょう」 - 王は嘲笑し,アシャに向かってこう言いました。
「お前は愚かな老人だ。消え失せよ」
アシャは解放され,ザラツゥストラは泥棒の巣窟に放り込まれました。泥棒の巣窟は王の庭で飼われていた獅子の巣穴に囲まれていました。橋が架けられており,囚人たちが中に入る時は橋が下ろされました。どの囚人も,法により処刑が決まった人間の肉体を餌とする獅子から逃れることはできませんでした。
【29章】
- 夜中に太陽の王ポニャは,ザラツゥストラの『ウズ』に関する秘密を手に入れられると考え,彼に使者を遣わし次のように言いました。
「もしもお前が王の力の秘密を明らかにするのであれば,お前の命を助けよう。
もしもお前が,王の中の王の前で『あなたより高い者は誰もいない!』と言うのであれば,お前には1日中支配できる5つの都市を贈ろう」 - これに対してザラツゥストラは次のように返事しました。
「ザラツゥストラには特に明らかにするべき秘密を持っていませんし,5つの町どころか,1つの町も統治したくありません。
明日,私は死にますが,次の日の晩にはあなたも死ぬでしょう。あなたが死ぬ前に『星の神殿』が2つに裂けて崩壊するのを見るでしょう。オアスの町は滅び,二度と復興されません。
ジャフェスのヤシアンが太陽の王となり,その王朝は何千年も続くことでしょう」 - 王はその答えに驚き,怒って使者を投石器で殺し,その遺体を獅子の巣穴に放り込むように命じました。
- 真夜中になりその遺体が運ばれると,壁の上からその様子を見たザラツゥストラは,
「その遺体を獅子の巣穴に投げ込まないでほしい。なぜなら私がオーマズドの御名において生き返らせるから」と叫びました。
その男は遺体を壁の外側に横たわらせると,ザラツゥストラは言いました。
「遺体の傍に立っている者よ,そこに手を当ててください。なぜなら生命の力は生命を通して与えられるからです」 - その者は手を首と男の遺体に手を置くと,ザラツゥストラは言いました。
「私が言った言葉をあなたも言ってください。
『オーマズドよ,あなたの生命の中の生命よ!
あなたの息子を生き返らせてください!』」 - するとこの男は生き返り,目を開け,立ち上がりました。
ザラツゥストラはその男に町から出ていくように言いました。
ザラツゥストラが逮捕され,有罪判決が下ったことにより,何千人も牢獄の周りに集まっていました。彼らはその男が蘇ったのを見ると,何人かは男と一緒に町から出ていきました。
その後,一晩中,ザラツゥストラは壁越しに御父の御名を唱えて病人を癒し,盲目の方や耳の聞こえない方を治していきました。 - 翌朝,日の出が近づくと,処刑場は見物客で混雑しました。ザラツゥストラ人の多くはザラツゥストラが自らの力で解放されると信じており,一方で王を信じる学識ある人々は彼を詐欺師と思っていたので処刑が実行されることを望みました。
- 後者は言いました。
「もしも彼がイフアン人の管理者であれば,両足が吊るされた状態でその力を証明してみよ」 - オアスの法律では,12の月を表す12人の処刑人がいて,前日に死刑判決が下った者を毎朝,日の出と共に処刑するという決まりでした。
ザラツゥストラがいる牢獄には,同じ不名誉な死を宣告された2人の盗賊がいました。
彼らは嘆き悲しんでいました!
ザラツゥストラは言いました。
「泣かず,悲しまず,むしろ喜びなさい。あなたに生命を与えてくださった者は,今もあなたと共にいます。彼の御方はあなたの精神体のために別の,もっと良い家を用意してくださるでしょう。 - ご覧なさい,私は泣かず,悲しみもしません。
死刑を宣告した者たちは自分たちが何をしているのか分かっていません。むしろ私たちよりも哀れに思います。
今日,あなたたちはオアスの暴君から逃れられるのです」 - ザラツゥストラは正午まで説法し,光が(星の)神殿の頂上に落ちると,12人の処刑人が牢獄に入って来て,囚人の手を背中で縛り,別の紐で足を縛り,紐を足の後ろから上げて両腕を通し,紐の端を梁の上に吊り下げました。
処刑人は紐を掴むと引っ張り上げました。彼らは犠牲者の体を壁の上高くに吊り上げて固定し,そのままの状態にしておきました。 - こうしてザラツゥストラは2人の盗賊の間で吊るされると,まだ生きている間,一筋の光が星の神殿の頂上に落ちてきて二つに裂き,崩落させました。塵が舞い上がると,町全体が窒息しそうになるほどの大きな雲のようになり,さらにもう一筋の光が落ちてきて,町の壁が壊れ,ゾーダスは壁の部屋の中で死亡しました。
- 群衆は王の下に駆け寄り,王を宮殿から連れ出すと,もう一筋の光が宮殿に落ちてきて粉々に砕きました。王は衛兵を呼びましたが,誰も彼の命令に従わず,逃げ出してしまいました。
その後,群衆は王を殺しました。 - 次に学者たちが処刑場に降りてくると,ザラツゥストラはまだ死んでいませんでしたが,2人の盗賊は死んでいました。
ザラツゥストラは学者たちに言いました。
「私は自分の身柄を引き渡します。そうすればあなたたちは私が死んだと言うでしょう。
それから処刑人に私の体を獅子の巣穴に放り込ませてください。そうすれば私の体が食べられないことを見届けられます。
その時,『獅子は腹が空いていないのだ』と言う者がいます。そうしたら2人の盗賊の遺体を放り込んでみてください。獅子はその遺体に襲い掛かり,食べるはずです。 - 学者たちはこう言うはずです。
『ご覧なさい,ザラツゥストラの美徳は別の肉体に宿っている』
私はあなたたちに宣言します。今,目の前で起きていることは,肉体のことではなく,霊魂のことなのです。なぜなら天使が私の肉体に集まり,獅子の咢から守っているからです。
このことをあなたたちは群衆の前で証明しなさい。なぜならこの時,獅子は盗賊の肉体を食らっている間,天使は私の体から離れますが,そうなれば獅子は私の肉体を食べに戻ってきます。それにより最も獰猛な動物である獅子でさえも霊的な視力を持ち,人間にさえ『見えない世界』によって統治されていることが証明されます」 - ザラツゥストラが学者にこう話すと,彼は御父に『オーマズドよ,どうか私の精神体を受け取ってください!』と言いました。
すると彼の霊魂は肉体から離れ,同時に地上全土が揺れ,多くの家が倒壊しました。
彼らは17頭の獅子がいる巣穴の一つに遺体を放り込みましたが,獅子たちは逃げてしまいました。
次に処刑人は盗賊の遺体を放り込むと,獅子はすぐに彼らに襲い掛かりました。 - 天使がザラツゥストラの肉体から離れると,獅子たちが戻って来て食べました。
番人が他の獅子を嗾けると,全ての肉体を食べてしまいました。
群衆はゾーダスの遺体を持ってきて巣穴に放り込むと,獅子たちはその遺体も食べました。
翌日,王の遺体を放り込むと,獅子たちはその遺体を食べて,空腹を満たしました。 - 夜になり,ザラツゥストラ人の何人かが隣人の家に集まりました。アシャも出席しており,彼らはザラツゥストラと2人の盗賊,ゾーダス,そして最後に王の精神に祈りを捧げるため,生きた祭壇を作りました。
学者たちが来てこう言いました。
「ここ何年もの間,どうして私たちに気付かせてくれなかったのですか?
見てください,ザラツゥストラは死んでしまいました!」
アシャは言いました。 - 「私は日々,公然と托鉢を持ってそのことを伝えていませんでしたか?
学識ある者たちは『気の毒な,老いたアシャよ!1人の悪党が彼の理性を奪ったのだ!』と言っていました。
私はあなたたちに宣言します。今は古き時代と同じなのだと。
学者たちは,食い散らかした獅子たちよりも御父から遠く離れています。
あなたたちは光や真実,力を求めて実体界を見るものの,全ての根底にある霊魂には盲目です。
私はあなたたちに宣言します。大気中の熱や光,病気や,大気中からもたらされる成長など,全てのものは『目に見える世界』を支配する『目に見えない世界』にあるのです。
熱や光,生と死よりも強力なのは万物を司るオーマズドなのです。 - あなたたちがこれを学ぶまで,私はあなたたちが理解できるように説明することはできません。それでもこれを知ることは,永遠の幸福の土台作りの始まりなのです」
- アシャが話している間,ザラツゥストラの精神体が,生前の体,肌色,服と似た姿で彼らの前に立っていました。
彼は言いました。
「恐れないでください。私はあなたと共に一緒にいて,吊るされて死に,獅子たちに食われた者です。
私はザラツゥストラです!
私が実体界の肉体の外見をしていることに驚かないでください。なぜならこの外見は私の霊魂の力で実現しているからです。
これは奇跡ではありません。なぜなら全ての生きる者の霊魂には同じような力がどの実体界の肉体にもあるからです。
鉄が鉄を引き寄せるように,霊魂は大気中から自分と同じ背丈の実体界の肉体を引き寄せることを学びます」 - この場にいた一人が質問しました。
「2人の盗賊は何処にいますか?」
ザラツゥストラは言いました。
「沸騰したお湯から立ち上る蒸気のように姿形はありませんが,彼らの精神体はここにいます。そのため,私は御父によりこの世界に遣わされたのです。
自分の霊魂を永遠の生命として制御したいのであれば,オーマズドの法を学び,この世界の事物に生きるのではなく,霊魂の成長を追求しなさい。 - ご覧なさい,いと高き創造主オーマズドの息子,娘である天界の主神の眷属がここにいます。
彼らは今集まっており,盗賊に服を着せて生前の姿のように見せるでしょう」
やがてザラツゥストラと共に吊るされた盗賊の2人のドルジがサルギスとして人々の前に立ち,喚き,呪い,呻き声を上げました。しかし彼らは自分が何処にいるのかも分からず,何も言えませんでした。
アシャは彼らに自分が何者で,何を望んでいるのかを質問しましたが,彼らはただ彼を呪い,処刑されるべきだと付け加えました。 - アシャは言いました。
「ご覧なさい,あなたたちは既に死んでいるのです。あなたたちの霊魂は地球に蘇ったのです!」
それに対して彼らは王に対する呪いの言葉を返しました。
天界の主神たちが王の霊魂を出現させると,彼は自分が死んだとは知らず,彼もまた呪いました。
盗賊の霊魂は悪意を持って彼に襲い掛かり,全員がこの状況を見ていました。
しかし天界の主神がサルギスを取り除いたので,これ以上,定命の者たちがドルジたちの姿を見ることはありませんでした。 - ザラツゥストラは言いました。
「現世では彼らは怒り,愚かであったため,現世に執心しています。そのためあなたたちは日の出,正午,日没の3日間,彼らのために讃美歌を歌い,祈りなさい。
今後,あなたたちは死んだり殺されたりした全ての親族に対して,3日間これを行うことを,永遠に続けなさい。 - 死者には『愛の言葉』を発するだけです。なぜなら死者に対して呪いの言葉を発する者は誰でもドルジを連れて来てしまうからです。あなたたちの愛と赦しにより,彼らを地獄の苦しみから救うことができるのです。
あなたたちが他人を救えば,オーマズドはあなたたちの精神を高めてくださるのです」 - その場にいた一人が,霊魂はどのくらいその場にいるのかと質問しました。
ザラツゥストラは言いました。
「3日間だったり,1年間だったり,時には100年間,1,000年間だったりします!
彼らがその場から立ち去る叡智と力を得るまでです。しかし3日経ったら,死者の霊魂に自分の下に留まってほしいと望むべきではなく,むしろオーマズドにこう言うべきです。
『御父よ,あなたのやり方で彼の者と私たちを扱ってくださいますように。
私たちは満足しています』
上天に召された霊魂が地球に戻らない方が,彼らにとっては良いことなのです。
楽園の高みで彼らを思い出すことの方が,あなたたちにとっては良いことなのです。
なぜならこれらの思いが,死んだあなたたちを蘇らせるからです。 - 『あらゆる光』は天界と地球のあらゆることに答えるということを覚えておいてください。
もしもあなたが殺したら,あなたは遅かれ早かれ『苦しみ』という目に遭います。
もしもあなたが嘘をついたら,あなたは『嘘』で返されます。
もしもあなたが呪ったら,それは自分に返ってきます。
もしもあなたが憎んだら,憎まれるでしょう。
もしもあなたが自分を隔絶したら,あなたは排除されます。
もしもあなたがこの世の悪と付き合えば,天界で悪の仲間に拘束されます。
あなたが人々の指導者となろうとしたら,あなたが支配した人々が天界では重荷になることを覚えておいてください。
もしもあなたが教えなかったら,あなたが教えられることはありません。
もしもあなたが他人を救おうとしなければ,誰もあなたを救いません。なぜならこの世の全ての事柄は,地球と同じ法則が天界にも適用されるからです。
それが肉体の時に行われたことが霊魂でも引き継がれる『霊魂の継続性』なのです」
【30章】
- 翌晩,ザラツゥストラ人が祈りと歌を捧げるため集まっていると,ザラツゥストラの精神体がサルギスの姿で人々の前に現れ,オーマズドの言葉を教えました。
彼はこう仰せになりました。 - 「地球には2つの人種がいます。地球の事柄に夢中になる者と,天界の事柄に夢中になる者です。
どちらが良いかと言えば,後者の方です。
愚か者はこう言います。
『もしも全人類が天界のことに夢中になったら,誰が地球に供給するのだろうか?』
このようなことを言うのはドルク人の議論です。
恐れることはありません。なぜなら地球に固執する者たちの数が減るだけだからです。 - 禁欲についても同じようなことが言えるでしょう。
ドルク人はこう言います。
『全人類が禁欲したら,人類は絶滅するだろう』
私はもう一度言います。恐れることはありません。なぜなら禁欲しなければ,天界の王国のことを気に留めない者がたくさん地球に残るだけだからです。 - 全ての者たちは『高位の光』を求めて生きなさい。そうすれば低き者に十分に供給されるでしょう。
- 地球に2つの人種がいるように,天界にも2つの人種が存在します。上天に昇るべく『高位の光』を求める者と,『ドルジ』と呼ばれる地球に固執し昇天を望まない者です。
後者は官能的なことに捉われる者で,人々の間に諍いをもたらし,悪と低俗な欲求を人々に植え付けていきます」 - この場にいた者が質問しました。
「私たちが天界と地球のどちらに夢中になっているのかを,お互いが気付くためにはどうすればよいのでしょうか?」
ザラツゥストラが答えました。
「自分を知ることだけを心掛けなさい。あなたは隣人の番人ではないのですから。
あなた自身の光に従い,『至高の御方』の教えを実践しているかどうかを確かめるため,毎日100回,自分の心に問合せなさい。
自分の欠点を言い訳にしたり,過去の過ちを過度に反省したりせず,それらを今後の自分を完璧なものとするための糧として利用しなさい」 - 別の者が質問しました。
「泥棒や嘘つき,殺人者はどうすればよろしいのでしょうか?」
ザラツゥストラは言いました。
「自分のことだけを考える者は,何よりも悪いです。その者に復活はありません。
しかしその者が悪の道を改めて美徳を実践するのであれば,その者は正道を歩むことになります。 - 嘘つきは綺麗な服を着て,そこに泥を投げつけるような者です。その者は自分の霊魂を汚しているのです。
- 泥棒は重荷を背負った獣よりも悪いです。その者は,この世で物品を盗んだだけでなく,天界にまでその記憶を引き連れるからです。
- 殺人者は裸の人間のようなもので,恥ずかしくても群衆から隠れることもできません。その者が昇天したら,その行為による記憶は誰の目にも分かる形で,その精神体に汚点として人間の血で記録されます」
- 別の者が質問しました。
「イフアマズダの法によれば,最高で最良の人間は世俗を捨て,貧しく無知な者のために働き,祈りと讃美歌を唱え,地球の事柄に夢中になっている者たちには関与しないとあります。
それでは邪悪な統治者とは誰の事でしょうか?」
ザラツゥストラは言いました。 - 「この目的を果たすだけの十分な数の男女がいなければ,邪悪な統治者などいなくなるでしょう。あなたが全員に最高の人生は禁欲だと説いたとしても,結婚する者は多くいるでしょう。
あなたが最高で最良の人間は,人間の指導者や王,政治家にはならないのだと全員に説き,その先には地獄の壁が開かれ彼らを待ち構えていたとしても,多くの者はその地位に留まることでしょう」 - 別の者が質問しました。
「もしもザラツゥストラ人が別々で暮らすようになったら,悪の中で善を為す力はどうなるのでしょうか?」
ザラツゥストラは答えました。 - 「上天が定命の者の下に主神と管理者を遣わしたように,ザラツゥストラ人は邪悪な者たちの間に使者を派遣し,真実を説き,ザラツゥストラの町(コミュニティ)の例を説明しなさい。
- なぜなら人間が説くことのできる全ての哲学よりも,実践こそが最上の方法であり,最も強力だからです。
従ってあなたたちは全てにおいてオーマズドの法をお互いに実践することを心掛けなさい。
意見を言う者を避けなさい。
学識ある者も避けなさい。
それを誇りに思う者,議論する者,証明できないことに対して証拠を求める者,賢い者として知られたいと願う者,否定する者,全てにおいて欠陥が分かるが代わりの良いものを提供できない者も避けなさい。 - 不信仰者も避けなさい。なぜならその者は病気に掛かっており,予防接種が必要になるからです。
佞人も避けなさい。なぜならその者はあなたを買収しようとしているからです。女は女のために,男は男のために,仲間は仲間のために。
これらの者を創造主はあなたに必要とは思ってなく,それほど愛してもいないのです」 - ある物が霊魂について質問しました。
ザラツゥストラは言いました。
「地球でのことは,地球の霊魂ドルジに相談しなさい。永遠の復活のことについては,あなたの創造主に相談しなさい。彼の聖なる霊魂はその御名に誓いあなたに答えてくださるでしょう。
ただ,あなたが誰と付き合ったとしても,死後のあなたには住居が用意されるはずです。 - ドルジたちに騙されないように注意しなさい。なぜなら霊魂はどんな名前や姿を装えるからです。彼らが賢いかどうかはオーマズドの法に照らし合わせて量る以外にありません。
もしも彼らが上天を教えず,下天での長生きを主張するのであれば,その言葉についてよく考えなさい。あなたに媚び諂うが故に,彼らは他の人生であなたを覚えていると言い,あなたを喜ばせたいが故に,あなたは王であり,地球上に多くの子孫を残したと言うでしょう。 - しかし太陽の下において,そのような哲学に何の価値があるのでしょうか?
しかし地球や下天から離れ昇天するため,人間にこの言葉を授けるために私はこの世界に遣わされました。
御父の言葉が人間に贈られたのは,彼が住まう上天を知り,そこに到る道を教えるためです。 - 昔に起きたことが,次の世代になる前に再び起きるでしょう。
ドルジたちはこう教えるでしょう,
『死者の霊魂が木や花,豚,牛,鳥,女に入り込み,そこで暮らし,やがて人間の姿で生まれ変わる』と。
彼らとは議論してはなりません。彼らの哲学はあなたたちには関係ないのです。
彼らは闇や光の中におり,あなたは彼らが暮らす天界の栄光や美しさで判断しなさい。
もしも彼らの言葉が地球に固執したものであれば,彼らが所属するのは地球です。
もしも彼らが偽神や偽主神の下僕であれば,自分の主人について説くはずです。
しかしこれらの問題はあなたにとって何も意味がありません。なぜならあなたは『至高の御方』である創造主に仕えるからです。これに関しては誰も間違えません。 - あなたが死後に昇天したいと願う天界に関して言えば,あなたは自分の全ての知恵を出し切って『完璧なる至高の御方』へと高めなさい
あなたの仲間のために高い理想を持って生きなさい。そして彼らにとってもあなたが良き仲間であるように自分を律しなさい。
もしもあなたがその生涯を通じて全ての知恵と力を出し尽くしてこのことを実行したのであれば,あなたと共にいる御父の栄光の御業に浴することができるでしょう」 - こうしてザラツゥストラは死から復活した後,3日3晩,弟子たちの前で説法し,アシャはその言葉の要点を書き留めました。これらの内容はこの時以来,信仰者の世代で保管されました。
この言葉はザラツゥストラの法,イフアマズダの法,オーマズドの法と呼ばれました。
これらはイヒン族に秘儀として与えられた言葉を除き,定命の者たちに向けた本として石板や皮,布に刻まれた最初の天界の言葉であり,地球上の他の国ではこれらが何であるのかは,彼ら自身の知識では知りようもないことでした。 - 4日目の朝,弟子たちが『神の生ける祭壇』と呼ばれる三日月に座ると,ザラツゥストラが再びサルギスの姿で降臨しました。
彼は言いました。
「ご覧なさい,3日間過ごした『堕落した下天』から昇天する時が来ました。 - 地上での生涯を通じて私と一緒にいた神々がここに一緒におり,何百万人もいます。川の向こう岸には,天界の光の船の境界線があります!
何百万もの天使が船の中で歌っています!
そこには偉大なる神々や主神たちがいます。あまりにも眩しくて,私には彼らを見ることができません。
彼らは『偉大なる霊魂』の息子,娘たちです。 - ドルジたちは全員逃げてしまいました。
愚かなお喋りは静まりました!
まるで別世界に紛れ込んでしまったかのようで,この世界が失われたかのように荘厳でした。
上に,高く,遥か高く,彼方へと!
太陽に似た何かが火の船を照らしています!
それが私を迎えに来た御方だということを,私は知っています。
これから立ち去ります!
これから私が行く場所に,あなたたち全員のために建てます。 - そしてアシャよ!
神々はあなたに光の外套を授けました!
鎖はあなたからオーマズドに届いています!」
アシャは呼吸困難になり,喜んでザラツゥストラの霊魂の下に行こうとしました。
後者が言いました。
「立ってください。そうすればあなたに口付けします!」
ザラツゥストラはアシャに口付けし,立ち去りました。
原文:OAHSPE – The 1882 Edition (English Edition)
コメント