【OAHSPE考察2】ヤスナ第40章(1節-4節)

1節

アフラ・マズダーよ,ここで祭式において
知恵と富を働かせよ。
あなたの寛大さによって,我らに関して,
あなたが私に与えた褒美が,アフラ・マズダーよ,
ダエーナー(信仰)のために形を取るであろう。

『アヴェスタ』ヤスナ第40章 1節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

本節は,2行目の「知恵と富を働かせよ」に,ゾロアスター教の宗旨が現れています。
アフラに奉献した供物の分だけ,アフラにはその知恵を働かせてほしいという主旨になり,それは前章までと同じ「報酬主義」となります。
5行目の「ダエーナーのために形を取る」における「形」とは報酬を指しており,要は「信仰してあげるから報酬が欲しい」という内容になります。

2節

あなたはこの[報酬のいくらかを]我らに与えよ,
この世界と霊界のために。
永遠のあなたとアシャとの友情を
それによって我らが得るために。

『アヴェスタ』ヤスナ第40章 2節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

本節も前節と同様に報酬主義が説かれており,「報酬を与えてくれたら,その見返りとして自分は『あなたとアシャとの友情』を育む」という内容になっています。

3節

アフラ・マズダーよ,
義者であり,義を求める男たちを,
暴力的でない牧者を,
良く活力を与え,しっかりとした友情のために,
我らが支える[男たち]を我らに与えよ,

『アヴェスタ』ヤスナ第40章 3節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

本節も前節と同様に報酬主義に則した内容となっており,要約すれば「義者や善良な牧者のために活力を与えてほしい。そうしたらあなたたちとの友情を築ける」となります。
ある意味,現実主義的な内容であり,見返りがなければ離反する(=信仰しない)という意味になります。

4節

同様に家族を,同様に共同体を。
我らが従う仲間はこのようであるように。
アフラ・マズダーよ,我らが望む者をあなた方が与えてくれるので,
義者として,霊感を受けた者として,
かくして我らがあなた方のものとなるように。
(聖句イェンヘー・ハーターム:ヤスナ第27章 15節と同じ)
存在する神々のうちで,どの男神が祭祀において優れたものであるか,
アシャにより,アフラ・マズダーは知っている。
同様にどの女神がそうであるかも。
このような男神や女神を,我らは祭る。

『アヴェスタ』ヤスナ第40章 4節
引用:『原典完訳アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』訳:野田恵剛 国書刊行会

本節も前節同様に,「報酬を与えてくれたら,家族や共同体という単位で信仰する」という内容になっています。

本章は,実に「現実主義」の面を言い表しています。
『OAHSPE』では「全ての創造物は創造主のものである」ため,そもそも「報酬」という概念がありません。何故なら,創造主以外は何も所有していないため,報酬として与えられる物を誰も持っていないからです。
この点が,『OAHSPE』とゾロアスター教の決定的な違いとなります。

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