【OAHSPE考察2】偽神アフラと,ゾロアスター教の創造主アフラマズダについて

ゾロアスター教の聖典『アヴェスタ』については,以下を底本としています。
 底本:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

聖典『アヴェスタ』≠『OAHSPE』の教義

ゾロアスター教の聖典『アヴェスタ』では,創造主をアフラマズダとしています。ゾロアスター教は紀元前7,000年頃(年代については『OAHSPE』の記述をもとに考証中)に活躍したザラツゥストラが,イフアン人の神イフアマズダの啓示を受けて聖典を書き上げ,広めたものになります。

現在に伝わる聖典『アヴェスタ』で不可解なのは,他者の制服を推奨している点です。
例えばシーローザ第2章の次の一節です。

アムシャ・スプンタ神であるウォフ・マナフ(善思)を我らは祭る。
他の被造物を征服する,勝利に満ちたアーフシュティ(平安)を我らは祭る。
マズダーが創造した先天知を我らは祭る。
マズダーが創造した後天知を我らは祭る。

聖典『アヴェスタ』シーローザ第2章 2

『OAHSPE』は,一貫して戦いを望んでいません。また教祖ザラツゥストラやイフアン人の神イフアマズダも同様に望んでいません。それどころか国家や町が巨大化することで争いが生まれることを憂慮していたぐらいです。
それにも関わらず,『アヴェスタ』では「他の被造物を征服」,つまり他者の排斥を是としています。
これは『OAHSPE』の教義に反しており,それは同時に教祖ザラツゥストラやイフアン人の神イフアマズダが望んだ内容ではないということになります。

偽神アフラ

『OAHSPE』21書「真神の書」の10章以降で,主神クトゥスクがジェホヴィへの信仰を捨てて,全能なる神アフラを名乗りました。(OAHSPE-21『真神の書』10章-1)
クトゥスクがジェホヴィへの信仰を捨てたのには,次のような経緯があります。
神フラガパッティが地球に降臨したのは,紀元前7,000年頃になります。ちょうどザラツゥストラの活躍した時期と同じ頃です。
大宇宙からダンの夜明けの時期に合わせて,上天の神が降臨します。このダンdanを理解するには,まず地球が太陽系のさらに外側にある大宇宙を旅しているという概念を理解する必要があります。
この大宇宙には巨大な周回軌道があり,様々な太陽系がその周回軌道を旅しています。その軌道は1,500の『アーク』という管区に分けられ,それぞれ上天の神が君臨しています。地球(というよりも太陽系)はその軌道上を旅しており,1つの『弧』を通過するのに約3,000年を要すると言います。(OAHSPE-8『16周期の梗概』1章-2)
管区内では,光の濃淡があり,現在旅している管区(弧)から次の管区へと移動する際に,その管区を司る上天の神が降臨し,地球で育った善良なる霊魂(ジェホヴィの花嫁花婿)を回収します。この管区の終端と始まりが「ダンdan」です。管区内でも小刻みの区切りがあり,それは「ダンハdanha」とも呼ばれ,100年~500年間隔で区分けされます。
私たちが暮らす地球は,大抵,この頃には闇が大勢を占めています。それを上天の神が闇を一掃し,次の管区へと明け渡します。これが「ダンの夜明け」です。
通常は「ダンハ」のタイミングで闇を掃討しながら,最後の「ダンの夜明け」で一掃するという流れですが,地球が「ノエの弧」を旅している時,地球の神々の力では一掃できないぐらい闇の力が強まったことがあり,その時は「ダンの夜明け」前に創造主ジェホヴィが地球のワガWaga大陸を沈めることで強制的に闇を掃討しました。(OAHSPE-9『アフの書』)
そもそも地球に闇の勢力が強まるのは,地球が大宇宙の周回軌道の中でも,光が弱い領域を旅している時です。光というのは,創造主ジェホヴィが住まう最たる上天からもたらされる光であり,様々な要因で大宇宙には光の陰影があり,そこを地球が通過すると,創造主ジェホヴィの力(または声)が届きにくくなるため,霊魂や天使は道を見失い,人間を正しい道に教導できなくなります。

主神であったクトゥスクが創造主ジェホヴィに対して叛意を抱いたのは,ちょうど地球が闇の領域を旅している時でした。地球で暮らす人間の心は闇に覆われ,悪意を抱く人間は増え続けていました。
クトゥスクは最初,地球が闇に覆われていると創造主ジェホヴィの声が届かなくなり,地球で暮らす人々は悪意に染まるのであれば,創造主ジェホヴィの声が届かなくても,地球で暮らす人々が正道を歩めるようにしなければならないのではないか,と考えました。(OAHSPE-21『真神の書』10章-14-15)

これが偽神アフラが誕生するきっかけとなりました。地球が闇で覆われても,地球に創造主がいれば人々は路頭に迷わなくなるとクトゥスクは考え,創造主アフラを名乗ったのでした。
アフラは地上で信仰されていたザラツゥストラの聖典を利用し,創造主オーマズド(=ジェホヴィ)の存在を抹消し,代わりにイフアン人の神イフアマズダを創造主アフアマズダに書き改めました。

そもそも,ザラツゥストラが最初にしたためた聖典は,『OAHSPE』の天界の図書館の引用によれば,『OAHSPE』第3書「ジェホヴィの書」1~2章の内容に類似しています。(OAHSPE-20『神の言葉の書』8章)
この概念が聖典『アヴェスタ』には記されていません。それは偽神アフラが創造主ジェホヴィを否定し,自らが創造主を名乗ったためです。

古代アヴェスタ語で書かれた聖典「アヴェスタ」の意義

ある宗教家がいて,既に存在する聖典を独自解釈して乗っ取ろうとする場合,最も手っ取り早いのは,その聖典を書き直すのではなく,その聖典の一部をほんの少し手を加えて,自分の都合の良いように意味を書き換えてしまうことです。

偽神アフラが採った手法はまさにそれでした。
イフアマズダの「イフア」とはイフアン人を意味します。当時,創造主オーマズドの上天とは別に,下天の神であり,イフアン人の神としてイフアマズダは君臨していました。
アフラが創造主を名乗り,ゾロアスター教を乗っ取ろうとした時,真名の「クトゥスク」ではなく,「アフラ」を名乗ったのは,イフアマズダの御名をほんの少し手を加えて,別の存在に書き換えようとしたからだと思います。
裏を返せば,古代アヴェスタ語で書かれた聖典「アヴェスタ」は,教祖ザラツゥストラが遺した聖典の内容の一部が形を変えながらも残っている可能性があるわけです。

聖典『アヴェスタ』のガーサーのヤスナの古代アヴェスタ語で書かれた部分について,『OAHSPE』の教義と照合しながら分析していきたいと考えています。

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